キナクリドンレッド顔料の表面親水性度をアンモニアプラズマ処理により変化させ, 疎水性度 (濁度滴定法によるSP値) が異なる3種の水溶性アクリル樹脂水溶液中での分散性を検討した。
アンモニアプラズマ処理時間の増加にともない, 顔料表面の親水性度 (顔料単位表面積あたりの水に対する湿潤熱) は増加した。
水に対する湿潤熱の増加にともない顔料分散ペーストの光沢は増加し, 湿潤熱が0.25J/m
2付近で最大値を示したのち, 減少した。また, 降伏値は湿潤熱の増加にともなって減少し, 0.25J/m
2付近で最小値をとったのち, 増加した。
水溶性アクリル樹脂を変えた場合にも, SP値が10.5~12.5の範囲内で上記の傾向に変化はなく, また, 光沢の最大値と降伏値の最小値を示す顔料表面の親水性度も0.25J/m
2付近であったが, 樹脂が疎水性であるほど (SP値が低いほど), 同じ親水性度の顔料に対しては高い光沢と低い降伏値が得られた。
前回の報告で, 本分散系では分散安定化は樹脂の疎水性相互作用に基づく顔料への吸着によっており, この分散安定化と樹脂水溶液に対するぬれを適度に両立する顔料表面の最適親水性度が存在すると考えたが, 今回の結果でこのことをより定量的に確認することができた。
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