傾斜した撥水表面上での水滴の転落性能は,輸送機械分野を中心にその重要性が高まっている。この性質は固体表面内の均質性が重要であることが指摘されているが,均質性の中で,組成と物理的な粗さが,水滴の転落挙動に及ぼす影響が区別されていない。本研究ではフルオロアルキルシランを用い,蒸着時間を制御して,表面粗さ(
Ra)を0.2 nm以下に維持したまま被覆率の異なるさまざまな自己組織化薄膜をシリコン基板上に作製した。そしてその表面上で水滴を転落させ,粒子画像流速解析により水滴の内部流動を可視化して転落挙動を調査した。その結果,水滴の転落加速度は,シランの表面被覆率の低下とともに低下したが,転落時の滑り/回転の比率はほとんど変化しないことが明らかになった。この傾向は,同一材料で表面に物理的な粗さ(
Ra=3.1 nm)をともなうものとは異なり,組成と物理的な粗さが,水滴の転落挙動への及ぼす影響は異なる可能性があることが示された。
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