反射型超音波レオメーターを用い, 塗膜乾燥硬化過程の粘弾性変化を測定した。測定装置は熔融石英一水晶振動子からなる遅延線を用いるMasonらによるのと同様なもので, 測定周波数は約3MH
zである。試料はアマニ油ワニスを主体とした酸化重合型のもので, ここに樹脂, 顔料を添加することにより, その乾燥過程がいかに変化するか, また網目形成にともなう粘弾性変化の特徴と網目の性質との因果関係についても検討した。
塗膜は重合促進, 三次元網目形成, 網目密度の増加のプロセスを経て乾燥皮膜となるが, それぞれの段階に応じ貯蔵弾性率
G′, 損失弾性率
G″の対応が異なっている。すなわち網目形成の初期には網目鎖はエントロピー弾性的な挙動を示し,
G′は増大するが,
G′′は平衡あるいは減少傾向を示す。網目密度が増加すると内部粘性の効果が大となり,
G′′は急上昇する。このような網目鎖の動力学的特徴はアマニ油ワニスの重合度, 樹脂の混合等によって変化した。
顔料添加により, 塗膜の粘弾性は上昇するが, これは充てん効果によるもので,
G′,
G′′の乾燥時間依存性は似たようなものになる。各乾燥レベルの塗膜の
G′,
G′′″の温度依存性から塗膜乾燥とともに粘弾性転移領域が高温側に移行することが示された。
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