日本においても, IJ (インクジェト) プリンターによる偽造紙幣は, 無視できない問題となっている。しかしながら, 法科学分野において, IJの印刷物の着色剤を直接検出する研究はほとんど見当たらない。
本研究では, IJによる印刷物から色素の検出のため, レーザー脱離イオン化質量分析法 (LDMS) を適用した。紫外線パルスレーザーを印字部に直接照射し, これを吸収する色素が脱離, イオン化させ, 飛行時間型質量分析で検出した。
3メーカーの6機種について検討した。シアン, マゼンタ, イエローの各実線ごく微量を正イオンモードと負イオンモードで分析した。2機種は顔料系であり, 分子イオンが得られ, ほかの4機種は染料系であり, その分解物由来と推定されるイオンが得られた。
LDMSは, IJによる印刷物の着色剤を直接検出することができるため, 法科学分野において, 有効な分析法である。
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