重合触媒としてカラーブラック (CB)-ブチルリチウム (BuLi) 複合体を, ゲル生成の調整剤にジメチルホルムアミド (DMF) のようなN, N-ジアルキルホルムアミドを用いて, CB粒子表面からのメタクリル酸メチル (MMA) のグラフト重合反応を調べた。このグラフト重合法では, 反応系にDMFを加えないと, CB粒子を含んだ多量のゲルが生じ, グラフト率は100%から300%にもなる。しかし, DMFをMMAに添加するとゲルは減少し, 得られたCB-グラフトポリマーはアセトンなどに良分散性で, 安定なコロイドとなった。また, グラフト率は, 反応系に加えたDMFの濃度が大きくなるにつれて減少した。すでに, グルニヤール試薬との比較実験で, N, N.-ジアルキルホルムアミドとBuLiとの反応からBuCH (OLi) NRR' (ここに, R, R'はアルキル基) の生成することも知られているので (CA., 79, 91504n), この反応から, ゲルの調整剤としてのDMFの作用機構も類推できる。なお, ゲルの防止に有効な化合物は, N, N一ジアルキルホルムアミドやN, N-ジアルキルアセトアミドのような酸アミドのN-2置換体であった。
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