歯科医学
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77 巻, 2 号
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  • 大西 祐一, 渡辺 昌広, 安井 大樹, 藤井 智子, 井上 洋士, 吉本 仁, 窪 寛仁, 赤根 昌樹, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2014 年 77 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2017/06/12
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞株であるHSC3,HSC4およびSASの増殖に対するセツキシマブの影響を調べ,セツキシマブ感受性細胞と耐性細胞の特性を比較した.HSC3とHSC4の増殖はセツキシマブ感受性で,SASの増殖はセツキシマブ耐性であった.いずれの細胞もEGFRファミリーを介して増殖をするが,HSC3とHSC4の増殖にはEGFRが強く関与し,SASの増殖にはEGFRがほとんど関与しないことが示された.どの細胞もEGFRタンパク質を発現しており,明白な細胞表面局在を認め,リン酸化EGFRの存在も確認されたことから,セツキシマブ感受性はEGFRの膜表面への発現の有無ではなく,リガンド刺激に対するEGFR反応の方向性によって決まる可能性が示唆された.
  • 福嶋 克明, 川崎 弘二, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2014 年 77 巻 2 号 p. 66-75
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2017/06/12
    ジャーナル フリー
    先進諸国において永久歯のう蝕経験は減少してきておリ,その理由の一つとして各種フッ化物応用の普及が指摘されている.しかし,う蝕経験には大きな世代間格差があリ,各世代においてフッ化物配合歯磨剤の市場占有率がう蝕経験の減少に対してどのように影響しているかは明らかにされていない.そこで,各世代のう蝕経験とフッ化物配合歯磨剤の市場占有率との推移について比較検討を行った.
      資料として,昭和32年から平成23年までの10回の歯科疾患実態調査およびフッ化物配合歯磨剤の使用占有率調査(ライオン(株))を使用した.昭和12年から平成13年生まれまでを5年間隔で11の世代へと分け,これを出生年コホートとした.歯科疾患実態調査が行われたそれぞれの時点における各出生年コホートの,50歳代までのDMFT指数およびDFT指数を算出しその時点に一致する年度のフッ化物配合歯磨剤の市場占有率と比較した.
      戦前から戦後すぐ生まれ世代では,30歳代以降DFT指数の増加が平衡状態への移行を示すのに対し,DMFT指数は直線的に増加していたが,これらの変化とフッ化物配合歯磨剤の市場占有率との間に関連は認められなかった.戦後から昭和30年代生まれの世代では,DFT指数およびDMFT指数がほぼ同じ時期に平衡状態に移行し,この時期はフッ化物配合歯磨剤の市場占有率が急増した時期であった.昭和40年代から50年代生まれの世代,および,昭和60年代以降生まれの世代では,DFT指数およびDMFT指数の推移に大きな差がみられず,前者ではその増加が平衡状態になる時期とフッ化物配合歯磨剤の市場占有率が50%に達した時期とがほぼ一致していた.以上の結果から,戦後生まれの世代におけるう蝕経験の減少は,フッ化物配合配合歯磨剤の市場占有率の影響を受けていることが示唆され,世代が若くなるに従って,平衡状態となったDMFT指数の値も低下していることが明らかとなった.
  • 樋口 恭子, 辰巳 浩隆, 米谷 裕之, 辻 一起子, 米田 護, 大西 明雄, 小出 武
    原稿種別: 本文
    2014 年 77 巻 2 号 p. 76-83
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2017/06/12
    ジャーナル フリー
    補綴物と音声との関連を検討するために様々な音声分析機器を用いて研究が遂行されている.しかし,それらの機器は高価であること,操作が複雑であること,測定時に特別な部屋が必要なこと,および判定までに時間がかかることから,臨床においては実用的ではないのが現状である.
      そこで,発音機能と補綴物との関係の一端を検索するため,チェアーサイドで測定可能で操作が容易な連続音声認識ソフトのAmiVoice EX Dentalを用い,健常有歯顎の青年被験者を対象に厚さ1.5mmと3.0mmの実験的口蓋床を装着させた群と非装着群における歯科に関する書き言葉の音声誤認識率,およびオーラルディアドコキネシスを測定し比較した.
      その結果,各群別の平均誤認識率は,非装着群が3.5±0.9%,1.5mm群が4.8±1.6%.および3.0mm群が8.4±2.6%であった.床の厚みの増加に従い,平均誤認識率の上昇がみられ,各群間で有意差が認められた.また,オーラルディアドコキネシス値は/pa/における非装着群が6.6±0.9回,1.5mm群が6.3±0.9回,3.0mm群が6.5±0.9回,/ta/における非装着群が7.2±1.0回, 1.5mm群が6.8±1.0回,3.0mm群が5.9±0.9回,および/ka/における非装着群が6.7±0.9回,1.5mm群が6.2±0.9回,3,0mm群が5.9±0.9回であった.床の厚みが増すにつれて,全被験者に/ta/と/ka/の低下が認められ,非装着群と1.5mm群および3.0mm群間に統計学的な有意差が認められたことから,舌の運動抑制が考えられた.
      以上のように,連続音声認識およびオーラルディアドコキネシスの観点から検討した結果,実験的口蓋床の装着は音声認識率を低下させることが示唆された.
  • 谷本 啓彰, 吉川 一志, 岩田 有弘, 宮地 秀彦, 竹内 摂, 恩田 康平, 保尾 謙三, 小正 玲子, 山本 一世
    原稿種別: 本文
    2014 年 77 巻 2 号 p. 84-91
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2017/06/12
    ジャーナル フリー
    保存修復学基礎実習の目的は,講義で得た知識の再確認と基本的術式の習得の場であり,使用する数多くの歯科用器材・器具,材料の取り扱いについても習得する場でもある.しかし,学生間の理解度には差が大きく,いかにして基礎実習内容を学生に習得させるようにするかは,常に悩まされるところである.本研究では,インストレクターの基礎実習教育へのフィードバックを目的として,学生の形成的評価も可能なOSCE形式での実習試験を行い検討した.平成20年度第3学年を2グループ(1班59名・2班58名)に分け,それぞれ2課題ずつOSCE形式の実習試験を行った.試験時間は,課題提示30秒,課題実施時間4分,移動時間30秒で行った.評価方法は,評価項目を設定し,できた:1点,できなかった:0点のチェックリストとした.
      今回,基礎実習終了試験をOSCE形式で行うことにより,インストラクターへのフィードバックが可能になると考えられる.今回の正答率の低い項目は,どれもファントーム内の顎模型上での操作もしくは手元での操作がほとんどであった.これは,基礎実習での学生13〜14人に1人のインストラクターのデモンストレーションでは,死角が生じ手先まではよく見えず,実習内容が理解しにくく,学生間に理解の差が生じ実習効果が期待を下回ることになると考えられる.いかに手元をわかりやすく学生に教育することが必要であると示唆された.
      一方で,繰り返し実習をした項目については正答率が高かったことは,従来から指摘されているように学生教育には反復が重要であることが示唆された.以上のことから,基礎実習における学生の理解度は,OSCE形式の実習試験により有効的に評価できること,また,デモンストレーションで理解しにくい手元で煩雑な操作は,学生の理解度が低いので,学生の理解度を高めるには,繰り返し教育することの重要性がわかった.
大阪歯科学会例会抄録
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