大阪歯科大学医療保健学部口腔工学科では,3年次より本学附属病院における病院臨床実習が組み込まれている.歯科技工士を目指す学生にも病院臨床実習に入る前の適切な臨床技能判定試験が必要であると判断し,2019年度より歯学系OSCEに準じた試験(以下,歯科技工学系OSCEとする)を実施し,その取り組み内容と試験の成績評価結果について検討した.
対象者は本学科3年生の受験者で,2019年度8名,2020年度13名,2021年度17名,2022年度21名,2023年度13名であった.歯科技工学系OSCEでは,5つのステーション(以下,St)を選択し,ワンウェイ方式を採用し,それぞれのStにつき移動時間1分,問題読解時間1分,試験時間5分,計7分の時間配分とした.課題は「患者様への補綴装置の説明」を2つ,「歯科技工作業の基本的技能」を2つ,「感染対策」を1つとし,事前に予備練習を実施した.歯科医師6名,歯科衛生士2名,歯科技工士7~11名および医師他2名から構成された担当教員で,設営・準備,評価,補助,模擬患者,救護といった役割を分担して行った.各Stでの評価は,項目評価と概略評定からなり,項目評価では,2, 1, 0の3段階で,概略評定では5, 4, 3, 2, 1, 0の6段階で点数を付けた.各Stにおける評価は2名ないし3名で行い,それぞれ平均値を評価点の代表値とした.個人別にStごとの点数と総合点数を算出した.個人別平均総合得点は,2019年度以降順に61.4, 53.9, 66.6, 67.8, 62.6点で,Stごとの得点は,年度ごとに高低を示した.
歯科技工士教育における臨床実習の必要性は高く,臨床実習に入る前には適正な評価方法や評価基準などに基づいた歯科技工学系OSCEの実施が必要と思われる.そのためには基礎実習の目標設定と教育内容の充実も必要であることが示唆された.
閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea: OSA)は,国内での有病率は成人人口の約14%,推定患者数900万人以上といわれている有病率の高い疾患である.大阪歯科大学附属病院では,2017年9月に専門外来として睡眠歯科外来を開設.2021年からは睡眠歯科センターに名称を変更し,睡眠時無呼吸の院内・院外の医科歯科連携医療を行っている.今回,睡眠歯科センターの受診経緯について調査し,紹介元の医療機関の特徴について検討したため報告する.2017年4月1日から2022年3月31日までの6年間に,睡眠歯科センターを受診した初診患者864名を対象とした.ホームページを見て受診した患者が84名(9.7%),紹介元については,院内紹介が128名(14.8%)であった.院内紹介のうち,内科からの紹介が25名,歯科診療科からの紹介が103名であった.院外紹介は652名(75.1%)であり,医科からの紹介が625名,院外の歯科医院からの紹介は27名であった.紹介患者数が最も多かったのは,睡眠時無呼吸専門クリニックであり265名であった.次に,地域のかかりつけ医からの紹介数が174名と多く,総合病院の無呼吸外来からが102名,総合病院の睡眠外来から66名,睡眠専門クリニックから18名であった.紹介元の施設数は133施設であった.その内,医科は110施設であり,内科が最も多く41施設,ついで耳鼻咽喉科が26施設,呼吸器内科が16施設,循環器内科が14施設,精神科が7施設,神経内科3施設,心療内科1施設,整形外科1施設,泌尿器科1施設であった.本研究から,当院の睡眠歯科センターでは,医科からの紹介患者が多く,また紹介施設も総合病院からかかりつけ医まで幅広い施設から紹介されていた.
歯科診療の場では,精神的なストレスなど様々な要因から発作的な血圧上昇により内科に紹介される患者が多い.このような場合,白衣高血圧か持続性高血圧かを判断する必要があり,24時間自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring: ABPM)が有用である.
白衣高血圧と仮面高血圧とは,前者が病院では高いが日常生活では低い場合,後者が病院では低いが日常生活で高い場合を指し,ABPMはこれらの診断に有用であり,特に治療抵抗性高血圧やコントロール不良高血圧の診断に適している.
大阪歯科大学附属病院でABPMを施行した数例を紹介する.これらの症例では,心血管イベントのリスクが高いと考えられる夜間の血圧上昇や早朝の血圧上昇(morning surge)を検出することができた.
ウエアラブル血圧計の開発により,より正確な高血圧診断や心血管イベントリスクの予測が可能となり,歯科医療分野での応用も期待される.歯科大学附属病院におけるABPMの積極的な活用が期待される.