アルキルスズ系誘導体およびその高分子体の防汚効果について検討した結果次のことがわかった。
1) 有機スズ化合物中, トリアルキルスズ系統の誘導体は従来から使用されている銅, 水銀系毒物より良好な防汚性を持っていた。しかしながらモノ, ジ, テトラアルキルスズ系は十分な防汚性を持っていない。
2) トリアルキルスズ系化合物中, そのアルキル基中の炭素原子数が6以下の場合, すぐれた防汚性を持っているが, それ以上の場合にはほとんど防汚性を示さない。
3) R
3SnXで示されるようなトリアルキルスズ化合物中において, Xがハロゲン基の場合にはその他の基よりもすぐれた防汚性を持っているが, R基が同じ基である限り大差は認められず, X基の影響はあまりなく, このことからX基を高分子鎖に置き換えても防汚性をそこなうことがない。
4) 低分子量の有機スズ化合物の多くは塗膜を軟化する傾向を持っている。それゆえに塗膜乾燥がわるく, 粘着性をおびるため塗料として不都合を生じた。しかしながらこの欠点はトリブチルスズ系高分子毒物を用いることにより改良出来ることがわかった。
5) 天然高分子のうち用途の少ない海藻酸, クラフトリグニン, 短繊維にトリブチルスズオキシドをアダクトした。短繊維の場合は別としていずれの高分子体も従来の毒物に比べすぐれた防汚性を示し, 長期にわたって効果を持続することを認めた。
6) 毒性については従来の低分子化合物よりも低下させることができることがわかったが, 皮膚障害を完全に消去することはできなかった。
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