歯科医学
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64 巻, 1 号
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  • 方 一如, 小谷 順一郎, 上田 裕, 竹村 明道, 諏訪 文彦
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    東洋医学には, 3000年の歴史があり, 東アジアの伝承医学として共通の発想法と論理をもち, 近代西洋医学とは明確に区別しうる独自の臨床医学体系を形成している.近年, 東洋医学の知識を歯学領域に活用する気運が高まってきている.東洋医学では, 整体観念に基づき口腔と全身の臓器・器官との間には有機的な関連性が存在するとみなし, 歯も口腔も, 身体局部の独立器官ではなく, 全身の臓器組織を構成する一要素と考える独自の臓腑観がある.本総説では, 西洋医学と東洋医学の基本概念の比較, 歯科領域における東洋医学概念と診断法を述べた.また, 基礎医学的立場から顎・口腔系の解剖学的アプローチを行った上で, 歯痛, 歯周疾患, 顎関節症, 舌痛症, 三叉神経痛, 顔面神経麻痺, 抜歯-鍼麻酔における東洋医学の基本的治療法を紹介した.
  • 後藤 基宏, 森田 章介, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    高分化型のHSC-4細胞と低分化型のHSC-3細胞の2種類の口腔扁平上皮癌細胞株を用いて, 緑茶の成分であるカテキンとくに(-)-epigallocatechin-3-gallate (EGCG)と(-)-epicatechin (EC)による細胞増殖抑制効果, テロメラーゼ活性およびMMP活性への影響について検討した.HSC-4とHSC-3細胞に各種濃度のEGCGとECを添加し, それぞれの細胞増殖能をトリパンブルー排出法で, またテロメラーゼ活性をtelomeric repeat amplification protcol (TRAP法)で検討した.さらにhuman telomerase-associated protein 1 (hTEP 1)とhuman telomerase reverse transcriptase (hTERT) mRNAの発現, MMP 1, 3および9mRNAの発現をRT-PCR法で検討した.その結果HSC-4とHSC-3細胞にECを添加しても両細胞の増殖は抑制されなかったが, EGCGを添加すると時間および濃度依存性に抑制された.またEGCGとECを同時添加すると両細胞の増殖は相乗的に抑制された.HSC-4細胞のテロメラーゼ活性はEGCG添加により濃度依存性に抑制されていたが, HSC-3細胞のテロメラーゼ活性は抑制されなかった.またEGCGとECの同時添加によりHSC-4細胞のテロメラーゼ活性は相乗的に抑制されていた.この時HSC-3細胞のhTERT mRNAおよびMMP-9 mRNAの発現に明らかな差を認めなかったのに対し, HSC-4細胞ではともに発現が抑制されていた.以上のことより, 緑茶カテキンは高分化型口腔扁平上皮癌細胞株の増殖とテロメラーゼ活性を抑制することが判明し, またその抗腫瘍効果にMMP-9の関連していることが示唆された.
  • 川添 堯彬, 田中 昌博, 更谷 啓治, 楠本 哲次, 鳥井 克典, 末瀬 一彦, 上田 直克, 龍田 光弘, 田中 誠也, 松谷 善雄
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    臨床において, 天然エナメル質に近似した組成および物理的性質を有し, 生体親和性および審美性を備えた, リン酸カルシウム系結晶化ガラスをブリッジに応用することを目的として, 平成11年4月1日から同年9月30日までに大阪歯科大学附属病院補綴咬合治療科に来院した患者30名にリン酸カルシウム系結晶化ガラス・ブリッジを装着し, 3か月間における臨床試験を行った.ブリッジはワンピースキャスト法で製作した3ユニットの固定性ブリッジとした.観察項目は支台歯の歯髄反応および二次齲蝕, ブリッジ周囲の軟組織の変化, ブリッジ自体の性状および変化, 副作用の有無について, ブリッジ装着時, 装着1週以降, 1か月以降および3か月以降において経過観察を行い, 以下の結果を得た. 1.支台歯について, 重度の歯髄反応および二次齲蝕は認められなかった. 2.ブリッジ周囲の軟組織について, 重度の炎症は認められなかった. 3.ブリッジの辺縁適合性について, ギャップが象牙質または支台築造材料に達している症例は認められなかった. 4.ブリッジの色調適合性について, 不適合で容認できない症例は認められなかった. 5.亀裂, 破折および脱落について, 亀裂および脱落は認められなかったが, 破折が装着約2週間後に1症例認められた.このブリッジの近心連結部の厚さは2.5mmと菲薄であった. 6.特記すべき副作用は認められなかった.以上の結果から, リン酸カルシウム系結晶化ガラスを用いた一歯中間欠損の3ユニットの固定性ブリッジは力学的に過酷な症例を除き, 機能性, 色調再現性, 色調安定性および生体親和性にほぼ満足のいく結果が得られ, 連結部の厚みを3mm以上確保することによって, 臨床において十分応用できると判断できた.
  • 勝間 崇史, 川野 晃, 長谷川 泰陽, 恩地 良幸, 前田 照太, 井上 宏
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    経頭蓋磁気刺激(TMS)は, 安全で非侵襲的な中枢運動系の評価法として広く臨床に用いられるようになってきた.しかし, 歯科の分野である咀嚼筋に対する報告はあまりされておらず, 刺激方法も確立されていないのが現状である.そこで本実験の目的は, 経頭蓋磁気刺激による咬筋の運動誘発電位(MEPs)の発現に対する刺激コイルと咬合力の影響とを検討することとした.実験は健全な5人の男性被検者にLight clenchingおよびHeavy clenchingを行わせて, 円形コイル, 8の字コイル, ダブルコーンコイルの3種類の磁気刺激コイルを用いて頭蓋上より磁気刺激を行い両側咬筋より誘発筋電図を導出した.刺激強度は各コイルとも最大出力の30〜70%までの10%ごとに変化させた.導出されたMEPsの計測パラメターは, 潜時および振幅とした.各コイルのMEPs発現頻度を検定するため, 各被験者の刺激強度5種類の発現数から発現率を算出し, 分散分析法にて統計解析を行った.その結果, 誘発されたMEPsは, 刺激側咬筋に速い潜時(3.0 msec前後)と遅い潜時(8.0 mses前後)のMEPs, 非刺激側咬筋に遅い潜時(8.0 mses前後)のMEPsの3種類が記録された.また, 非刺激側咬筋MEPsはHeavy clenching状態でのみ誘発されLight clenching状態では誘発されなかった.各MEPsの発現率は, ダブルコーンコイルが最も高かった.また, 各コイルともにHeavy clenching状態のほうが高くなった.以上から, TMSによる咬筋MEPsは, Heavy clenching状態でダブルコーンコイルを用いて刺激を行うことで最も発現しやすいことがわかった.
  • 柿本 和俊, 森口 愛, 上西 研二, 小正 裕, 権田 悦通
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    歯科用コバルトクロム合金のレーザ溶接性を調べるために実験を行った.実験材料には, 市販の鋳造用7種類および加工用1種類のコバルトクロム合金を用いた.パルスYAGレーザ加工装置を用いて試料金属表面にスポット溶接部を形成した.そして, 母材および溶接部の光学顕微鏡による金属組織観察, 走査電子顕微鏡による破面観察, 電子線マイクロアナライザによる合金の元素濃度分析, および溶接部の硬さ変化からレーザ溶接性を詳細に検討した.実験に用いた鋳造用コバルトクロム合金のレーザ溶接部には, 割れおよびポロシティが発生した.金属組織および破面の観察結果から, 割れは凝固割れと考えられた.割れの原因としてケイ素や炭素などの添加元素の影響が考えられた.一方, 加工用コバルトクロム合金のレーザ溶接部には割れやポロシティは発生しなかったが, 溶接部の硬さは低下した.
大阪歯科学会シンポジウム
  • 竹本 靖子
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    私たちが研究の対象としている口腔の感染症のほとんどは, 常在菌やその他の病原性の弱い細菌による感染症である.また, ここ数年, 世間を騒がせている黄色ブドウ球菌による食中毒, 風呂の水から感染したレジオネラ症, MRSAやVREによる院内感染なども病原性の弱い細菌による感染症である.これら弱毒菌感染症の特徴は, まず, 原因微生物の病原性が弱いので, compromised hostに発症する日和見感染症であるということである.二番目として, 原因菌の特定が困難であること, 三番目として, 院内感染の場合, 原因菌が薬剤耐性化することにより, 病原性を発揮している点が挙げられる.弱毒菌が病原性を示すメカニズムは, 毒性の強い外毒素により病原性を示す強毒菌に比べると, 1つの病原因子だけでは説明できず, 多くの病原因子が関与している.口腔感染症では, う蝕, 歯周病, それ以外の歯性感染症が主なものであるが, その主要原因菌として, それぞれ, Streptococcus mutans, Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia/nigrescensが挙げられる.これらの細菌は, 宿主への付着および定着, 免疫系からの回避, 宿主細胞の破壊, 病巣の拡大などに関わるさまざまな病原因子を産生し, 病気を起こしていると考えられる.Compromised hostが増加していたり, 現代の日本のように, 環境の衛生状態がよいと, いままでは問題とならなかった弱毒菌による感染症はあなどれない.また, 薬剤耐性菌や腸管出血性大腸菌E. coli O 157:H7のように, 本来, 病原性の弱かったものが, 病原性を獲得して, 病原性を発揮する現象も見うけられる現代では, 弱毒菌感染症について, 注意を払わねばならない.
  • 辰巳 浩隆
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    院内感染とは, 病院などの医療施設において新たに感染症に罹患することである.通常, 院内感染が成立するためには, 微生物の接触, 付着, 定着が起こり, 微生物の病原性が宿主の抵抗力よりも勝ることが不可欠である.院内感染は弱毒菌感染症のグループに属するので, 感染が成立するためには, 宿主の抵抗力(免疫能)が重要な因子となる.すなわち, 悪性腫瘍や代謝不全などの基礎疾患や抗腫瘍薬, 放射線療法, 腎透析などの医原的要因による免疫能あるいはその他の抵抗機構が低下した患者(Compromised host)であれば, 容易に感染が成立する.一方, 微生物側では, 従来, あまり臨床で問題にされなかった弱毒菌やさまざまな抗菌薬や消毒剤に対する耐性菌が, 院内感染症では問題となる.なかでも, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や多剤耐性緑濃菌(MDRP)は, 院内感染例で高率に分離され, その感染予防や治療に苦慮している.それに加え, 最近, 欧米においてバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による院内感染症が多発していることが報告されている.特に, ペニシリン, アミノグリコシドおよびバンコマイシン耐性の3剤耐性腸球菌による院内感染が増加し, MRSAについて深刻な社会問題となっている.日本でもVRE感染症が散発的に報告され, 近い将来, VREあるいはバンコマイシン耐性を獲得したMRSAによる院内感染の蔓延が危惧されている.MRSAやVREの耐性メカニズムは, 主として抗菌薬の作用点の変化または修飾である.MRSAは, mec遺伝子(mecR1, meclおよびmecA)がcodeする新たな架橋酵素であるpenicillin-binding protein 2´(PBP2´)の産生により, β-lactam剤をはじめ種々の抗菌薬に耐性を, VREは, バンコマイシン耐性遺伝子(vanA, vanB, vanCあるいはvanD)がcodeするアミノ酸結合酵素(VanA, VanB, VanCあるいはVanD ligase)が正常に合成されたGluNAc-MurNAc-pentapeptideの末端の_D-Alanyl^4-_D-Alanine^5とは異なる_D-Alanyl^4-_D-Lactate^5または_D-Alanyl^4-_D-Serine^5を合成し, バンコマイシンとの結合特異性を低下させることにより耐性を示す.またMDRPでは, 外膜に存在するporin蛋白の発現量低下または欠損による薬剤透過の減少, およびoprM, oprJ, oprN operonがcodeするMexA-MexB-OprM, MexC-MexD-OprJ, MexE-MexF-OprN pumpによる薬剤の細胞外排出が主な耐性メカニズムを担う.それとともに, β-lactamaseやaminoglycoside acetyltransferase (AAC)などによる抗菌薬の不活化やDNA gyraseの変化による抗菌薬親和性の減少, さらにbiofilm形成による抗菌薬の低浸透などが組み合わさり多剤耐性化する.このように, 院内感染症で高率に分離される院内感染起炎菌はさまざまな耐性メカニズムを有するため, 各医療機関で院内感染予防対策を困難にしている.本稿では, 歯科領域においても遭遇する主要な院内感染起炎菌であるMRSA, VREおよびMDRPによる院内感染症とその耐性メカニズムなどについて概説する.
  • 吉田 匡宏
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    歯内治療での難治症例の原因は, 細菌感染である.従来の根管治療では, 難治化した症例の細菌感染を排除することはできない.「根尖治療」に基づいた「チェアーサイド嫌気培養システム」応用することで, 容易に原因を明らかにし, 排除することができる.術者は, 「チェアーサイド嫌気培養システム」の細菌検査によって, 治療に役に立つ多くの情報を得ることができ, 抗生物質感受性試験に基づいた抗生物質局所投与によって, 根管と根尖周囲から感染を確実に排除できる.以上のことから, 著者は「チェアーサイド嫌気培養システム」は歯内治療に有用な治療法になると考えている.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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