歯科医学
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71 巻, 1 号
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  • 加藤 尚, 前田 照太, 井上 宏
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    粘膜支持を含む可撤性局部床義歯において,義歯装着後に生じる歯槽骨の吸収などにより,義歯床下粘膜への適合性が経年的に低下することは避けられない.義歯不適合に対する処置として,リライニングはよく行われているが,リライニング後の義歯の機能評価についての研究は少ない.そこで,本研究はリライニングの効果について筋電図学的に明らかにすることを目的として行った.被験者は,遊離端欠損部に可撤性局部床義歯が装着されておリ,適合検査を行った上でリライニングが必要であると診断され,残存歯および対合歯の状態が天然歯もしくは固定性修復物による適切な処置が施されている男性4名,女性4名の計8名とし,リライニング直前,直後,1週後,2週後に両側の咬筋中央部,側頭筋前部の表面筋電図を計測した.被験運動はタッピング,レーズンおよびピーナツ咀嚼,クレンチングであった.その結果,ピーナッツ咀嚼において時間的要素のCVはリライニング直前と比較して1週後,2週後で有意に減少した.積分値ではリライニング直前と比較してリライニング直後で有意に増加した.積分値のCVではリライニング直前と比較してリライニング直後,1週後,2週後で有意に減少した.レーズン咀嚼において時間的要素のCVはintervalおよびcycle timeのCVでリライニング直前と比較してリライニング直後,1週後,2週後で有意に減少した.積分値ではリライニング直前と比較してリライニング直後で有意に増加した.積分値のCVではリライニング直前と比較してリライニング直後,1週後,2週後で,リライニング直後と比較して1週後,2週後で有意に減少した.クレンチングの平均電位がリライニング前後で有意に増加した.以上のことからリライニングの効果が筋電図学的に咀嚼運動時の時間的要素および積分値のCVの減少,咀嚼運動時の積分値およびクレンチング時の平均電位の増加から裏付けられた.
  • 岩井 理恵, 木下 智, 森田 章介
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 10-20
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    歯性感染症には口腔内の偏性嫌気性グラム陰性桿菌(Obligate anaerobic Gram-negative rod,以下OGNR)が関与する.治療にはβ-lactam薬が頻用されるが,耐性菌の存在は難治化の一因である.本研究では,歯性感染症における口腔由来OGNRのβ-lactam薬耐性機序を解明するため,β-lactamase遺伝子の検出,解析および発現を試みた.成人男性より唾液を採取し,嫌気培養,グラム染色,酸素感受性,β-lactamase産生性,最小発育阻止濃度測定にてβ-lactamase産生・β-lactam薬耐性・OGNRを選択後,同定した.β-lactamase遺伝子保有は,9種のβ-lactamase遺伝子のプライマーでPCRを行って調べた.PCR産物の塩基配列を決定後,データベース上の配列と比較した.さらにPCR産物を大腸菌に導入し,発現を調べた.供試菌は7菌種が同定され,口腔由来β-lactamase産生・β-lactam薬耐性OGNRは多菌種存在することが示された.CfxA2でのPCRでは供試菌すべてでPCR産物が得られ,既報のβ-lactamase遺伝子と高い相同性を示した.他の各プライマ一では1〜10株で検出された.形質導入ではいずれも発現しなかった.PCR産物が得られ,塩基配列が既報β-lactamase遺伝子と高い相同性を示したことは,PCR産物が供試菌のβ-lactamase遺伝子で,多種存在することを示唆している.1株中に複数のβ-lactamase遺伝子も存在し,組み換えで新たなβ-lactamaseが生じる可能性が示唆された.形質導入では,プロモーターやレシピエントの不具合が考えられ,口腔由来OGNRのβ-lactamase遺伝子は本菌群に広く存在する一方,本菌群以外の菌種では発現しない可能性が示唆された.
  • 松島 由紀, 森田 章介
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 21-28
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    p21WAF1/CIP1(p21)はサイクリン依存性キナーゼインヒビターの一つであり,DNA損傷時に癌抑制遺伝子であるp53によって発現が誘導され,細胞増殖抑制に働くことが広く知られている.上皮細胞において細胞増殖抑制作用を示すtransforming growth factor-β(TGF-β)もまたp21を誘導する.悪性腫瘍においてp21の過剰発現が多く報告されているが,この発現の多くはp53非依存性であることが示されている.しかし,p21発現と癌化との関連性について明らかにされていない.そこで今回,4-nitroquinoline 1-oxide (4NQO)誘発ラット舌癌を用いて,発癌過程におけるp21とTGF-βの発現を免疫組織化学的に検索した.実験にはSD系ラットを用い,50ppmの4NQO水溶液を飲料水として投与した.投与開始から4週,8週,12週,16週,20週および24週で舌組織を採取し,p21およびTGF-βの免疫染色を行った.p21は4NQO投与開始後12週まで上皮に発現が認められたが,16週では発現がほぼ消失した.その後,24週で過剰発現がみられた.TGF-βは16週においてわずかに発現がみられ,24週では腫瘍組織に強い発現が認められた.p21は16週でp53の変異に伴い消失し,TGF-β誘導により24週で過剰発現すると考えられた.また,24週ではKi-67の発現が減少したことより,p21の増殖抑制作用が働いたと考えられるが,その作用は十分に機能していないと推測された.今回の実験では,発癌過程でp21の発現に変化が認められ,腫瘍組織における過剰発現はTGF-βの誘導による可能性が示唆された.
  • 嶽北 亜紀, 山本 浩貴, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮腫由来細胞におけるビタミンA添加時のSonic hedgehog (SHH)とNotchタンパク質発現の有無をウェスタンブロッティングで解析し,さらに同細胞におけるタンパク質を抗体アレイ法を用い網羅的に解析を行った.ウェスタンブロッティングの結果,ビタミンAはエナメル上皮腫由来細胞のNotchタンパク質とSHHタンパク質の発現を誘導した.またタンパク質抗体アレイ法においては,ビタミンA添加群は対照群と比較してRas-GRF2,Rho-GDIなどの細胞増殖に関連したタンパク質発現が抑制されていた.一方,TNFαおよびTRADDなどのアポトーシス誘導物質の発現が促進されていた.これらのことより,ビタミンAはエナメル上皮腫を分化誘導させ,細胞増殖に抑制的に働くことが示唆された.
  • 森川 康之, 四井 資隆, 松本 尚之
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 35-48
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    歯列矯正装置が磁気共鳴画像装置(以下,MRIと略す)に及ぼす影響について,多岐の材料の組み合わせを実験的に検討した.試料および方法として,プラスチック製歯列模型にブラケット3種類(スチール,セラミック,レジン)とワイヤー4種類(スチール, NiTi,ヒートアクチベートNiTi,ベータTi),リガチャー2種類(スチール,エラスチック)を組み合わせた装置を作製の上,1.5Tesla MRI装置を使用し,6種類の撮像シーケンス(以下,撮像法と略す)で撮像した.得られた画像で障害について,信号強度の変化と信号欠損の大きさ,信号欠損直近のひずみ,3次元構築像でのゆがみの計測を行い,以下の結果を得た.すべての部品がスチール製の矯正装置を装着した場合にGR-T2法で極端な信号強度の低下を示し,画像の表示が困難となった.同じ組み合わせで最大の信号欠損を形成し,磁場方向で160mm,左右方向で145mm,上下方向では137mmに達した.セラミック・ブラケットにスチール以外のワイヤ一をエラスチック・リガチャーで結紮した場合は障害像を発生しなかった.スチール・ブラケットを装着した場合,MRIのすべての撮像で磁場方向に100mm以上の信号欠損を形成し,特にSE-T1法で広範囲に影響した.信号欠損周囲では縮小傾向で0.62倍,膨張傾向で1.58倍のひずみを示し,影響は広範囲に及んだ.3次元像ではスチール・ブラケットを装着した場合には,他の材料に関わらずほぼ10mm以上のゆがみを示し,その最大値は13.7mmであった.スチール製歯列矯正装置を用いた場合に最大の金属障害が発生するのはスチールが常磁性体であり,磁場断面積が大きいためである.しかし,スチール・ブラケット単独の場合でも大きな金属障害を生み出し,ブラケット相互間の電気的短絡がない状態でも障害を生ずる.したがって,磁力線に対する影響は相乗効果かあるものと考えられる.MRI検査を用いる可能性のある歯科矯正治療患者には,スチール製矯正装置を避け,他の材料の装置作製が必要である.また,撮像法はFSE法やFGR法を用いるべきであると考えられる.
  • 亀水 忠宗, 柿本 和俊, 小正 裕
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 49-58
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    義歯装着者にとって,義歯の衛生管理は口腔の健康を保つ上で重要である.しかし,義歯を装着した高齢者の口腔ケアは,健常者でも十分ではなく,要介護者では清掃不良であることが多い.義歯の汚れであるデンチャープラークは,義歯性口内炎や口角炎など口腔疾患の原因になることが知られている.義歯の清掃方法には,デンチャーブラシなどを用いた機械的な除去法と,義歯洗浄剤を用いた化学的な除去法があるが,これらの方法では除去困難なものがある.また,軟質裏装材で裏層されている場合には使用できない義歯洗浄剤も多い.義歯以外にも,血管内留置カテーテル,尿路カテーテル,人工血管,人工心臓弁,コンタクトレンズおよび人工呼吸器などの医療器具表面にバイオフィルムが形成され,除菌を困難にして,慢性,難治性のバイオフィルム感染症を引き起こすことが知られている.本研究では,義歯表面に形成されるデンチャープラークに含まれるバイオフィルム形成細菌を,走査電子顕微鏡を用いてスクリーニングした.その結果,デンチャープラークから分離した細菌の43%がバイオフィルムを形成することがわかった.また,これらの細菌を同定した結果,亜急性心内膜炎や肺炎などの原因となる細菌種が認められた.このようなバイオフィルム形成細菌は,局所で定着して慢性,難治性のバイオフィルム感染症の原因となり,義歯装着患者に日和見感染症を引き起こす可能性が示唆された.デンチャープラークはバイオフィルムを形成しておリ,全身感染症の原因となる微生物のリザーバーになるといえる.
  • 上杉 直斗, 小野 圭昭, 小正 裕
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 59-72
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,姿勢変化が食塊輸送の円滑性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,水1回嚥下時ならびに水連続嚥下時における口腔内圧と咽頭圧を同時記録して検討した.被験者は摂食・嚥下機能に異常を認めない男性7名(23〜29歳)である.口腔内圧の計測はマイクロチップ圧力トランスデューサーとセンサー保持用実験床を用いた.咽頭圧の計測は2つのセンサーが同一方向に5cm間隔で設置されたマイクロチップ圧力トランスデューサーを用い,経鼻挿入することによって計測した.また,喉頭運動の計測は加速度ピックアップを用いた.姿勢変化の各条件は,被験者が最も容易にストロー1回嚥下ができる頭位を基準位とし,基準位から30°前屈させた頭位を前屈位,30°後屈させた頭位を後屈位とした.被験運動は,ストローによる1回嚥下ならびに連続嚥下の2種類である.分析パラメータは1)口腔内圧最大点と中咽頭圧最大点との時間差,2)口腔内圧最大点と喉頭運動最大点との時間差,3)喉頭運動最大点と中咽頭圧最大点との時間差,4)中咽頭圧最大点と下咽頭圧最大点との時間差,5)喉頭運動間隔および6)1回嚥下量である.統計処理は,被験者内および全被験者のデータについて姿勢条件を因子とした一元配置分散分析を,姿勢変化の影響については多重比較検定を行った.また,基準位において1回嚥下と連続嚥下を比較するために各パラメータについてt検定を行った.その結果,1.口腔から咽頭への輸送期は姿勢の変化によって影響を受けた.2.口腔から咽頭への輸送期において輸送期前半部分が輸送期全体に影響を及ぼすことが明らかとなった.3.姿勢変化は咽頭期における食塊輸送円滑性に影響を及ぼさなかった.4.姿勢変化は嚥下リズムおよび嚥下量に影響を及ぼさなかった.以上のことから,姿勢の変化によって食塊輸送の円滑性は影響を受けることが示唆された.
  • 福岡 哲郎, 柿本 和俊, 小正 裕
    原稿種別: 本文
    2008 年71 巻1 号 p. 73-87
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    Er:YAGレーザーの波長は2.94μmであり,水の吸収スペクトルのピークに近い.このことから,Er:YAGレーザーによる歯の切削は,歯の内部および外部に存在する水分子がレーザー光を吸収することによって起こるphoto-ablation作用と熱作用によるphoto-thermal作用に起因すると説明されている.著者らは歯の構成成分であるハイドロキシアパタイト(HAP)のEr:YAGレーザーによる切削機序について研究してきた.HAPの切削には外部もしくは内部の水の存在が必要であり,またHAP分子の水酸基はHAPの温度上昇に寄与して,photo-ablation作用を助けることが判明した.今回,著者らはヒトの歯のEr:YAGレーザーによる切削について,切削時の注水および歯の内部の水の影響を検討した.試料歯には,抜去後直ちに生理食塩水中で保存した新鮮歯と電気炉内で乾燥させて内部の含水率の低下した乾燥歯を用いた.また,乾燥歯の含水率は四重極質量分析計を用いた昇温加熱ガス分析法とカールフィッシャー法で定量した.照射は試料歯のエナメル質と象牙質に対して行った.照射条件は先端チップと試料表面との距離を0.1mm,パルス幅を10ns,照射エネルギーを200mJ,パルスレートを3Hzで1秒間(3パルス)と5Hzで2秒間(10パルス)の2条件とした.外部環境としては,水中(蒸留水で,通常0.0139〜0.0151%の重水を含む),重水中および大気中の3条件とした.なお,Er:YAGレーザーを水は吸収するが,重水は吸収しない.形成した切削痕を走査電子顕微鏡にて撮影し,試料表面における面積と深さを計測した.さらに,照射痕周囲に発生したクラック数を計測した.その結果,内部に含まれる付着水はエナメル質の切削効率に影響するが象牙質への影響は小さいこと,外部の水は切削痕表面で消失した水を補うことによって切削効率を向上させることが判明した.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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