従来の銅フタロシアニン系着色剤の欠点である耐摩擦堅ロウ性を改良する目的で銅フタロシアニンと樹脂とが化学的に結合した新着色剤を合成した。重合開始剤としてテトラ (4) ジアゾ銅フタロシアニン, ドカブロムテトラ (4) ジアゾ銅フタロシアニンを用いて, 種々のビニル系単量体を重合させ, 得られた着色剤の単量体および溶媒の影響について検討した。得られた着色剤を硫酸またはジメチルホルムアミドおよび水に可溶な場合, これらを溶媒として用いて紫外可視吸収スペクトルを検討した。その結果, 同一の溶媒では単量体の着色剤への影響はほとんど認められなかった。しかしスチレンの場合のみ, 他の単量体より幾分長波長側に移行していた。これはスチレンのフェニル基のパラ位置に銅フタロシアニンが結合したものと考えられる。一方, メタクリル酸メチルを用いた油性着色剤の有機溶媒中とアクリル酸アミドを用いた水性着色剤の水溶媒中での紫外可視吸収スペクトルの相異が溶媒によるものかどうか確かめるために, 水にも有機溶媒にも可溶なアクリル酸を用いた着色剤について紫外可視吸収スペクトルを検討した結果, この相異は溶媒の影響によるものと考えられる。またドデカブロムテトラ (4) ジアゾ銅フタシロアニンを用いた着色剤は一般の銅フタシロアニングリーン顔料と同等な緑色を有し, 緑色着色剤として十分使用できることがわかった。
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