近年, インクジェットプリンター (以下IJP) 用インキには, 記録物の画質, 耐久性などを向上させるために, 黒色色素として染料系から顔料系が用いられる傾向にある。その結果, 黒色顔料として使用されるのは, ほとんどがカーボンブラック (以下CB) となって来ている。CBの使用に当たって, 酸化や有機反応を利用してその表面に親水性に優れた表面官能基を付与して, 水へ自己分散させる方法がとられているが, この自己分散性は, 表面官能基であるカルボキシル基あるいはスルホン基等の酸性基を塩基で中和させることにより向上する。それゆえ, 塩基の選択は, 分散性向上に必要不可欠である。そこで, ここでは各種アルカリ金属カチオンで中和した自己分散性CBの基本特性を検討した。その結果, アルカリ金属カチオンの電気陰性度およびCBの粒径が小さくなるほど, 電気伝導率の増加幅が大きくなる傾向にあり, 長期保存する場合, 粘度の増加を起こしやすいことがわかった。また, 小粒子径のCBを使用した自己分散型CBでは, アルカリ金属カチオンの電気陰性度が小さく (原子量が大きく) なるほど黒色度が向上し, 逆に沈殿残渣率は, 増加する傾向にあることが判明した。
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