乳化重合法でつくった単分散ラテックスは,その粒子濃度とイオン濃度が適当な時,美しい虻彩色を示す。
この発色状態にあるラテックスは,分散状態のまま配列し,Close pack型の擬結晶構造をとっている。
また,ある条件のもとでは,この結晶構造相と不定形構造相は共存し,前者は高密度のため虹彩色を示す沈殿となり,その上に白色不定形相が生じる。
ラテックスにおける結晶相,不定形相およびその共存領域の存在は,イオン濃度~粒子濃度のPhase Diagramで示されている。
この現象は統計力学のKirkwood-Alderの相転移理論で説明でき,粒子濃度50%以下では不定形状態,55%以上では結晶状態,50~55%の間では両者の共存とされる。
この結晶→不定形の変化,すなわち固体→液体の相転移は,虹彩色→白色の変化により識別できる。
しかし,色の変化はラテックスの表面のみの現象で,ラテックスの系全体にわたる構造形成か否かは不明である。
そこで粘度測定によりこれを確かめてみようとした。本報文では,ラテックスの粘度とイオン濃度と発色の関係を調べた。その結果ラテックスは発色状態から白色に変る時,粘度は急激な減少をすることがわかった。
ラテックスの虹彩色→白色の変化は,、bulkの結晶相→不定形相の相転移が,起こった結果であると結論された。
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