紙用, プラスチック用および金属板用と, 用途の異なった三種類のオフセットインキの乾燥塗膜についてクリープ挙動を, 自作の鋭敏クリープ測定機により測定した。クリープ変形を回復可能な遅延弾性機構によるものと, 流動, 破壊等をともなう永久変形機構に分けて考察を進めた。乾燥にともない形成される三次元網目構造が前者の機構に対応し, セグメント間の流動あるいは弱い網目構造の破壊が後者に対応し, 非線形性を示すものと考えられる。存在する網目の量は定常状態コンプライアンスで, 永久変形の程度はクリープ粘度で評価した。その結果, プラスチック用インキ膜のクリープ挙動は, 変形のほとんどが回復可能な弾性変形によるもので柔軟性に富むが, 紙用オフセットインキ膜は弾性回復も示すが, 網目の破壊に基づく永久変形量も多い脆いものであることが量的に示された。形成された網目機構の非線形性を, 荷重に依存したクリープ挙動の面から検討した結果, 網目の生成要因が分散媒の形成する一次結合的な化学的架橋によるものと, 顔料粒子の充テン効果が主体となる弱い網目構造に分類でき, クリープ挙動の非線形性は特に後者による影響が大であることが指摘できる。
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