高分子金属錯体を紫外線硬化型電着塗料の触媒として用いるため,
cis- [Co (en)
2 PVP・Cl] Cl
2および
cis-α- [Co (trien) PVP・Cl] Cl
2のような高分子配位子 (PVP : ポリ-4-ビニルピリジン) を有する水溶性高分子コバルト (III) 錯体を合成した。
これらの錯体水溶液の安定性に及ぼす通電量の影響が第1吸収帯 (λ
1 : 500nm) のシフトまたはpHの変化を測定することによって調べられた。さらに, 0.1%Co (III) -PVP錯体を含むアクリル系塗料を使用して電着が行なわれた。
(1) λ
1は中和塩基の種類により影響を受け, TEA, NH
40H, NaOHの順序で高波数側に約3~12mμシフトした。
(2) これらのCo (III) -PVP錯体水溶液に直流電気を通電したとき, 溶液のpHは通電量とともにかなり増大し最終的には約9に達した。このことから, pHの上昇はCo (III) -PVP錯体の分解によリエチレンジアミンまたはトリエチレンテトラミンが遊離するためであると考えられる。
(3) 折出膜中への各Co (III) -PVP錯体の移動率は8.2~13.2%であった。この皮膜にUV照射を行なったとき, 橋カケが著しく促進されCo原子の触媒作用が認められた。それゆえ, 折出膜中のCo原子はCo (III) またはCo (III) 錯体の形で存在しているものと推察される。
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