これまで紙パ産業では, 泡を取り除く技術について精力的に取り組んできた反面, 泡を積極的に利用した例は少ない。本報では, 気泡含有塗料の調製と, 泡を利用した多孔性塗膜の形成につき報告する。本多孔性塗膜は, 界面活性剤および粘度調整剤を含む樹脂液に, 気体混入撹拝法によって多数の微細気泡を含有させ, これを基材上に塗工, 乾燥することによって形成される。
本多孔性塗膜の形成には, 塗料中の気泡を微細化し, 塗膜形成過程の泡沫を安定化することが重要である。界面科学的な考察, および実験結果から, 泡の微細化/安定化に必要な要因を明らかにし, 結果として気泡径が4~12μmの気泡含有塗料を調製した。
本多孔性塗膜含有シートを溶融熱転写記録紙として用いると, 優れた記録品質が得られる。微細孔による毛細管力由来の溶融インクの吸収性, 高い断熱性由来のインク溶融に必要な熱の保持, および高い圧縮変形性由来のインクリボンとの密着性が, 優れた記録性能の発現に寄与していると考える。
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