湿潤環境においてステンレス鋼に接着耐久性を付与するために, ポリマレイン酸 [PMA], アクリル酸/マレイン酸共重合体 [P (AA/MA)] およびアクリル酸/カフェ酸共重合体 [P (AA/CA)] 薄膜による表面処理を検討した。ステンレス鋼の接着において, P (AA/MA) 薄膜処理では顕著な耐湿性向上効果がみられたのに対し, PMAとP (AA/CA) 薄膜処理ではその効果がほとんどみられなかった。カルボキシル基と金属との結合状態を確認するためにXPSによる表面分析を行った結果, P (AA/MA) のカルボキシル基とステンレス鋼との界面にカルボン酸アニオンの生成に伴うイオン結合が形成されていることを確認した。接着界面にイオン結合のような強い相互作用が形成されている場合, 界面への水の侵入は考えにくく, またXPSの解析結果はステンレス鋼接着部の耐湿性試験の結果とよく一致することを考慮して, 接着界面の耐湿性向上はこのイオン結合に起因すると推測された。
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