歯科医学
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66 巻, 4 号
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  • 清水 一彦, 上村 参生, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 261-269
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,表層エナメル質が乳歯エナメル質の初期う蝕形成パターンにどのような影響を及ばすのかを明らかにする目的で,AFMおよびSEMによる乳歯初期う蝕の表層エナメル質の微細構造観察およびTMRを用いたミネラルプロファイル測定による表層下脱灰部の定量分析を行い,永久歯エナメル質の初期う蝕形成パターンとの比較検討を行った.
    ヒト抜去乳犬歯およびヒト抜去永久中切歯の唇側面から,エナメル質ディスク(直径:3mm)を採取した後,その表面を耐水ペーパーおよびゲル状研磨材で鏡面研磨を行った.
    初期う蝕病巣を作製するため,各鏡面研磨エナメル質表面の半分をマニキュアで覆い,脱灰溶液(0.1M乳酸溶液,0.296水溶性レジン,50%飽和ハイドロキシアパタイト;pH=5.0)に37℃で4および24時間浸潰したのち,蒸留水で洗浄した.
    作製した初期う蝕病巣試料の表面および病巣体部を,AFMおよびSEMにより,微細構造学的に観察し,また,初期う蝕病巣の定量分析には,TMRを用い,ミネラルプロファイルの測定を行った.測定パラメータは,脱灰深さ,表層エナメル質の厚さおよびミネラル溶出量とした.
    その結果,乳歯初期う蝕病巣表面の結晶サイズおよび結晶間隙の拡大が,表層エナメル質の厚さおよび病巣休部の崩壊程度に影響することが明らかとなった.また,乳歯初期う蝕形成は,脱灰深さの内部への進行によって病巣の進行・拡大が行われるのではなく,ミネラル溶出量が示す病巣体部の崩壊によって,病巣が進行・拡大することが明らかとなり,さらに,表層エナメル質の厚さが,脱灰深さをコントロールしている可能性が示された.
  • 堀内 浩司, 上村 参生, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 270-278
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    現在まで口腔保健状態の評価は,う蝕や歯周疾患の疾患量の大小で行われてきているが,年齢特性のある歯科疾患において,集団対応の口腔保健状態の評価方法が確立されていないのが現状である.そこで,歯科疾患,とくにう蝕と年齢との間の直線関係に着目し,得られた直線式による地域口腔保健診断法を試みた.昭和32〜平成11年度まで6年ごとに実施された8回の歯科疾患実態調査結果を用い,5〜15歳と20歳以上の2つの年齢群に分けて,年齢別一人平均DMF歯数と年齢との関係に回帰分析による直線式の当てはめを行った.なお,集計分析には,Microsoft Excel 2000を用いた.
    その結果,各年度における5〜15歳と20歳以上の2つの年齢群の一人平均DMF歯数と年齢との関係に当てはめた直線式の決定係数R^2は0.93〜0.99の間にあり,いずれの集団においても強い直線関係にあることがわかった.また,集団におけるう蝕の動向を直線の傾きと切片から示すことができた.その結果,5〜15歳の年齢群におけるう蝕の増加は,昭和56年前後がピークであリ,その後減少傾向を示し,平成11年度では昭和38年度のう蝕経験状況に戻ってきていることがわかった.
    一方,20歳以上の年齢群では,直線式の傾きは調査年度間でほとんど差が認められなかったため,成人集団におけるう蝕増加傾向は,各調査年度間では同じう蝕増加傾向を示すことがわかった.しかし,直線式の切片から,成人集団のう蝕経験状況を低くするためには切片の値(20歳時のDMFT)のコントロールが重要であると示された.
    以上の結果,年齢とう蝕経験状況との関係を回帰直線に当てはめ,得られた直線式の傾きと切片を用いて評価することで,集団の口腔保健状態の評価が可能となり,年齢別変動を考慮に入れた評価も可能であることが明らかとなった.
  • 奥村 信, 三宅 達郎, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 279-288
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    口腔年齢指標を地域保健評価に使用できるかどうかを知る目的で,口腔内状態を健全な歯と健全な歯周組織の状態で総合的に評価する指標である口腔年齢を用い,大阪府各地域での成人歯科健診結果に対し,地域口腔保健状態の評価を行った.口腔保健状態の評価は,各地域ごとの口腔年齢と実年齢との比較によって行い,口腔年齢が実年齢より若い場合を良好,同年齢の場合を標準,高齢の場合を不良とした.その結果,市内,府内とも,全般的に20〜30歳代の受診者は標準あるいは悪い傾向にあり,40歳以上の中高年受診者の口腔内状況は比較的良好である地域が多いことが明らかとなった.このことより,成人歯科健診事業における受診者の特性,すなわち若い年代では現在口腔内に問題を抱えている者が受診する傾向にあり,逆に高齢者では自分の口腔内に自信のある者が受診している状況が推察された.さらに,個人別に実年齢と口腔年齢の差を算出し,地域ならびに年代ごとの評価を行った結果,地域ごとの受診者の特徴や,地域全体の傾向などをより簡便に把握することができた.
    このように,口腔年齢指標を地域の口腔保健状態の評価に用いた結果,口腔年齢が実年齢より高いか低いかといった単純な指標で口腔内状態を総合的に示すことができ,年齢構成の異なる地域間の格差やそれぞれの地域における受診者の特性を明確にすることができた.今後,歯科保健事業を実施するにあたり,問題点のある地域や年代,さらには受診者の特徴も考慮に入れた,より効果的な事業内容を構築するための指標として応用できることが示唆された.さらにこれらの結果をマップで表示することにより,地域全体の口腔保健状態や地域特性を一目で把握することが可能となった.
  • 岡田 友之, 上村 参生, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 289-301
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    う蝕減少傾向にある学童期に適応した永久歯う蝕発生リスク評価方法を構築する目的で,学校歯科健診時に2種類のう蝕活動性試験(Dentocult-SM^<[○!R]> Strip mutansおよびカリオスタット^<[○!R]>)を応用し,1年後の永久歯う蝕の発生予測について検討した.
    その結果,SMにおいては,ミュータンスレベルが高い者ほどう蝕発生者率の高いことが明らがとなった.また,3年生以下では乳歯齲蝕経験状況と1年後の永久歯齲蝕発生との間に有意な関連が認められた,そこで,SMおよびdf歯数を用いて永久歯齲蝕発生に関するリスク基準値を,スクリーニング手法を用いて検索した結果,1年生時はスコア1以下をLow Risk,スコア2以上をHigh Risk,2年生以上ではスコア0をLow Risk,スコア1以上をHigh Riskに評価分類できることが明らかとなった.また,df歯数については,1年生時はdf歯5本以下をLow Risk,6本以上をHigh Risk,2年生および3年生時はdf歯無しをLow Risk,df歯有リをHigh Riskと評価分類することができた.さらに,1〜3年生時においては,df歯数とSMによる評価を総合することにより,敏感度,陰性反応的中率ともに90%を超え,相対危険度は,1年生時10.3,3年生時4.9であり,2年生時はLow Riskからのう蝕発生者はO%と,単独での評価よりう蝕予測精度が向上した.以上の結果より,学校歯科保健の現場でう蝕活動性試験を,定期健診時にリスク評価およびう蝕発生予測に応用することにより,健診時点でう蝕のない者に対してもう蝕発生リスクを提示することが可能となり,学童期のう蝕予防および口腔の健康増進に寄与できる可能性が示唆された.
  • 土居 貴士, 上村 参生, 奥村 信, 岡田 友之, 大塚 秀人, 伊津 元博, 田中 秀直, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 302-307
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,エナメル質erosionの検出法および定量評価法を構築する目的で,in vitroにおいて人工的に作製したエナメル質erosionをエナメル質の光透過特性を利用した機器を用いて観察した.着色や白斑の認められないヒト健全抜去歯(下顎中・側切歯)の唇側面にネイルバーニッシュを用いて直径3mmのウィンドウを作製し,エナメル質試料とした.程度の異なるエナメル質erosionを人工的に作製するため,エナメル貿試料を0.1M HCl溶液に0〜60分間浸漬処理した.
    各エナメル質試料の表面観察は,Digital imaging fiber-optic trans-illumination(DIFOTITMEOS社製,New York, USA)を用いて行い,定量評価はDIFOTITMによって得られたデジタル画像を画像処理ソフト(Photoshop 5.0,adobe社製)および画像解析ソフト(NIH Image 1.61)を用いてコントラストレベルの測定によって行った.その結果,酸浸漬前のエナメル質試料のDIFOTITM画像はウィンドウ内外の色調が均一であったが,酸浸漬時間の増加によって,ウィンドウ内の色調が灰色から黒色に変化した.また,得られた画像解析の結果,ウィンドウ内の平均%コントラスト値は経時的に増カロすることが確認できた.以上の結果から,エナメル質の光透過性を利用したDIFOTI^<TM>を用いることによってエナメル質erosionの検出および定量評価が可能であることが示唆された.
  • 朝井 寛之, 森川 康之, 本田 領, 蓮舎 寛樹, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 308-313
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    側貌の審美的感覚に関しては多くの研究報告がなされている.しかし,感覚は様々な要因によって変化すると考えられる.そこで今回, (1)一般人群,(2)矯正患者群,(3)歯科矯正医群の3グループ間の調査を行い審美的感覚の相違について評価および検討を行った.一般人の群においては,評価の高いものから順に正常咬合,Angle II級2類,II級1類,III級,I級上下顎前突であった.II級2類,II級1類とIII級間に1%の危険率で有意差が認められた.歯科矯正医群では,評価の順番は一般人の群と同様であった.正常咬合とII級2類間,II級2類とII級1類間,II級1類とIII級問で1%の危険率で有意差が認められた.また,III級とI級上下顎前突間に5%の危険率で有意差が認められた.矯正患者群においても評価の順は同様であった.II級2類とII級1類間,II級1類とIII級間,III級とI級上下顎前突間には1%の危険率で,有意差が認められた.側貌の好みについて, (1)一般人群,(2)矯正患者群,(3)歯科矯正医の群で類似した傾向がみられた.しかし,歯科矯正医群では各順位間に強い有意差が見られ審美的評価に関してかなり一致した意見がうかがえた.これに対して,一般人群ではばらつきが多く,個人の好みに左右されることがわかった.矯正患者は正常咬合とII級2類にほぼ同じ評価を与えており,口唇の突出度に関して高い水準での要求を持つ事が示唆された.
  • 森川 康之, 朝井 寛之, 蓮舎 寛樹, 本田 領, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    矯正治療において,矯正医は咬合の改善を第一目標としできた.しかし矯正の患者は咬合の改善だけでなく,審美面の変化も望んでいることは明らかである.そこで今回上顎前突と下顎前突の患者に側貌の好みについてアンケート調査し,評価および検討を行った.その結果,両群ともに正常咬合の側貌写真にもっとも高い評価を与え,ついでII級2類,II級1類,II級,I級上下顎前突の順であった.治療前の上顎前突症患者群では,II級1類と上下顎前突の評価が特に低く,側貌の口唇の突出度に関しての審美的評価に対して高い水準での要求を持つ事が示唆された.治療前の下顎前突症患者群では,III級顔貌に対して他の群より低い評価を示し,III級顔貌に対して強い嫌悪感を持っている事が示唆された.
    上顎前突患者も下顎前突患者も自分の特徴的な部分が劣等感として認識しているので評価にも影響が出たのではないかと思われる.このことから治療計画を考える上で,患者と術者が常にコミュニケーションをとり,共通の認識のもとで治療目標を設定していくことの重要性が示唆された.
  • 松本 尚之, 芝本 真和, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 319-324
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,実験的に骨欠損を与えた部位に組織誘導再生法を施行し,歯の移動を行って移動距離ならびにその後戻りについて,骨欠損を与えなかった場合と比較検討することである.
    資料としてWistar系雄性ラット60匹を用いた.実験動物には上顎第一臼歯頬側に実験的に骨欠損を加え,その後組織誘導再生法を施術したグループ,骨欠損を加えただけのグループ,外科的処置を施術しなかったグループの3グループに分けた.施術9週後に,上顎第一臼歯に15gの矯正力を各々2週間加え,歯の移動量を計測した.その後,資料を1週間の保定を行ったグループと保定を行わなかったグループとに分類し,2週間の後戻り量を計測した.
    その結果,骨欠損のみを与えたグループが最も歯の移動量が多かった.また,組織誘導再生法を施術したグループも外科的処置を施術しなかったグループに比べ,移動量は多かった.つぎに,保定を行わなかったグループの後戻り量は,すべてのグループで保定を行ったグループに比べて多かった.その中で,骨欠損を加えただけのグループでは,保定の有無にかかわらず後戻り量は最大値を示した.また,保定を行った場合,組織再生誘導法を施術したグループの後戻り量は外科的処置を施術しなかったグループと比較して,ほとんど差が見られなかった.
    以上の結果から,組織再生誘導法を応用した後に矯正治療を行うことは,歯周組織や歯に対して偽害性が少なく,応用可能であることが示唆された.
  • 橘 哲司, 辻村 高行, 本田 領, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    矯正診療においてセファログラム分析が日常的に行われており,従来の鉛筆トレースによる計測に加えてコンピューターでの計測がなされるようになってきた.本研究の目的は,これら計測手法による誤差の相違について詳細に検討することである.材料として,正常な歯列および骨格を有する成人男性のセファログラムを用いた.方法としては,次に示す手順をそれぞれ10回行った.すなわち,(1)鉛筆トレースを定規と分度器とで計測する.(2)鉛筆トレースをコンピューター上で計測する.(3)セファログラムをコンピューター上で直接計測する.このようにして得られた計測項目の値について95%信頼区間を求め,分散については群間でF検定を行った.その結果,もっとも誤差の大きかったのは,鉛筆トレースを定規および分度器で計測した群であり,信頼区間は距離にして約1mm,角度にして約0.5度であった.もっとも誤差の小さかったのは,セファログラムをコンピューター上で計測した群であり,信頼区間は距離にして約0.2mm,角度にして約0.2度であリ,これらの分散の大きさは他の群と比較して危険率1%で有意に小さかった.またその際必要となる解像度は254dpiであることがわかった.
    以上の結果,計測項目によって程度の差はあるものの,セファログラムをコンピューター上で直接計測することで計測誤差を小さくすることが出来ることが示唆された.
  • 安井 宏之, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 331-338
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    歯科矯正治療においては,治療目的に応じて臼歯を近心あるいは遠心に移動することがある.そこで咬合部位の前後的な相違が,咬筋活動によって生じる咬合圧および支点となる顎関節に及ぼす影響について研究した.
    実験には健全な永久歯列を有する成人乾燥頭蓋骨を使用した.両側下顎頭の前方部,頂上部,後方部,内側部および外側部を各5個の小型圧力センサーに接触させた.右側第一小臼歯から第三大臼歯までの各歯に小型圧カセンサーを介在させたバイトブロックを順に装着し,下顎骨の咬筋停止部である下顎骨咬筋粗面部を含む顎角部にレジンで自作した鈎を咬筋起始部である頬骨中央部方向に向かって0.5,1,1.5,2.0および2.5kgfの荷重で牽引した.
    その結果,咬合圧はバイトブロックを後方臼歯に介在させるにつれて増加した.平衡側下顎頭では,主として前方および上方の圧力が作用し,第一小臼歯から第一大臼歯部咬合では前方の圧力の方が大きく,第二大臼歯および第三大臼歯部咬合では上方の圧力の方が大きかった.作業側下顎頭では第一小臼歯部咬合で前方および外側でわずかな圧力が観察されたが,バイトブロックを後方に移動するにつれて前方および外側の圧力は減少し,第二および第三大臼歯部咬合では作業側下顎頭は浮き上がった状態を呈していた.
    以上より,咬合部位が変化することで顎関節に作用する圧力の大きさと方向が変わることが分かった.
  • 岡西 裕公, 上田 雅俊, 今井 久夫
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 339-349
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    われわれの教室では,従来からフラップ手術の際の根面処置,すなわち,スケーリングやルートプレーニングが困難な部位の補助的手段の一環として,あるいは露出根面に浸透したエンドトキシン不活性化を目的としてスケーリングやルートプレーニングという機械的操作の後にレーザー照射を行い,その露出根面について観察してきた.そこで,今回は,その操作の逆,すなわち,レーザー照射した後に,機械的操作を行ったものと,これまで行ってきた実験結果を,従前より行ってきた観察方法により比較検討した.
    その結果,X-ray microanalyzer,走査型電顕およびX線光電子分光分析法による観察では,表面の化学組成,形態あるいは存在元素の結合エネルギーは各実験群間において,大きな変化は認められなかった.しかし,接触角については,レーザー照射を行うことにより,レーザーの種類あるいはレーザー照射の後先には差はないものの,レーザー照射の有無あるいは照射量により差が認められ,レーザーを照射したりあるいはその照射量を増加すると疎水性となり,intact cementumの数値に近づくことが確認できた.
  • 釜谷 晋平, 上田 雅俊, 今井 久夫
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 350-360
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    われわれは,メチルメルカプタンではなく,アンモニアをターゲットにして,新しく口臭検査装置を開発し,官能試験の結果,口臭のある被験者のgaschromatographyで分析したメチルメルカプタンの量とわれわれの開発した口臭検査装置で測定したアンモニア量との間には有意な正の相関性が認められた.また,口臭のしない者の測定結果では,アンモニア量は16ppm以下であり,したがって,この数値までが正常値であるということが確認できた.また,口臭のする被験者については,臨床的パラメーターのなかで,アンモニア量とPCR値の間に有意な正の相関性が認められたが,その他の臨床的パラメーター3項目には,やや相関性は認められたが,有意差はなかった.さらに,アンモニア量と位相差顕微鏡による歯周ポケット内総微生物数およびアンモニア量と総微生物に占める運動性徴生物の構成率は両者ともに有意な正の相関性が認められた.一方,初診時と歯周基本治療後の再評価の時点とをアンモニア量,歯周組織の臨床的および歯周ポケット内微生物学的に比較するとともに,アンモニア量と臨床的パラメーターおよび歯周ポケット内微生物の観察との関連性を検討した結果,アンモニア量,臨床的パラメーターおよび歯周ポケット内微生物ともに初診時と比較して基本治療後の方が数値は低下していた.また,アンモニア量と臨床的パラメーター4項目および歯周ポケット内総微生物の観察結果ともに正の相関性が認められた.
  • 大谷 敬三, 萩原 智子, 大東 道治
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 361-367
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    顎関節を構成する下顎頭と下顎窩は,その形態に密接な関連があるといわれている.しかし,過去の報告から形態変化が両者の間で一致しないことも予想される.一方,現代日本人の小児期の下顎窩の計測は困難であることから,CT三次元再構築像(以下,3D像)を用いた報告が見られ,その妥当性が報告されている.そこで本研究では他の撮像目的により撮像が施されている3D像を用い,小児期における下顎窩の大きさの変化とその三次元的な方向との関連性について検討を行なった.研究資料は,すでに顎顔面部精査のためにCT撮影を行った小児患者のうち36症例72関節(7〜12歳,男児18名女児18名)のデータとした.これらの資料は,撮像依頼目的が,顎関節部の成長発育に影響を及ぼすと考えられる症例を除外したものから得られた.CT画像処理により得られた3D像からまず,下顎窩の大きさの指標として下顎窩の外局長を設定した.
    また,三次元的変化の指標として11計測項目を設定し,計測を行った.そして下顎窩の外局長とそれぞれの計測値との関連をSpearmanの相関係数(p<0.05を有意)を用いて検討した.その結果,外局長と有意な相関係数が得られたのは,水平的位置変化(2項目),前後的位置変化(1項目),左右的位置変化(1項目)の全ての項目および,垂直的位置変化の5項目中2項目の計測値との間であり,左右的位置変化の計測値との間で最も相関が高かった.この結果は小児期における下顎頭の左右径の成長発育が顕著であるという報告と一致する.以上より,小児期における下顎窩の大きさの変化は,左右的変化との関連が強いことが判明し,小児期の顎関節の骨構成体は左右方向の大きさの変化が最も顕著である可能性が示唆された.
  • 竹村 明道, 諏訪 文彦, 郭 偉, 玉田 善堂, 池 宏海, 方 一如, 張 志願
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 368-376
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    腫瘍組織移植後における微細血管構築ならびにその形成時期を明らかにすることを目的とした.ヒト舌癌患者から分離培養した舌癌由来細胞を雌ヌードマウスの左側腰背部皮下に移植し,増殖した腫瘍組織を摘出し,細切した舌癌細胞由来の腫瘍組織片を別の雌ヌードマウスの左側腰背部に移植した.移植側は実験側とし,右側は正常側とした.移植後10日および20日に,光学顕微鏡用標本ならびにアクリル樹脂注入微細血管鋳型標本を作製し走査電子顕微鏡を用いて比較観察した.移植後10日では,実験側の腫瘍組織に分布する血管には口径の急激な減少や蛇行,樹脂の漏出が観察された.正常側には上記所見は観察されなかった.移植後20日では,腫瘍組織の表層に毛細血管によって形成された網目状の微細血管構築が観察された.この毛細血管網の一部に注入樹脂の漏出が観察され,腫瘍血管は脆弱と考えられた.また,毛細血管網を構成する毛細血管の表面に多数の短い棍棒状の新生した毛細血管の突起が観察された.これらの新生した突起は,腫瘍が増殖し続けるために,従来の毛細血管網の外側に新たな毛細血管網を構築するのに必要と考えられた.一方,毛細血管網よりも内側,すなわち腫瘍組織深部では,血管はほとんど観察されない大きな空間が広がっていた.この空間は腫瘍組織で満たされていた.
    上記の観察結果ならびに先人達の報告から判断して,腫瘍特有の微細血管構築が形成されるのは移植後15日から18日の間と考えられた.
  • 末瀬 裕一, 篠原 光子
    原稿種別: 本文
    2003 年 66 巻 4 号 p. 377-383
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    1972年,大阪歯科大学薬理学講座でWistar Kyoto系由来のラットの中に自然発症歯肉炎ラット(ODU plaque susceotible rats: ODUS/Odu)を見出し,近交系として確立し現在84代目に至っている.これらのラットは,人為的手段を何ら講じることなく,生後5週齢から市販の飼育用粉末飼料と水のみの投与により,下顎前歯唇側歯頸部に善明な歯垢形成と歯周ポケットおよび歯肉炎を発症する.
    今回,私たちはこれらのラットの歯垢形成感受性について遺伝学的見地から検討した.実験にはODUS/OduおよびACl/NJclを用い,雑種第一代(F1),雑種第二代(F2)および戻し交配(BC)ラットを作製し,歯垢形成状態を13週間観察し検討を加えた.その結果,F1では歯垢形成は全く見られず,F2では約半数に歯垢形成が観察され,BCにおいては87.4%に歯垢形成が見られた.以上の結果をメンテルの法則に当てはめて検討を加えると,歯垢形成感受性が劣性遺伝子3個によることが示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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