歯科医学
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71 巻, 2 号
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  • 坂本 恵美子, 護邦 英俊, 本田 領, 胡内 孝美, 蓮舎 寛樹, 西浦 亜紀, 松本 尚之, 蒲生 祥子, 四井 資隆, 清水谷 公成
    原稿種別: 本文
    2008 年 71 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    歯科矯正の臨床において,歯の移動は歯槽骨内に限定される.しかし歯槽骨の内部構造は複雑で,歯根と皮質骨が接すると歯根吸収や歯槽骨の吸収,歯の動揺を引き起こすことがある.このような状態は一般的に非可逆性であり,矯正治療の予後の不安定要因になる.そこで,本研究では,咬合力が集中する第一大臼歯根尖相当部の歯槽骨内部の構造と,歯槽骨形成に関与すると考えられる咬合力,咬筋の形態,顎顔面形態との関連について分析を行った.成人男性18名を被験者とし,歯槽骨内部の構造をコーンビームCTを用いて評価した.顎顔面形態は頭部X線規格写真にて分析した.咬合力の評価にはデンタルプレスケールを用いた.咬筋の形態はMRIにて撮影し計測を行った.歯槽骨の内部構造が各分析項目にどのような影響を与えているかを調べた.その結果,下顎第一大臼歯根尖部の歯槽骨の皮質骨の幅径が大きく,海面骨の幅径も大きいものはFMA,Y-axisが大きく,High Angleの顎顔面形態をもつことが示された.また,皮質骨の幅径の小さいもの,海面骨の幅径の小さいものはFacial Angle, Saddle Angle, Cd-Goが大きい傾向を示し,Low Angleで下顎骨の大きな顎顔面形態を示すことが分かった.また,海面骨の幅径が小さいものは咬筋の体積や咬合力,咬合接触面積が大きい傾向を示し,皮質骨よりも海面骨の厚みのほうが,筋の機能力に関与していることが示された.
  • 西村 耕一, 山根 一芳, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2008 年 71 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    口腔には単一種でバイオフィルムを形成できる細菌が存在し,疾患の慢性化,難治化に関与している.本研究では,口腔細菌のバイオフィルム形成に関与する遺伝子群について知り,口腔細菌によるバイオフィルム形成の遺伝学的背景を明らかにすることを目的に,口腔膿瘍から分離されたStreptococcus intermediusのバイオフィルム形成に関係する遺伝子を検索した.臨床分離のバイオフィルム形成性S. intermedius(H39株)を各濃度のグルコースを含む培地中で24時間培養後,バイオフィルム形成量を測定すると,グルコースの濃度に依存して形成量が増加しており,グルコース代謝がH39株のバイオフィルム形成に深く関与していることが示された.グルコース代謝において,glucose 6-phosphateをα-glucose 1-phosphateに転移する酵素α-phosphoglucomutase(PGM)は,バイオフィルム形成に重要な働きをしていることが報告されている.そこで,データベース上のPGMをコードする遺伝子の配列からプライマーを設計し,H39株のゲノムからpolymerase chain reaction法により遺伝子増幅を試みた.その結果,増幅されたフラグメントは,Streptococcus gordoniiのPGMをコードするpgm遺伝子と高い相同性を示した.このフラグメントの中央部にエリスロマイシン耐性カセットを挿入して作製した遺伝子をH39株に形質転換し,得られた変異株の細胞表層を走査型電子顕微鏡で観察すると,網目状構造物は完全には失われていなかった.これらの結果から,臨床分離のS. intermedius H39株はグルコース依存性にバイオフィルムを形成し,それに関わる糖転移酵素をコードする遺伝子をもっていることが分かった.その形成過程には複数の経路が存在する可能性があり.今後さらに詳しい解析が必要である.
  • 石田 哲也, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2008 年 71 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    高野槙68%エタノール抽出液(試料A)の口腔細菌に対する抗菌域や性状を検索するとともに,精製を試みた.試料Aには夾雑物の混入が予測されたので,Sephacryl S-100によるゲル濾過を行った.溶出には0.05M Tris-HCl buffer(pH 7.5)を用いた.その結果,2つのピークが得られた.抗菌活性は両者に認められた.そこで試料A,第1ピーク,第2ピークの抗菌域を検討した.3者とも広い抗菌域(好気性ないし通性嫌気性菌ではStreptococcus oralis, Streptococcus sanguinis, Enterococcus faecalis, Staphylococcus aureus, Actinomyces viscosus, Bacillus subtilis, Rothia mucilaginosa, Pseudomonas aeruginosa, Escherichia coliなど,偏性嫌気性菌ではPorphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Peptostreptococcus anaerobiusなど)を有し,ほぼ一致した.したがって,以後の実験には第2ピークの凍結乾燥標品(試料B)を供した.試料Bをそれぞれ0〜99.59%濃度のエタノールで溶解し,抗菌活性を測定した.その結果,エタノール濃度60%と70%をピークとする活性(16AU)がみられ,0%濃度でも4AUの活性が得られた.試料B水溶性画分の抗菌作用性は,指示菌(7.0×10^9/mL)と,試料Bをphosphate buffer salineで溶解させた活性画分(16AU)とを等量混ぜ合わせ,経時的に残存生菌数を測定した.生菌数は経時的に減少し,1時間後では5.0×10^2/mLであった.それゆえ試料B水溶性画分の抗菌活性は殺菌的であるといえる.抗菌活性の本体を知る目的で,chloroform-H_2O(1:1)に試料Bを溶解させ,活性を調べたところ,ほとんどの抗菌活性はchloroform層にみられた.ついで乾固させたchloroform層をacetonitrileで溶解してHPLCに供した.その結果,acetonitrileの高濃度画分に明瞭な抗菌活性がみられた.今後さらに解析を進め,抗菌成分を明らかにしたいと考えている.
  • 加藤 秀治, 山中 武志, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2008 年 71 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    歯周病原細菌の1つであるPrevotella intermedia (P. intermedia)のexopolysaccharide (EPS)産生性とバイオフィルム様構造の形成調節に,熱ショックタンパクをコードするgroES, groEL, dnaJ, dnaK, clpBが関与している可能性を示唆するデータをマイクロアレイ分析により得ているが,今回,これらの遺伝子の転写が,実際にバイオフィルム形成菌株で常時高いレベルにあるのか,また,培養期間を通じてどの程度変動しているのかについてquantitative real-time reverse transcription-PCR (real-time RT-PCR)によって検討した.供試菌株にはP. intermedia strains 17, 17-2, ATCC 25611を用いた.それぞれの6, 12, 18, 24, 30時間培養菌液よりtotal RNAを回収しreal-time RT-PCRに供試した.マイクロアレイ分析にてstrain 17で発現上昇を認めた,dnaK, grpE, dnaJ, groEL, groES, clpBの遺伝子配列よりプライマーをデザインし,リファレンスゾーンには16 S rRNA遺伝子を用い,相対的な遺伝子発現強度を求めた.培養12時間における菌株間での遺伝子発現量を相対的に比較したところ,バイオフィルム形成能を失ったstrain 17-2に対してstrain 17, ATCC 25611の転写量がすべての遺伝子で高く,strain 17とATCC 25611間では,strain 17のdnaJ, groEL, groES, clpBの転写量が約3倍程度高い結果となった.strain 17とstrain 17-2における各遺伝子転写量の経時変化を調べたところ,strain 17では培養6〜18時間ですべての遺伝子の転写量が高く,その後低下する傾向を認めた.一方strain 17-2では培養時間に関係なく低いレベルで推移していることが明らかとなった.今回の研究結果より,P. intermediaの熱ショックタンパク遺伝子の転写量は,バイオフィルム様構造を形成するstrain 17で高いことがreal-time RT-PCRによっても確認された.Strain 17の熱ショックタンパク遺伝子転写レベルは培養初期に上昇しその後低下すること,培養時間ごとの変化はstrain 17-2に比べて大きいものであったことから,これらの遺伝子群がP. intermediaが増殖し,新たな細胞集団を形成する際に高い転写レベルにあることが,バイオフィルム様構造の形成・維持に繋がっている可能性が示唆された.
  • 本山 浩司, 山中 武志, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2008 年 71 巻 2 号 p. 156-164
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    これまでに我々は,歯周病原細菌のひとつであるPrevotella intermedia (P. intermedia)の熱ショックタンパク遺伝子転写レベルが,菌体外多糖を産生しバイオフィルム様構造を有する臨床分離のP. intermediaにおいて上昇していることを,マイクロアレイ分析とreal-time RT-PCR法により確認し報告してきた.近年の研究で,細菌由来の熱ショックタンパクの多くは,菌体内で分子シャペロンとして働くだけでなく,宿主細胞に対する様々な生物学的活性をもったmoonlighting proteinとして働いていることが明らかにされつつあるP. intermedia熱ショックタンパクの機能を今後さらに追及するため,まずGroELのリコンビナントタンパク作製を試みた.データペース上のP. intermedia strain 17のgroEL配列をもとにプライマーをデザインし,strain 17のゲノムDNAをテンプレートとしてgroELのPCR増幅を行った.得られたPCR産物の配列がデータベース上のgroELと相同であることをシークエンシングにより確認したのち,得られたPCR産物をタンパク発現ベクターであるpETにligationし,目的遺伝子を含むpGELを作製した.pGELをE. coli BL21 (DE3) pLysSもしくはBL21 (DE3) pLysEに加え,通法に従い熱ショックにより形質転換した.目的タンパクの発現はSDSゲル電気泳動により確認した.得られたタンパクの相同性はN末端アミノ酸配列の相同性により確認した.pGELにより形質転換したE. coli BL21 (DE3) pLysSとBL21 (DE3) pLysEにisopropyl-β-D(-)-thiogalactopyranoside (IPTG)による発現誘導を行い,菌体タンパクをSDSゲル電気泳動したところ,両者において目的タンパクの分子量に一致したタンパクの発現を認めた.E. coli BL21 (DE3) pLysS pGELにおける発現誘導がBL21 (DE3) pLysE pGELより顕著であった.N末端アミノ酸配列を調べたところ,10残基の配列はP. intermedia GroELと一致した.以上の結果より,P. intermedia GroELをpET systemとE. coli BL21 (DE3) pLysSを用いてリコンビナントタンパクとして発現させ,今後のタンパク機能解析に応用可能であることが示唆された.
  • 小室 美樹, 三宅 達郎, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2008 年 71 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー
    口腔の健康と全身の健康との関連性が明確でないのは,歯周疾患が定量的に測定されておらず,客観的評価がなされていないためだと考えられる.そこで,本研究では,全身の健康状態と関連性をもつ歯周組織の健康状態を見出すことを目的に,成人における全身の健康診断結果とCPIによる歯周組織診査結果との関連性について検討した.調査対象者は,平成16年に某事業所において実施した歯科健康診断および労働安全衛生法に基づく定期健康診断をともに受診した965名(平均年齢38.1歳)である.全身の健康状態は,収縮期血圧は130mmHg以上,拡張期血圧は85mmHg以上,トリグリセリド値は150mg/dL以上,動脈硬化指数は4.1以上,HDLコレステロール値は40mg/dL未満,総コレステロールは240mg/dL以上,空腹時血糖は110mg/dL以上,HbA1C値は6.5%以上,BMI値は25以上を,それぞれ「異常あり」とした.また,歯周組織の健康状態については,(1)CPIコード0を「良好」,1以上を「不良」とした場合,(2)CPIコード1以下を「良好」,2以上を「不良」とした場合,(3)CPIコード2以下を「良好」,3以上を「不良」とした場合,(4)CPIコード3以下を「良好」,4以上を「不良」とした場合,(5)喪失歯を保有しない者を「良好」,保有する者を「不良」とした場合の5つの条件を設定した.そして,調査対象者を20歳代から50歳代以上までの4つの年齢階級に分け,全身の健康状態を表す各指標が「異常あり」である者の割合を,歯周組織の「良好」群と「不良」群との間で比較した.その結果,歯周組織の健康状態と関連性があった全身の健康状態を表す指標は,トリグリセリド値,動脈硬化指数および拡張期血圧の3項目であった.また,歯周組織と全身の健康状態との関連性が認められた年齢階級は40歳代だけであった.さらに全身の健康状態と関連性があった歯周組織の健康状態を表す指標は,CPIコード0を「良好」,1以上を「不良」とした場合が最も多かった.このことは,CPIコード1以上が全身疾患のリスク因子であるのではなく,CPIコード0が全身の健康因子であることを示していると考えられた.以上の結果から,歯周組織と全身との健康状態の関連性は,疾患と疾患との因果関係の視点からみるのではなく,健康の視点からみる必要性が示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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