150℃で真空加熱処理したアルミナと数種のプロトン性化合物との反応を行った。その結果, pKa値4~8のフェノールおよびカルボン酸はイオン結合によってアルミナ表面上に担持され, これら修飾粉体は環外メチレン基を有するエノン1, 2と第二級アミンとの付加反応を活性化することが判明した。つぎに, 数種の光学活性カルボン酸修飾粉体を合成し, エノン1, 2と第二級アミンとの付加反応に対する触媒能について検討した。その結果, 反応性はアミンの塩基性に比例し, さらに付加物3, 4ならびに回収した1はいずれも光学活性体で, しかもそれぞれのエナンチオマー過剰率 (e.e.) はほぼ同じであった。また, 修飾粉体へは, アミンよりもエノンが優先的に吸着した。
以上より, 粉体表面へのプロトン酸のイオン結合吸着により新しくブレンステッド酸部位が生成し, これがエノンを活性化し, また隣接カルボキシレート部の立体要因によって不斉識別が起こっているものと考えた。
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