色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
Print ISSN : 0010-180X
ISSN-L : 0010-180X
83 巻, 6 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究論文
  • 肥後 盛秀, 池田 陽一, 木戸口 俊一, 満塩 勝, 吉留 俊史
    2010 年 83 巻 6 号 p. 249-255
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル フリー
    非弾性電子トンネル分光法(IETS)と原子間力顕微鏡(AFM)を用いて,鉛トップ電極をもつアルミナ接合における水,ギ酸,酢酸,メタンスルホン酸の鉛薄膜を通しての浸透(注入ドープ)に関する研究を行った。各種膜厚の鉛薄膜の抵抗測定,水の浸透による接合抵抗の変化,アルミナ絶縁層のトンネルスペクトルの解析,さらに鉛薄膜のAFMによる形態観察により,鉛トップ電極の粒界を水分子が浸食しながら接合内部に浸透し,アルミナ絶縁層が成長することを確認した。浸透したギ酸,酢酸,メタンスルホン酸のトンネルスペクトルの解析と鉛薄膜のAFMによる形態観察により,これらの有機酸は水分子とともに鉛トップ電極の粒界を通って接合内部に浸透し,アルミナの表面水酸基と反応して生成したルイス酸点(Al)上に陰イオン状態で吸着されることがわかった。
  • 長尾 幸徳, 斉藤 健志, 土屋 昌俊, 須田 宗平, 有光 晃二, 小澤 幸三
    2010 年 83 巻 6 号 p. 256-262
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル フリー
    トリフェニルアミン系ホール輸送材料としてフェニルエチル基,ジメチルアミノ基,アセチル基,アゾメチン結合などをもつトリフェニルアミン誘導体を合成し,それらを用いた色素増感太陽電池やヨウ素錯体結晶を作製し,その特性を検討した。まず,電解質部分に合成したトリフェニルアミン誘導体を用いて固体色素増感太陽電池を作製し,その光電変換特性よりこれらのトリフェニルアミン誘導体がホール輸送材料として機能することを確認した。さらにこのホール輸送層にヨウ素をドープすることで大きく光電変換特性が向上するトリフェニルアミン誘導体が見いだされ,ヨウ素ドープが性能向上の有効な手段であることが示唆された。このヨウ素ドープの作用は酸化によるジイモニウム塩の形成に起因すると推定された。またフェニル基をもつトリフェニルアミン誘導体はヨウ素と安定で電気伝導率の高い錯体結晶を生成することが見いだされ,有機半導体材料として有望であることが示唆された。
解説
  • 室伏 克己
    2010 年 83 巻 6 号 p. 263-269
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル フリー
    多官能二級チオールは,チオール基周りの立体障害により,モノマーへの熱付加反応(保存時のゲル化)を抑制することができる。多官能二級チオールをモノマーに添加することで,UV硬化反応における酸素による重合阻害が抑制され,かつエン-チオール反応により高い硬化性が得られることが示された。また,反応挙動の追跡により,多官能二級チオールとモノマーとの配合に最適値が存在することも示された。さらに,この多官能二級チオールを添加した硬化組成物は,密着強度,硬化収縮あるいは柔軟性など,UV硬化システムで必要とされるさまざまな特性の向上が見いだされた。一方,多官能二級チオールの構造に,芳香環骨格およびエーテル骨格を導入することで,耐熱性および耐吸水性などの特性を付与することができた。
解説
  • 江崎 泰雄, 辻 正男
    2010 年 83 巻 6 号 p. 270-275
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル フリー
    塗膜の諸特性や劣化状態を評価するうえで,塗膜の表面から内部への組成・構造情報を正確に把握することが重要である。しかし,塗膜のような薄膜試料の場合,その深さ方向の分析を精度良く行うことは容易ではなかった。そこで筆者らは深さ方向分析の高分解能化を達成するツールとして傾斜切削機を開発した。本機は試料表面上に小さな角度で傾斜した切削面を作製するものである。この傾斜切削面上には試料の深さ情報が拡大されているため,この切削面を分析することによって高分解能な深さ方向分析が可能になる。本稿では,開発した傾斜切削機の技術的特徴について開発経緯を含めて解説する。また,塗膜の欠陥検査,材質調査,劣化機構解析などへの適用例を通して自動車用塗膜の研究開発への有用性を紹介する。
ナノテクノロジー講座(第XII講)
feedback
Top