色材協会誌
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59 巻, 12 号
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  • 舘 和幸, 奥田 匠昭, 小山 陽一, 鈴木 正一
    1986 年 59 巻 12 号 p. 711-718
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    エアスプレーガンを用いてクリア塗料を種々の条件でガラス板に噴霧し, ガラス板が塗料で完全に覆われるまでの過程 (塗膜形成過程) を高速度カメラで撮影した。同時に, 撮影部位に塗着する塗粒の径を液浸法で測定した。これらの結果に基づき, ゆず肌の原因となる凹凸の形成機構について考察した。
    塗粒は, 被塗装面に塗着するときに変形したが, その後被塗装面を流動して広がることはほとんどなかった。このことから, 塗膜形成過程は, 塗粒が塗着していない被塗装面上, および塗粒が既に塗着している被塗装面上に, 新しい塗粒が到達する確率に支配されると理解される。
    塗料の噴霧条件は, 形成される塗膜の凹凸の形状と塗膜形成に要する時間に影響した。形成される塗膜の凹凸の振幅と塗膜形成に要する時間は, ともに塗粒径が増加するのに伴って増加した。これは, 塗着した塗粒の粘度がかなり高く, 塗粒が被塗装面をほとんど流動して広がらないことに起因するものと考えられる。また, 塗膜形成に要する時間は, 単位時間に塗着する塗料の体積が減少するのに伴って増加した。
    ゆず肌の原因となる凹凸は, 塗膜形成過程でできることがわかった。
  • 酸素による重合禁止作用
    大坪 泰文, 甘利 武司, 渡辺 鋼市郎
    1986 年 59 巻 12 号 p. 719-724
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    振動板型レオメーターを用いて, UVインキとそのビヒクルの硬化過程における酸素の重合禁止作用について検討した。酸素が存在しない条件で, UVを連続的に照射したときの硬化に伴う動的粘性率の変化を測定した。また, インキ膜中への酸素の拡散とその重合禁止作用について調べるため, 空気ふん囲気中でフラッシュ露光によりUVを照射し, 硬化を途中で止めたときのレオロジー挙動についても測定した。得られた結果は次の通りである。
    (1) 上記二つの方法で測定を行ったが, ビヒクルにおいては, 動的粘性率が増加し始めるまでの全照射エネルギーに差は認められなかった。しかし, その後の粘度増加は空気ふん囲気中の方がゆるやかとなり, 酸素は重合の生長反応を抑制していると考えられる。
    (2) UVインキにおいては, 粘度増加が始まるまでの全照射エネルギーは, 空気ふん囲気中で極端に増大する。顔料であるブリリアントカーミソ6Bの存在は, 酸素の重合禁止作用を増幅するものと考えられる。
  • 戸田 善朝, 橋本 和明, 橋本 甲四郎, 荒井 康夫
    1986 年 59 巻 12 号 p. 725-731
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    リン酸三ニッケル八水和物 (Ni3(PO4)2・8H2O) の色相を改質するために, 150°~350℃の飽和水蒸気圧条件下で水熱処理した。Ni3(PO4)2・8H2Oを200℃で24時間以上水熱処理すると鮮明な黄緑色の球晶の新水和物Ni3(PO4) 2・5/4 H2Oに, 350℃, 48時間以上の処理では黄みのにぶい緑色の不定形晶のNi3(PO4)2・5/4 H2Oに変化した。この水和物を加熱すると, 663℃で1H2O, 810℃で1/4H2Oに相当する結晶水を放出し, 無水物となった。球晶のNi3(PO4)2・5/4 H2Oおよびその焼成物の形骸粒子は顔料として十分使える。
  • 井原 辰彦, 伊藤 征司郎, 田中 雅美, 木卜 光夫
    1986 年 59 巻 12 号 p. 732-740
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    極性溶媒系ビヒクル中への分散性がよくない有機顔料の表面の極性化を目的として, 低温プラズマによる表面処理を試みた。
    処理効果の目安となる試料のpHは, 酸素流量および処理時間に比例して低くなった。同じ処理条件で処理した顔料の表面親水度を比較すると, CuPc, DV, QRの順に高い値を示した。DVについてXPS測定を行ったところ, C-C, C-Hに帰属される成分の減少とC-OあるいはCOOに帰属される成分の顕著な増大が確認された。FT-IR測定によって得た未処理試料とプラズマ処理試料の差スペクトルは, カルボン酸の吸収パターンを示した。いずれの顔料もプラズマ処理によって水分散性が改善されることが認められた。
  • 鈴木 昇, 遠藤 敦, 宇津木 弘
    1986 年 59 巻 12 号 p. 741-746
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    炭化チタンの表面性状, セチルアルコールによる表面処理がX線光電子スペクトル, X線回折, 走査型電子顕微鏡, 分散嗜好性および熱分解により酸化チタンおよび活性炭のそれとの比較において検討された。その結果次の事柄が認められた。 (1) 炭化チタン表面はチタンの酸化物層と炭化物表面とから成る。 (2) 表面処理は基体の結晶構造, 粒子径, 粒子の集合状態には変化はおよぼさない。 (3) 表面処理炭化チタン付着基の熱分解は250~500℃で起り, 分解生成物はセテンが主成分と認められる。表面処理酸化チタンと活性炭の熱分解との比較から, 炭化チタン表面はチタン酸化物に伴なう析出炭素または炭化物炭素の酸化物の官能基, 酸化チタンの表面水酸基と化学式 : CO,-C-O-OH,-COHから成り, 表面処理はこれら水酸基とアルコールとの脱水縮合によう行われると考えられる。
  • 中澄 博行, 栗山 毅, 北尾 悌次郎
    1986 年 59 巻 12 号 p. 747-752
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    48%硫酸中, 3-ホルミル-4H-1-ベンゾチオピラン-4-オンとN, N-ジエチルアニリン誘導体との縮合反応により得られる, ジアリール-(4H-1-ベンゾチオピラン-4-オン-3-イル) メタン (収率27~73%) を酢酸中, 四酢酸鉛で酸化した後, 過塩素酸処理により, 新規なベンゾチオピラン環を含むトリアリールメタン系色素が得られた。この複素環を有するトリアリールメタン色素のλmaxはジアリールメタンおよびトリアリールメタン系色素母体に比べいずれも赤色移動し (25~30nm), また, その吸収スペクトルにおいて, トリアリールメタン系色素の特徴である “x-band”, “y-band” を含むことが, ラマンスペクトルおよびPPP-CI計算の結果から明らかになった。従来のパラメータを用いて, 新規なベンゾチオピラノジアリールメタン色素のλmaxを計算したところ実測値と良い一致を示した。また, この色素のロイコ体のエタノール中での光応答性について高圧水銀灯を用いて検討した。光照射とともにロイコ体は発色し, 中心炭素原子に対してアニリン部分のo, o′-位にメチル基を置換した場合には発色が遅延した。一般のトリフェニルメタン系色素のロイコ体と比較して, 光照射による発色が早く, しかもその吸光度が大きくなることが明らかとなった。
  • 安井 茂男, 松岡 賢, 北尾 悌次郎
    1986 年 59 巻 12 号 p. 753-758
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    ゲストーホスト液晶用二色性色素として重要な, ポリアゾ色素の構造と吸収スペクトルの関係について検討した。青色系の二色性色素を合成する目的で, ジスアゾからトリスアゾへと共役系の拡張を計る場合, 問題となるのは置換基効果を含む色と構造の関係であり, 共役鎖として用いる芳香環の種類とその配列順序である。本報では, 分子内電荷移動型の発色系をとるトリスアゾ色素が, 同一置換基をもつジスアゾ色素よりも必ずしも深色的でないことや, トリスアゾ色素で, 共役鎖のベンゼン環とナフタレン環の配列順序を変えると20nm以上の色調の変化を伴うことなどを見い出した。そして, これらの現象をPPP MO法を用いて定量的に解析した。
  • 戸田 善朝, 橋本 和明, 橋本 甲四郎, 荒井 康夫
    1986 年 59 巻 12 号 p. 759-770
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    リン酸コバルト顔料の色相や粒子形状を改質するめ, リン酸三コバルト八水和物をリン酸水素ニカリウム水溶液 (70°~96℃) に浸せきさせたり, CoCl2-K2HPO4-H2O系およびCoCl2-KOH-H3PO4-H2O系で湿式調製した沈殿懸濁液 (70°~96℃) を所定時間かきまぜたりした。その結果, 新化合物リン酸九コバルト三カリウム十水和物をはじめ, 各種のリン酸コバルトの生成を認めた。各生成物の組成と粒子性状はつぎのとおりである。
    1) KCoPO4 : さえた青色 (Pe; 80~85%, λc; 573~571nm), 粒状 (約2×5μm), 比重3.169/cm3
    KCoPO4 580℃→ h'-KCoPO4
    2) KCoPO4・H2O : 赤みの明るい紫色 (Pe; 30~40%, λc; 552~550nm), 板状 (約3×5μm), 比重3.24g/cm3
    KCoPO4・H2O 225℃→h-KCoPO4 425℃→ KCoPO4 580℃→ h'KCoPO4
    3) K3Co9(PO4)7・10H3O : 明るい紫色 (Pe; 40%, λc; 567nm), 針状 (約1×10μm), 比重3.09g/cm3
    K3Co9(PO4)7・10H3O 247℃ Amor. 540℃→ K3Co9(PO4)7 670℃→ h-K3Co9(PO4)7
    4) Co3(PO4)2・3.5H22O : 明るい青紫色 (Pe; 37%, λc; 570nm), 板状 (約1×3μm), 比重3.11g/cm3
    Co3(PO4)2・3.5H220 310℃→Amor. 595℃→Co3(PO4)2
    5) 未知物質; 明るい青紫色 (Pe; 45%, λc; 572nm), 板状 (約2×10μm), 比重2.90g/cm3
    リン酸コバルトカリウムはウルトラマリンのすぐれた代替顔料として期待できる。リン酸コバルトカリウム一水和物を加熱すれば母塩結晶の形骸を保ったリン酸コバルトカリウムが得られた。また, 調製条件を選べば光沢のある色相のリン酸コバルトカリウム, リン酸コバルトカリウム一水和物ができた。
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