歯科医学
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67 巻, 1 号
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  • 山根 一芳, 山中 武志, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    Prevotella nigrescens (P. nigrescens)は,歯周炎を始めとする口腔感染症病巣から高頻度かつ高比率に分離される黒色色素産生性の偏性嫌気性グラム陰性悍菌である.我々はこれまでに慢性歯周炎患者の歯周ポケットからexopolysaccharide (EPS)産生P. nigrescens. (strain 22)を分離し,その性状を検討してきた.本研究では精製したEPSのメチル化分析を行い,化学構造を解析するとともに,strain 22とstrain 22にethidium bromideを作用させて確立したEPS非産生株(strain 328), strain 22を熱処理したheat-killed strain 22 (strain 22-HK)の系を用いて,マウスに対する膿瘍形成能と菌体の貪食抵抗性を比較し,病原性に与えるEPSの影響について検討した.
    メチル化分析の結果,EPSはマンノースを主成分とする多糖で,1→2結合マンノースを主鎖に多くの側鎖を持つ構造であることが推定された.マウスにおける膿瘍形成能はstrain 22>strain 22-HK>strain 328の順であった.In vitro多核白血球(PMNLs)貪食試験の結果,strain 22, strain 22-HKの菌体はPMNLsに貪食されなかったが,strain 328は速やかに処理され,貪食空胞内に取り込まれた.Strain 22の培養上清は,PMNLsによるラテックスビーズの取り込みを抑制したが,PMNLsの走化性に大きな影響を与えなかった.
    これらの結果から,マンノースを主鎖とするEPSは,主にPMNLsの貪食抵抗因子として働き,P. nirescensの病原性に強く関与していることが示唆された.
  • 藤岡 宗之輔, 小正 裕
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 13-29
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    著者らは,CPチタン鋳造において,リン酸塩系埋没材を用いた鋳型を1400℃で焼却すると,埋没材中のセラミツク質がガラス化して焼結鋳型が生じ,鋳造体表層の反応層の生成を抑制できることを報告した.しかし焼結温度が高湿であり,この方法を一般的にするには,焼結温度を低下させる必要がある.本論文では,焼結鋳型を用いたCPチタン鋳造において,焼結温度を低下させた条件でもCPチタン鋳造体表層の反応層の生成を抑制する埋没材の開発を目的に,予め各種ガラスを配合したガラス配合型リン酸塩系埋没材を試作し実験を行った.
    実験は,実験1として,軟化湿度約800℃のリチウム珪酸ガラス板および約1600℃の溶融石英板に直接チタン溶湯が接するようにチタン鋳造を行い,鋳造体表層の反応順について検討を行った.実験2として,軟化湿度約700℃のアルミノ硼珪酸ガラスを加え,計3種類のガラス配合型埋没材を試作し,それぞれの物理的性状について検討をした.さらに本試作埋没材を用いてCPチタン鋳造冠を製作し,鋳造冠表層に生じる反応層および適合精度について検討を行った.焼却温度条件は,実験1,2とも800, 900, 1000, 1100および1200℃の5条件とした.
    実験1の結果,リチウム珪酸ガラスを用い,800および900℃で焼却,鋳造したチタン鋳造体表層の反応層の生成が抑制されていた.このことより軟化温度の低いガラスがチタンとの反応性を低くする可能性が示唆された.
    実験2の結果,リン酸塩系埋没材に軟化湿度の低いアルミノ硼珪酸ガラスを配合すると,鋳型焼却湿度の低い条件でも,埋没材の物理的性状が向上し,鋳造冠表層の反応層の生成が抑制され,さらに浮き上がり量も他の試料にくらべ小さくなることが明らかとなった.
    なわち,ガラス配合型リン酸塩系埋没材は良好なCPチタン鋳造体の製作に有用であることが示唆された.
  • 浦 栄吾, 森田 章介
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    細胞の寿命は染色体末端に存在するテロメアによって決定され,またさまざまな細胞周期関連タンパクも老化の進行に働く.これらの因子の異常が複雑に絡み合って老化プロセスに影響を与え,さらに発癌にも関与すると考えられるが,実験的な検証は十分ではない.そこでin vitroでの発癌モデルを作製し,老化メカニズムの異常が発癌にどのように関わっているのかを実験的に検索した.6週齢のSD系雄ラットに4NQO水溶液を4週間投与後に舌粘膜を採取し,その上皮細胞をクローニングして得られた培養細胞を20回まで継代し実験に用いた(4NQO刺激群).また蒸留水のみを与えたものを対照とした(非刺激群).そしてこれらの細胞をヌードマウスに移植し組織学的変化を調べ,テロメラーゼ活性,TERT, TEP1, c-Myc, p16およびp53の発現,さらにβ-ガラクトシダーゼを検索した.
    その結果,20回継代を行った4NQO刺激群の細胞をヌードマウスに移植すると扁平上皮癌が発生したが,非刺激群では組織学的変化はみられなかった.4NQO刺激群における癌化の過程でテロメラーゼ活性が上昇した.これはTERTのmRNAの発現が増強していたことから,TERTの上昇によると考えられた.TEP1およびc-Mycの発現には変化がなかった.p53の発現は継代とともに上昇した.またp16も同様に上昇したが,細胞の癌化とともに急激に低下した.p16およびp53は細胞老化エフェクターで, D16の急激な低下は老化を回避する方向に働くと考えられた.これは非刺激群でβ-ガラクトシダーゼが強染したのに対して,4NQO刺激群では染色されなかったことから検証された.
    以上のことから,本実験モデルにおける細胞の癌化には,テロメラーゼ活性の上昇と細胞老化エフェクターであるp16の低下による細胞老化プロセスの異常が,深く関与していると考えられた.
  • 小池 敏克, 野口 吉廣, 今井 久夫
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma: PRP)は,活性血小板から放出される種々な成長因子やフィブリン網の架橋増強作用を有し,そのため創傷治癒が促進され,歯周組織の再生が導かれると期待されている.一方,従来から行われている歯周組織再生治療の一つであるエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)の歯周疾患罹患歯根面への塗布では,かなりの幅の新付着獲得とともに骨の再生が報告されてきた.そこで本研究では,ラットに作製した実験的歯周組織欠損に,PRPあるいはEMDを応用した後に得られる歯周組織の治癒形態について,病理組織学的ならびに組織計測的に比較し,PRPの歯周組織再建療法への応用の可能性を検討した.実験材料としては,安楽死させたラットから生成した同種血液由来PRPと,EMDとしてエムドゲイン^<[○!R]>ゲルを用いた.またキャリアーとしてアテロコラーゲンスポンジを使用した.ラットの上顎両側第一臼歯の口蓋側に歯周組織欠損を作製し,PRP(PRP群),EMD(EMD群)を挿入した.さらに両側の欠損部にアテロコラーゲンスポンジ(AC群)のみを填入した.その結果,PRP群では,歯槽骨の再生はEMD群に比べ顕著に促進されたが,シャーピー線維の封入を伴った新生セメント質形成に関しては劣っていた.これらのことから,PRPの歯周組織再建療法への応用に際しては,間葉系幹細胞や他のサイトカインとの併用の効果を検討する必要性が示唆された.
  • 内貴 寛敬, 小野 圭昭, 小正 裕
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 51-63
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究は鼻呼吸動態の計測を利用し,臨床に応用可能な嚥下運動の臨床的検査法を検討することを目的とするものである.正常被験者に対して差圧型気流量計を用いて鼻呼吸動態,オトガイ舌骨筋筋活動,喉頭運動ならびに胸郭・腹部運動を計測することによって嚥下時の鼻呼吸動態を明らかにし,従来の検査法と比較検討した.鼻呼吸停止時間とオトガイ舌骨節筋活動時間,喉頭運動時間,胸郭運動停止時間ならびに腹部運動停止時間とを比較した結果,鼻呼吸停止時間は他のパラメータよりもばらつきが小さく,鼻呼吸停止時点ならびに開始時点を明確に特定することが容易であった.また,水至適嚥下量(20mL)において,鼻呼吸はオトガイ舌骨節筋活動開始時点および喉頭運動開始時点よりも遅れて停止し,オトガイ舌骨筋筋活動終了時点よりも遅く,喉頭運動終了時点よりも早く開始していた.至適嚥下量範囲内の嚥下では鼻呼吸動態とオトガイ舌骨節筋活動ならびに喉頭運動との間に顕著な差は認められなかった.至適嚥下量を越えると,鼻呼吸はオトガイ舌骨筋筋活動開始時点よりも遅れるが喉頭運動開始時点よりも早く停止し,オトガイ舌骨筋筋活動終了時点および喉頭運動終了時点よりも遅れて開始することが明らかとなった.以上の結果よリ,嚥下運動を評価するにあたり,鼻呼吸動態を計測することは他のパラメータよりも正確,簡便であり,嚥下運動の臨床的検査法として有用であると考える.
  • 井上 明洋, 森田 章介
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 64-72
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    関節軟骨の主要な基質成分であるプロテオグリカンは,単に組織構築に関与するだけでなく,近年,成長因子や細胞外マトリックス成分および細胞との相互作用をとおして,組織の分化,機能発現,修復などに重要な役割を果たすことが注目されている.本研究では,咬合の変化が下顎頭軟骨に及ぼす影響を調べるために,臼歯抜歯後のラット下顎頭軟骨プロテオグリカンの変化を生化学的に検索した.8適齢雄ラットの片側上顎臼歯を抜歯し,抜歯後5, 10, 15および20週に下顎頭を抜歯側と非抜歯側に区別して摘出した(実験群).対照として同適齢の抜歯を行わなかったラットの下顎頭を用いた(対照群).下顎頭よリメスで採取した軟骨試料からプロテオグリカンを抽出し,ウエスタンブロッティングによリ分離固定した.また,軟骨試料からRNAを抽出しRT-PCRでプロテオグリカンmRNAの発現を確認した.さらにreal-time PCRで定量的に解析した.その結果,組織学的および免疫組織化学的検索では,実験群の抜歯側および非抜歯側のいずれも対照群と著しい差異を認めなかった.またウエスタンブロッティングによる解析から,ラット下顎頭軟骨のプロテオグリカンとしてアグリカン,デコリンおよびフィブロモジュリンの存在が考えられた.そこで各プロテオグリカンのmRNAの発現をreal-time PCRで定量的に検索したところ,アグリカン,デコリンおよびフィブロモジュリンが対照群に比べて実験群で増加しており,この増加は非抜歯側よりも抜歯側において著明であった.これらのことから咬合の変化は抜歯側下顎頭軟骨のプロテオグリカンの合成を促進させ,その影響はさらに非抜歯側の下顎頭軟骨にも及ぶことが示唆された.
  • 本田 智世, 一ツ町 淳子, 本田 領, 犬伏 俊嗣, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    下顎骨の側方偏位に関して,いくつかのバリエーションが存在することが知られている.そこで今回,下顎骨の側方偏位が認められる骨格性下顎前突症患者46名を対象とし,初診時の正面頭部X線規格写真と口腔模型とを用いて,これらの計測項目についてクラスター分析を行い,共通した特徴を示すもの同士をグループ化する手法を考案した.得られた各クラスターの中で,計測項目間で相関分析を行い,各クラスターの特徴を統計学的に検討した.資料をクラスター分析により大きく5つのクラスターに分類した.資料数の少なかった1クラスターを除いた4つのクラスターについて相関分析を行った.その結果各クラスターは,(1)Meの偏位が上顎第一大臼歯の左右的位置と相関を示すもの,(2)各計測項目の値にほとんど相関が見られないもの,(3)Meの偏位がAG line angle, Mo line angleと相関を示すもの,(4)AG line angleがMe, Zyg line angle, MX line angle, Cd line analeと相関を示すものであることがわかった.以上の結果よリ,下顎側方偏位を(1)下顎骨が体軸に対して回転しているもの,(2)偏位に規則性が見られないもの,(3)左右の下顎枝の長さに差が見られるもの,(4)変形が側頭骨にまで及び,外力の関与が示唆されるもの,という4つのグループに分類することができた.下顎骨側方偏位を診断するうえで,クラスター分析によって,分類し,その特徴を明らかにするという手法の有効性を示すことができた.
  • 森下 寛史, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    骨関菌症は関節軟骨の改造,吸収により変化した慢性的な疾患で,軟骨細胞自ら周囲の軟骨マトリックスを破壊するものである.その原因はMMPおよびTIMPのバランスの不均衡によりおこるもので,これまで蛋白レベルでの研究成果が報告されできた.そこで今回,われわれはICRマウスを用いて順関節におけるMMP-3とTIMP-2の遺伝子発現を分子生物学的に研究した.さらに,MMP-3の転写因子であるets-1も観察した.RT-PCR,定量PCR法を用いてICRマウスの顎関節におけるMMP-3, TIMP-2およびets-1の遺伝子発現を確認した.適齢が進むにつれMMP-3, ete-1は関節円板・滑膜複合体および下顎頭軟骨では増加し,TIMP-2は関節円板・滑膜複合体では増加するものの下顎頭軟骨では減少した.これらの所見は下顎頭軟骨ではMMP-3とTIMP-2のバランスが崩れ,骨関節症を進行させることを示唆するものであり,さらにets-1もまた骨関節症に重要な因子であることがわかった.
  • 正重 裕一, 中嶋 正博, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 87-97
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はネコ下歯槽神経を用いて,神経欠損を作製後,中枢側および末梢側両断端に顕微鏡下で豚皮由来コラーゲン製神経再生誘導管を接合し,その再生過程を電気生理学的,組織学的および免疫組織化学的に検討することである.組織学的および免疫組織化学的には術後12週で神経再生が観察された.電気生理学的には移植群では,術後2週目で術前の値に比べて筋活動電位の潜時に延長がみられたが,術後24週ではほぼ術前値に近づいた.また術後24週において移植群から記録された神経活動電位の大きさから,神経がほぼ再生されていることが判明した.切断された下歯槽神経に神経再生誘導管を移植することで,組織学的(形態的)にも電気生理学的(機能的)にも神経の再生が認められ,臨床応用の可能性が示唆された.
  • 鍋島 呂実, 蓮舎 寛樹, 山本 昌宏, 神原 敏之, 川本 達雄
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    顎顔面形態と口腔周囲筋の問には,強い相関があると考えられている.とくに骨格性下顎前突症と舌位の関連性については,様々な手法を用いて検討されている.これらの報告は,側面頭部X線規格写真によるものが多い.本研究は,安静時および雨下時における舌運動を,歯面に対する舌の接触圧で評価した.測定部位は,上下顎中切歯舌側面の切端寄リおよび歯頸部,上下顎第一大臼歯舌側面の咬合面寄リおよび歯頸部とした.これらの測定結果を,骨格性下顎前突症患者と正常者間で比較,検討した.その結果,骨格性下顎前突症患者の舌は,安静時において下顎前歯の切端寄りおよび歯頸部に強<接していた.また嚥下時では上顎前歯にあまり接触せず,下顎大臼歯の歯頸部に強く接していた.このことから,骨格性下顎前突症患者の舌は正常者と比較して,安静時には前歯部で,嚥下時には全体的に低位をとることが示唆された.
  • 薬師寺 健太郎, 澤井 宏文, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    活性化した破骨細胞による骨組織の吸収は,歯周疾患発症に関わる特徴的な病態の一つである.破骨細胞の形成には,骨芽細胞の細胞膜上に発現した,receptor activator of NF-κB ligand (RANKL)の関与が不可欠であることが知られている.RANKLはTNFスーパーファミリーに属し,その発現にはcAMP, gp 130やビタミンDレセプターを介した経路が明らかにされている.また-方,プロテインキナーゼC(PKC)を直接的に活性化することが知られているホルボールエステル(PMA)刺激によりRANKLが発現するということが報告されていることから,RANKL発現機序にPKCが関与していることが考えられる.PKCには10種類以上のアイソザイムが存在し,細胎内の生理機構に対する分子生物学的機能もそれぞれ異なっている.しかし個々のPKCアイソザイムレベルにおけるRANKL発現への関与については知られていない.そこで我々は, RANKL発現におけるPKCアイソザイムの関与を明らかにすることを目的として本研究を行った.破骨細胞様細胞誘導共培養フィーダー細胞として使用される骨髄ストローマ細胞様細胞株(ST2)は,1.25-(OH)_2D_3 (活性型ビタミンD_3)存在下において破骨細胞様細胞誘導能を有している.まず最初に,ST2が活性型ビタミンD_3の刺激によりRANKLmRNAを実際に発現するか否かを検討した.活性型ビタミンD_3により刺激されたST2から, 8, 24, 48, 72時間後にRNAを抽出し,RT-PCR法にて,GAPDHmRNAを対象として発現を検討した結果,活性型ビタミンD_3の刺激によりRANKLmRNAの発現は経時的に増強していた.Western Blotting法によるRANKL蛋白の検出においても,活性型ビタミンD_3刺激によりRANKL蛋白の発現増加が認められた.次に,これらのRANKL発現増強効果にPKCが関与しているか否かの検討を行った.非特異的PKC阻害剤であるStaurosporineによるPKC活性阻害では,RANKLmRNAおよびRANKL蛋白の発現が抑制されなかった.PKC-δ特異的阻害剤であるRottlerinによりPKC-δ活性を阻害したST2に活性型ビタミンD_3による刺激を加えたところ,RANKLmRNAの発現が抑制された.またWestern Blotting法においてもRottlerinによりRANKL蛋白の発現が抑制された.以上の結果より,ST2における活性型ビタミンD_3の刺激によるRANKL発現にPKC-δが関与していることが示唆された.
  • 冨井 真左信, 柏木 宏介, 川添 堯彬
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 111-120
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,伝導性感圧インクを応用した咬合接触検査装置を用いた咬頭嵌合位ならびに側方滑走運動における時間パラメータ計測についての再検査信頼性を検討した.被検者は健常有歯顎者男性11名を選択した.咬合接触の時間パラメータの計測には,T-スキャンII(ニッタ,大阪)を用いた.被検者には合図と共に最大咬みしめを行わせ,約2秒間保持させた後,側方滑走運動を行わせた.計測は3〜4日間隔で2回の測定日を設け,予備試行の後,2回の繰り返し測定を行った.計測した時間的パラメータは,咬合接触時間:オクルージョンタイム(以下,OT)と,咬合接触離開時間:ディスクルージョンタイム(以下,DT)とした.なお,T-スキャンソフトウエア上で,一回の計測データを同一術者が1週間間隔で2度解析した.測定日内と測定日間の再検査信頼性の検討には,級内相関係数とBland-Altman法から得られる平均差と95%一致限界で定量化を行った.次に,測定日,繰り返し,測定回数,解析が測定誤差に及ぼす影響を推定するために,分散分析で得られた分散成分から一般化可能性研究を行った.OTにおいて,測定日内と測定日間の両方について高い級内相関係数が得られた.またBland-Altman法において平均差はゼロに近く,95%一致限界は-0.086〜0.136秒を示した.これに対して,DTではOTに比較して,級内相関係数は低かった.平均差はゼロに近いものの95%一致限界はOTに比較して,大きい値を示した.一般化可能性研究において,OTでは,測定日,繰り返しにかかわる因子が測定誤差に及ぼす影響が認められた.これに対して,DTでは被検者,測定日と繰り返しの3相関の交互作用の因子のほかに解析の因子もわずかに測定誤差に影響を及ぼしていた.以上のことから,OTでは良好な再検査信頼性を示し,DTでは測定方法のさらなる基準化が必要であることがわかった.
  • 糸田 昌隆, 楠本 哲次, 川添 堯彬
    原稿種別: 本文
    2004 年 67 巻 1 号 p. 121-135
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/05/15
    ジャーナル フリー
    摂食機能療法の依頼箋が処方された障害者を対象に摂食・嚥下障害の実態を調査するとともに,嚥下造影(VF)を用いて,その特徴を評価し,咬合状態の影響を検討した.対象は,わかくさ竜間リハビリテーション病院入院患者において,リハビリテーション前にVFを行った228名(男性124名,女性104名)と,そのなかでリハビリテーション後にVFを行った28名(男性19名,女性9名)とした.調査内容は,性別,年齢,原疾患,原疾患発症から入院までの期間,日常生活自立度,リハビリテーション期間(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,歯科医師および歯科衛生士のそれぞれによる期間),残存歯数,アイヒナーの分類に基づく咬合支持の状態,治療の状態である.VFは当病院で用いているプロトコールにしたがって行い,評価は先行期,準備期,口腔期,咽頭期の4期に分け,各評価項目について障害の程度により点数化し,各調査項目と障害の総点数の関連性(Kruskal-Wallis検定,Mann-Whitney検定,Fisherの直接確立計算法,有意水準5%)について検討した.その結果,1.平均年齢は76.1歳で70, 80歳代を合わせると約60%を占めた.2.原疾患は,脳血管障害が3/4以上を占め,そのなかでは脳梗塞が60%を占めた.3.原疾患発症から入院までの期間は300日以下の人が約80%を占めた.4.日常生活自立度ではランクCが3/4以上を占め,寝たきリ度の高い集団であった.5.各リハビリテーションの期間は平均3〜6か月であった.6.咬合状態として,平均残存歯数は11.8歯で,アイヒナーのクラスCが過半数を占め,咬合支持がなく,補綴処置を行っていない人が35.1%を占めた.7.先行期,口腔期では過半数の人が,準備期および咽頭期ではほとんどの人が障害を持っていた.8.各調査項目と摂食・嚥下機能の障害との関連性を調査したところ,関連していなかった.9.リハビリテーション後のVFの結果,摂食・嚥下障害が改善傾向にある人では先行期,準備期での障害が改善され,悪化傾向にある人では準備期の障害の悪化が共通して認められた. 10.残存歯数が多く,良好な咬合支持を持ち,ブリッジや義歯による治療を行っている人の方が,摂食・嚥下障害が改善傾向にあった.以上のことから,咬合状態が,摂食・嚥下のリハビリテーションを左右するので,歯科医師を始めとした医療スタッフが積極的に参加し,口腔機能の改善をはかることが重要であることが示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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