色材協会誌
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83 巻, 2 号
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研究論文
  • 佐々木 洋, 林 修平, 徳安 善太郎, 尾野 陽一, 岩崎 光伸, 伊藤 征司郎
    2010 年 83 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    Ta3N5に代表されるタンタル窒化物およびTaONに代表されるタンタル酸窒化物は有毒重金属を含まない赤系顔料および黄系顔料として期待される材料である。われわれは金属ハロゲン化物を液体アンモニアと反応させて得られる前駆体材料を真空焼成して窒化物および酸窒化物を得る液体アンモニア法を開発してきた2)。液体アンモニア法においてその色調を制御する合成条件を明らかにし,実際に合成した顔料の色特性を明らかにすることを目的とした。出発原料に酸素源となる成分(H2OまたはNH2OH·HCl)を添加するとともに真空焼成後の後処理として大気中での再焼成処理を行い,これらの因子が合成物の色特性に及ぼす影響を明らかにするとともに想定する赤の色調を得るための合成条件および後処理条件の検討を行った。液体アンモニア法ではTaCl5に対して酸素源として0.5当量のNH2OHHClを混合して合成した前駆体を973 Kで真空焼成した後,大気中で673 K60 min再焼成した場合にL*=56.13,a*=33.11,b*=30.53を示した。
技術論文
  • 坪田 実, 上田 一成, 福井 寛
    2010 年 83 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    磁性粉の分散性とビヒクルとの相互作用を高める目的で,CVD処理を採用し,粒子を薄膜のポリメチルシロキサン(PMS)で被覆した。ビヒクルとして,-OH有無の塩化ビニルコポリマーとポリウレタン樹脂を選択し,各樹脂中での分散性を評価した。さらに,各樹脂で分散したミルベースに塩化ビニルまたはポリウレタンを追加し,同一組成の塗膜を調製した。引張り強度や動的粘弾性測定を行い,磁性粉/ビヒクル間相互作用を考察した。1)PMS膜の厚さは4 nm程度であり,引力ポテンシャルエネルギーの計算から,磁気引力は著しく低減されることがわかった,2)処理粒子の分散性は分散樹脂の種類にかかわらず一様に向上した,3)PMS膜は分散樹脂をよく濡らし,ブレンド樹脂との相溶性を向上させた。さらに,処理粒子充てん塗膜の破壊伸びは,未処理のそれに比べて4倍以上増大した。
解説
  • 鷺坂 将伸, 吉澤 篤
    2010 年 83 巻 2 号 p. 66-75
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    近年,環境保全の点からVOCなど有機溶媒の使用が制限されるようになり,それら工業溶媒の代替として,超臨界CO2が多くの注目を浴びている。超臨界CO2は,無毒,不燃性,環境適合性,低コスト,豊富に存在するといったCO2のメリットに,超臨界流体の特性(溶解能力の可変性,高い物質輸送特性,低表面張力など)を併せもつ新規溶媒であり,超臨界CO2を利用した化学工業プロセスの研究開発が急速に進められている。しかし,残念ながら,超臨界CO2は,高分子や不揮発性の極性物質を溶解する能力は低い。これが,抽出分離,反応,材料製造などに対する超臨界CO2の工業的応用の幅をかなり狭めている。この問題点を克服する手段の一つとして,分散相の形成がある。本解説では,scCO2中へ,水を中心とした分散相を形成させるための界面活性剤分子の設計方法や,構築された分散系の物性および応用について紹介する。
  • 井村 知弘, 福岡 徳馬, 森田 友岳, 北川 優, 北本 大
    2010 年 83 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    バイオサーファクタントは,再生可能資源から微生物によって量産される天然の両親媒性物質であり,合成の界面活性剤と較べて,温和な生産条件,優れた生体適合性,高い環境調和性などのユニークな特徴を示すことから,低炭素社会に対応した新しい界面活性剤として期待されている。その中でも,マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は,シュードザイマ属の酵母から,植物油を原料として,培養液1 L当たり100 g以上ときわめて高い収率を示すことから近年注目されている。さらに,MELは,優れた界面活性や自己集合特性などの物理化学的性質に加えて,細胞分化誘導特性などの興味深い生化学的性質も示すことが見いだされており,ごく最近では皮膚に対して優れた保湿効果を示すなどの新たな機能も明らかになってきた。本稿では,低炭素社会に対応した新しい界面活性剤として,われわれの取り組んできたバイオサーファクタントの生産と用途開発についてご紹介したい。
解説
  • 土屋 好司
    2010 年 83 巻 2 号 p. 82-88
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    超音波診断は,非侵襲性,簡便性,リアルタイム性,経済性の観点から一般に広く普及した医療診断技術である。一般に超音波造影剤としては微小気泡が用いられているが,市販の造影剤は気泡サイズが大きく,血管外にある腫瘍細胞への集積性に貧しいという問題がある。そこで本研究では“ナノバブル”の調製条件について検討し,さらに腫瘍組織へ選択的に吸着可能な抗CD147抗体を標識した微小気泡の腫瘍細胞への集積性とその超音波イメージングを行った。
    まず,新規に合成したシクロアミロース修飾界面活性剤および重合性ジェミニ型界面活性剤を用いて微小気泡の調製を試みたところ,直径200 nm程度のナノバブルが調製できることがわかった。
    次に,抗CD147抗体標識微小気泡の肝癌細胞への集積性について検討したところ,肝癌細胞付近に特異的に集積する様子が超音波診断画像により明瞭に観察された。
  • 酒井 秀樹
    2010 年 83 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    界面活性剤が形成するナノスケールの分子集合体をStructure directing agent(SDA)として調製されるメソポーラスチタニア粒子について,とくに粒子の細孔構造および結晶構造などの特性に及ぼす界面活性剤の分子構造や会合形態の影響に着目して検討した。4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が形成する分子集合体親水基近傍の特異的環境を利用することにより,結晶性壁膜を有するメソポーラスチタニアの調製に成功した。さらに,芳香族油剤を可溶化させた分子集合体を利用した,メソポーラスチタニアの細孔径拡大についても検討した。イオン性界面活性剤が形成するナノスケールの分子集合体界面では,電荷が高密度に配列されているため,その表面を「自己組織化された触媒」として利用することにより,通常の溶媒中では得られない構造や機能を有するナノ材料を創製することが可能となった。
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