糸状菌Penicillium spiculisporumの生産するスピクリスポール酸 (1) は, 分子内にカルボキシル基, ラクトン環及び長鎖アルキル部を併せ持つ多官能性物質であり, 収量 (培養液中110g/
l) も大きく, バイオサーファクタントなどとして注目されている。ここでは, 1にローダミン型色素構造を導入することを試み, 合成法と生成した新しい色素の構造, 色, 蛍光性及び両親媒性などについて検討を加えた。
先ず1を加熱, 脱水して酸無水物 (II) としたのち, 次にこのIIにm-ジェチルアミノフェノールを加え, 加熱融解し, 黒味赤色の相当する色素ベースを得た。この色素ベースを所定の塩酸水溶液に溶解し, カチオン塩とすると鮮明な赤紫色の溶液が得られた。試料のλ
max (希塩酸溶液) は571nm (蛍光589nm) を示した。
本色素の特徴は両親媒性構造を有するため界面活性を示すことである。水溶液の表面張力対濃度曲線には屈折点があり, ミセルを形成する。臨界ミセル濃度 (cmc) 以上での平衡表面張力は35.1mN/mを示した。応用面で染料としては, ナイロン, 羊毛及び絹に対し染着性 (赤紫色) を示した。また, 界面活性な蛍光色素であるため, バイオセンサーなどミクロな環境指示薬として期待される。
(1987年10月, 色材研究発表会 (創立60周年) にて, 一部発表)
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