保存修復学基礎実習の目的は,講義で得た知識の再確認と基本的術式の習得の場であり,使用する数多くの歯科用器材・器具,材料の取り扱いについても習得する場でもある.しかし,学生間の理解度には差が大きく,いかにして基礎実習内容を学生に習得させるようにするかは,常に悩まされるところである.本研究では,インストレクターの基礎実習教育へのフィードバックを目的として,学生の形成的評価も可能なOSCE形式での実習試験を行い検討した.平成20年度第3学年を2グループ(1班59名・2班58名)に分け,それぞれ2課題ずつOSCE形式の実習試験を行った.試験時間は,課題提示30秒,課題実施時間4分,移動時間30秒で行った.評価方法は,評価項目を設定し,できた:1点,できなかった:0点のチェックリストとした.
今回,基礎実習終了試験をOSCE形式で行うことにより,インストラクターへのフィードバックが可能になると考えられる.今回の正答率の低い項目は,どれもファントーム内の顎模型上での操作もしくは手元での操作がほとんどであった.これは,基礎実習での学生13〜14人に1人のインストラクターのデモンストレーションでは,死角が生じ手先まではよく見えず,実習内容が理解しにくく,学生間に理解の差が生じ実習効果が期待を下回ることになると考えられる.いかに手元をわかりやすく学生に教育することが必要であると示唆された.
一方で,繰り返し実習をした項目については正答率が高かったことは,従来から指摘されているように学生教育には反復が重要であることが示唆された.以上のことから,基礎実習における学生の理解度は,OSCE形式の実習試験により有効的に評価できること,また,デモンストレーションで理解しにくい手元で煩雑な操作は,学生の理解度が低いので,学生の理解度を高めるには,繰り返し教育することの重要性がわかった.
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