水性メタリックベース塗料を用いた場合の色調変動機構を, フリップフロップ性を指標として検討した。色調変動機構は, 溶剤型メタリックベース塗料の場合と共通であったが, 溶剤型メタリックベース塗料の場合と異なり, メタル片の衝突配向の寄与が小さく, 収縮配向の寄与が大きかった。これは, 主溶媒の水が蒸発しにくいため, スプレー時に被塗装面に衝突・塗着する塗料粒子に対して緩衝層として働くウェット塗膜の膜厚が大きくなること, 乾燥過程での塗膜収縮率とかかわるウェット塗膜の塗装直後の不揮発分濃度が低くなることにそれぞれ起因すると考えられる。また, 収縮配向の度合いは, 塗装直後の膜厚が増加するのにともなって減少した。これは, 塗装直後にウェット塗膜の粘度がメタル片を完全に拘束できるレベル (以下, 臨界粘度) に達していないために, 乾燥過程初期では重力や対流などによるメタル片のランダム配向と塗膜収縮による平行配向が共存し, ランダム配向の量が塗装直後の膜厚の増加 (臨界粘度への到達所要時間の増加) にともなって増加することによると考えられる。
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