モノセチルリン酸エステルのナトリウム-亜鉛塩 (MCP-NZ) を例にとり, 有機板状結晶粉体の構造と粉体物性およびその発現機構等について解析を行った。合成したMCP-NZの結晶粒子は平板状を呈し, 低い動摩擦抵抗性, 塗布面の高い透明性, はっ水性などの特長を示した。結晶構造は透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察およびX線回折 (XRD) 等の結果から, 直線分子が横方向にパッキングされたラメラ型の層状結晶であることがわかったが, この結晶粒子は塗布する事によって, 粒子自体が変形し薄膜化しているようすが観察された。X線光電子分光法 (XPS) の結果から, 粉体塗布面では分子のパッキング状態を維持した平面構造をとっていることが示唆され, 塗布時のズリ応力による結晶粒子の変形は, アルキル鎖の末端メチル基からなる層面問にすべり面が生じ壁開した結果であると推察された。このような容易に壁開しやすい構造が有機板状結晶粉体に特有の物性を発現する要因であると考察した。
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