歯科医学
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64 巻, 4 号
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  • 和手 甚京, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 321-331
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans Rm-10は液体培地で培養すると, 対数増殖後期即座に溶菌が起こり, 明瞭な定常期が認められないことと, 溶菌後に広い抗菌域と狭い抗菌域をもつ2つのバクテリオシンを遊出するのが特徴である.しかし, 長期に亘って凍結あるいは凍結乾燥保存したS.mutans Rm-10は, 従来のものと異なり, 対数増殖期以降に溶菌がみられない.ところが, 溶菌を起こさないS.mutans Rm-10は, 指示菌として用いたEnterococcus faecalis ODUに対して, 溶菌を起こすS.mutans Rm-10と同様, 強いバクテリオシン活性を保持している.そこで本実験では, これらのS.mutans Rm-10からバクテリオシンを分離し, 精製することを試みた.培養上清から80%飽和硫酸アンモニウムの塩析で得られた粗バクテリオシン標品をArginine Sepharose^[○!R] 4Bに供した結果, バクテリオシン活性は, 吸着画分, 非吸着画分ともに認められた.本実験では, 非吸着画分(N-ABC)を以降の実験に用いた.Sephacryl^<TM> S-100では, 280nmの吸光度測定で2つのピークが得られ, バクテリオシン活性は最初のピークにみられた.10〜60%ショ糖密度勾配遠心では, 活性画分は遠心管上部に残っていた.また, Lysine Sepharose^<TM> 4Bに供した結果, 活性画分は非吸着画分にみられた.SDS-PAGEでは, 34kDa付近に1本のタンパクバンドが確認された.また, バクテリオシン活性はほぼこの付近に存在した.精製標品は, 主として糖とタンパク(1.67:1)から成り, 糖ではglucose, rhamnose, glucosamine, mannose, arabinose, galactose, galactosamineおよびN-acetylneuraminic acid, また, 主要アミノ酸はalanine, lysine, glycine, glutamic acid, serine, threonineなどでそれぞれ構成されていた.これらの結果から, N-ABCは糖-タンパク複合体であり, 分子量と化学組成の面から, 村松が報告している2つのRm-10バクテリオシンのいずれとも異なるバクテリオシンであると考えられる.
  • 松野 [ヨシ]晃, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 332-340
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    和手らが精製したN-ABCの等電点, 熱や酵素に対する感受性, pHによるバクテリオシン活性の変化および作用機作について検討した.等電点電気泳動で求めたN-ABCのplは, pH4.5であった.N-ABCを100℃, 30分間加熱したところ, 活性に変化は認められなかったが, 121℃, 10分間の加熱で残余活性は1/2に, 20分間の加熱で1/8に減少した.N-ABCの安定pH域は, pH2.0からpH9.0までであった.pH10.0で活性は1/2に, pH11.0とpH12.0では完全に消失した.N-ABCは, 供試したmutans streptococci, Enterococcus faecalis, Porphyromonas gingivalisおよびFusobacterium nucleatumに対して阻止活性を示したが, Peptostreptococcus indolicus, Veillonella parvula, Prevotella melaninogenica, Prevotella intermediaおよびPrevotella nigrescensに対する阻止活性は認められなかった.N-ABCと指示菌を混合後, 溶菌が見られなかったので, その作用機作はbactericidalであると考えられる.しかも, その効果は作用直後であった.作用は濃度依存的で, また4℃では指示菌とN-ABCとの間に反応はみられなかった.各種の糖やアミノ酸とN-ABCとを混合後, 残余活性を調べたが, 大きな変化はみられず, N-ABCが作用するレセプターについての情報を得ることはできなかった.ただ, 指示菌のE.faecalis ODUを熱処理してN-ABCと混合後, 残余活性を測定したところ, 無処理の場合よりも残余活性は高かったが, 121℃の加熱でも活性が減少していた.また, trypsinやpepsin処理でN-ABCの活性は1/8に, β-galactosidaseにより1/4に減少したことから, 活性部位は糖, タンパクの双方にある可能性もある.これらの結果から, N-ABCは, 作用機作が殺菌的である点では村松が報告している2つのRm-10バクテリオシンと類似しているが, 等電点, 熱, 酵素に対する感受性, 安定pH域および抗菌域の面からB1 Rm-10やB2 Rm-10とは異なるバクテリオシンであると考えられる.
  • 安井 敏成, 榊 敏男, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 341-350
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    私たちは発癌メカニズムを解明する目的で, 4NQO(4-nitroquinoline 1-oxide)誘発ラット舌癌モデルを用いて, 発癌過程における局所的および全身的な細胞性免疫反応をフローサイトメーターを用いて検討した.SD系ラット67匹を実験に供した.実験群には50ppmの4NQO水溶液を飲料水として与え, 4週, 8週, 12週, 16週, 18週, 20週, 24週および28週後に末梢血を採取し, 安楽死させたのち舌組織を採取した.採取した血液と舌組織の抽出単離細胞を対象にCD4, CD8, NKRおよびNKT様細胞の発現をFACSCaliburを用いて解析した.4NQO発癌モデルでは末梢血および舌組織のCD4陽性(CD4^+)細胞とCD8陽性(CD8^+)細胞の増加は双峰性のピークを呈した.観察をはじめた直後からCD4^+細胞およびCD8^+細胞の増加がみられ, 角化層の肥厚が始まる8週では有意に増加し, 12週から16週ではいずれも減少した.それ以降, 再び18週あるいは20週で有意に増加し, かつCD8^+細胞のピークは両組織ともCD4^+細胞のピークよりも遅れて発現した.また, NKR-P1A陽性(NKR^+)細胞およびNKR-P1A陽性/CD3陽性細胞(NKT^+様細胞)は, 舌組織では4NQO投与後4週からやや減少したが, 末梢血ではほとんど変化は示さなかった.その後, NKT^+様細胞は末梢血では16週から24週にかけて, 舌組織では18週からほぼ24週にかけて有意に増加した.4NQO投与後4週からは病理組織学的には上皮過形成が開始される時期であり, この期間におけるCD4^+細胞およびCD8^+細胞の増加は, 4NQOに対応した生体の防御反応であると考えられた.また, 投与後16週から18週の期間は病理組織学的に異形成の時期であり, この時期の免疫反応は癌化に関連する細胞性免疫応答が局所で生じ, それに対する生体の防御反応としてNKT^+様細胞が癌組織および末梢血で増加するものと示唆された.
  • 塩路 伊佐子, 池尾 隆
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    老化に伴い発症する骨粗鬆症の治療薬として, フッ素の利用が検討されている.硬組織へのフッ素取り込みは投与濃度に依存すると考えられることから, 今回, 老化促進モデルマウスを用い, 2, 10および200mg/LのNaF溶液を離乳期から促進老化発現時期と考えられる190日まで摂取させ, 骨代謝への影響を観察した.その結果, 骨乾燥重量は10mg群で最も高かった.血清カルシウム量は2mg群で, 骨中カルシウム量は10mg群でそれぞれ高値を示した.X線マイクロアナライザーによる骨中のカルシウム分布を観察した結果, 分布カルシウム量はフッ素投与群で対照群より高値を示し, とくに, 骨中央部や骨内膜側に比べ骨膜側でより顕著であった.以上の結果より, 投与フッ素濃度の違いが骨代謝に異なる影響をもたらすことが確認できた.そして, 老化現象としての骨量低下を遅延させるためには, 10mg/LのNaF溶液の摂取が有効であることが示唆された.
  • 池尾 隆, 塩路 伊佐子
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 358-368
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    近交系として確立しているSAMR1系およびSAMP8系雌性マウスを用い, 12項目の血液学的検査, 14項目の血液生化学的検査, 血清遊離アミノ酸検査および血清タンパク質分画を行い, 基礎データーを収集するとともに, それらの加齢に伴う変化について検討した.その結果, RBC, Hb, Ht, ALP, iP, CRE(SAMP8//Odu), A/G比(SAMR1/Odu)は加齢に伴い減少傾向を示した.RDW, TP(SAMR1/Odu), TG(SAMR1/Odu)は加齢に伴い増加傾向を示した.また, 血清タンパク質分画およびアミノ酸分析の結果から, SAMP8系マウスにおける肝機能の低下が示唆された.
  • 仁木 寛, 内田 斉, 久保 裕司, 覚道 健治, 清水谷 公成, 古跡 養之眞, 川添 堯彬, 田中 昌博, 鳥井 克典
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 369-374
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:この研究の目的はアテロコラーゲンスポンジを挿入した抜歯窩の治癒経過をコンピューター断層撮影(デントモード)を用いて評価することである.材料と方法:中間歯欠損で架橋義歯(ブリッジ)となる患者8人の術後評価を行った.アテロコラーゲンスポンジは抜歯窩のサイズにあわせてSサイズまたはMサイズを選択し抜歯窩に挿入, ガーゼで圧迫して密着した後, 縫合固定を行った.挿入1日後と3か月後にコンピューター断層撮影(デントモード)を撮影し骨治癒について評価を行った.結果:全例とも術後の疼痛, 出血, 感染, 上皮化の遅延, 創の陥凹などはなかった.骨の再生は全例に骨の新生が認められた.アテロコラーゲンスポンジ挿入3か月後の抜歯窩の頬舌径と深さの積算を比較した結果, 骨再生の程度は60.1%から94.3%で平均は80.0%であった.結論:アテロコラーゲンスポンジを抜歯創に挿入し, その治癒状態をコンピューター断層撮影(デントモード)により観察を行った.アテロコラーゲンスポンジを使用することにより, 止血, 創の保護や上皮化促進のみならず, 骨の治癒・保存にも寄与することを確認した.
  • 速水 勇人, 神原 敏之, 長屋 和也, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2001 年 64 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    過蓋咬合症例の矯正治療にともなう上顎中切歯の変化と, 上口唇の変化との関連性を調べるため, アングルII級1類過蓋咬合の成人女性患者および, 個性正常咬合を有する成人女性の側面頭部X線規格写真を用いて検討した.資料として, 大阪歯科大学附属病院矯正歯科に来院した.成長が終了したと思われるアングルII級1類過蓋咬合の成人女性患者8名の側面頭部X線規格写真を用いた.被験者は, 上顎第一小臼歯のみの抜歯症例である.被験者の年齢は, 最低年齢16歳2か月, 最高年齢23歳11か月であり平均年齢は19歳8か月であった.また対照として当大学の5年生で顎口腔機能系に自覚的, 他覚的に症状のない個性正常咬合を有する成人女性21名の側面頭部X線規格写真を用いた.計測として硬組織上に5か所, 軟組織上に4か所をそれぞれ設定した.FH平面に平行でANSを通る直線を水平基準線(X軸), A点を通りX軸に直交する線を垂直基準線(Y軸)とし, X軸から各計測点までの垂直距離とY軸から各計測点までの垂直距離を計測した.X軸より上方を+下方を-, Y軸より右側を+左側を-とした.その結果, 対照と被験者の治療前の状態との比較ではSnにおけるX軸からの垂直距離とU1, Prn, ULにおけるY軸からの水平距離に有意差を認めた.しかし, 対照と被験者の治療後との比較では, すべての計測点において有意差を認めなかった.このことは, 被験者の上顎中切歯および上口唇の前突が治療により改善され, 対照の値に近づいたことを示している.また, 治療による上顎中切歯の水平的な変化と, 軟組織上の計測点の変化との間に高い相関関係が見られ, 回帰直線の式が得られた.これは, 上顎中切歯の位置と上口唇の位置との間に密接な関係があることを示している.同時に, 上顎中切歯および上口唇の変化に対する回帰直線の式を算出したが, これにより軟組織の位置を考慮に入れた治療計画の立案に役立つことが示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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