CO2レーザーは象牙質知覚過敏症に用いられており,表面吸収型レーザーであるため象牙細管の封鎖に適しているが,照射条件によっては象牙質表面の炭化が認められる.本研究では,CO2レーザーの照射距離と照射速度が象牙細管封鎖性に与える影響について,知覚過敏症罹患モデル象牙質を用いて象牙質透過抑制率を測定し,検討を行った.
CO2レーザー発振装置としてBel Laser(以下BL, BPモード,2W)とPanalas C05Σ(以下PA, Σモード,2W)を用い,照射距離を0mmまたは2mmとした.照射速度は,ムービングステージを用いてlow-speed(1.0mm/s)またはhi-speed(2.3mm/s)とした.low-speedにおける各群を,BL0lo群,BL2lo群,PA0lo群,PA2lo群とした.hi-speedにおける各群を,BL0hi群,BL2hi群,PA0hi群,PA2hi群とした.ウシ歯前歯を被験歯とし象牙質ディスク試料を作製し,知覚過敏症罹患モデル象牙質を用いた測定装置により,照射前後の象牙細管内液の移動量から象牙質透過抑制率を測定した.
low-speedのBL0lo群の象牙質透過抑制率は,BL2lo群とPA2lo群より有意に高かった.また,hi-speedのBL0hi群,BL2hi群,PA0hi群,PA2hi群の象牙質透過抑制率に有意差は認められなかった.これは,BLがPAに比べてデューティ比が高いこと,low-speedではhi-speedに比べてエネルギー密度が高くなること,照射距離によるエネルギーの減衰の差が影響していると考えられる.
以上から,CO2レーザーによる象牙細管封鎖性において,照射距離と照射速度はレーザーのエネルギー密度に影響するが,デューティ比が高い照射モードは,良好な象牙細管封鎖性を有することがわかった.
近年,ヤングケアラーへの社会的関心が高まっている一方,歯科領域における調査・研究は乏しく,ヤングケアラーやケア相手の口腔衛生に関する先行研究もほとんど存在しない.本研究では,ヤングケアラーとそのケア相手の口腔のケアの実態と課題を明らかにし,歯科医療従事者が果たすべき支援を検討することでヤングケアラーが担う口腔のケアの負担を軽減することを目的として実施した.
対象は大阪府福祉部地域福祉推進室地域福祉課が実施したヤングケアラーに関するアンケートに回答した介護・福祉施設従業者1,545名のうち,ヤングケアラー支援・関わり経験があり調査に協力するとした106名とし,ヤングケアラーのケア内容を調査した.また,現役および元ヤングケアラー13名に対して,ヤングケアラーとそのケア相手の口腔のケアに関する半構造化面接を実施し,その内容をSCAT法により質的に分析した.アンケート対象者にはオプトアウト文書を大阪歯科大学のHP上で公開し,インタビュー対象者には文書による同意を得た(大歯医倫 第111291号).
アンケート結果から,「歯科医院受診の付き添い」や「口腔の清掃(歯磨き・うがい)」などの口腔のケアを担うヤングケアラーが少数存在することが明らかとなった.また,「7~9歳」の年少者のヤングケアラーも口腔のケアに携わっていることが分かった.インタビューでは,知識や技術の不足,助言者の不在,他のケアを優先,経済的困窮などが,ヤングケアラーによる口腔のケアの実施や自身の歯科受診を困難にする要因であることが示された.
以上のことから,ヤングケアラーとそのケア相手への歯科領域での支援として,訪問歯科診療の拡充,口腔のケア方法の動画提供,訪問看護・介護職,元歯科医療従事者,歯科医療系学校関係者や学生との連携による包括的な支援が有効と考えられた.また,ヤングケアラーの存在に歯科医療従事者が気づき,支援につなげる姿勢の重要性も示唆された.
骨腫は成熟した骨組織からなる良性腫瘍であり,好発部位は頭蓋骨および顎骨である.われわれは37歳の男性において,長期経過観察の後に約3倍の大きさに増大を認めた下顎角部の周辺性骨腫の1例を経験したので報告する.2003年8月初旬感冒症状を主訴に近医内科受診した際,顎下部の触診をされたところ歯科医院の受診を勧められ,近医歯科を受診した.X線写真にて右側下顎角部に不透過像を認めたため,精査加療依頼で大阪歯科大学附属病院へ紹介来院した.2003年のCT画像にて腫瘍の大きさは13×10×15mm,容積は2.3cm3であったが13年後の2016年のCT画像では腫瘍の大きさは41×31×37mm,容積は34.6cm3に増大していた.われわれは全身麻酔下にて口外法で切除術を行った.術後13か月が経過し再発は認めない.