色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
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84 巻, 4 号
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研究論文
  • 高村 正晃, 物江 智子, 山内 健, 坪川 紀夫
    2010 年 84 巻 4 号 p. 127-132
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    カーボンブラック(CB)の有機溶媒への分散性向上を目的とし,CB表面へのポリ(L)-乳酸(PLLA)のグラフトを(1)CB存在下でのL-乳酸(LLA)の重縮合と,(2)スカンジウムトリフレート(Sc(OTf)3)触媒存在下におけるCB表面へのPLLAのグラフト反応の二種類の方法で検討した。その結果,(1)の系において,CBの存在下ではLLAの重縮合反応が促進され,CBがLLAの重縮合触媒として作用することがわかった。また,(1)の系では,CB表面へのPLLAのグラフト反応がSc(OTf)3の存在の有無にかかわらず進行したが,Sc(OTf)3の存在下ではグラフト率が大きなものが得られることがわかった。さらに,(2)の系においても,Sc(OTf)3存在下でCB表面官能基とPLLAとのグラフト反応が進行することがわかった。なお,CB表面へのPLLAのグラフト率は(1)の系よりも(2)の系のほうが大きかった。また,CB表面へPLLAをグラフトすると,CBの平均粒径が小さくなった。さらに,PLLAをグラフトしたCBはPLLAの良溶媒であるDMSOや1,4-dioxaneなどの極性溶媒に安定に分散することがわかった。これの結果は,CB表面へPLLAグラフトすることにより,CB粒子の凝集構造が破壊されることを示唆している。
解説
  • 三輪 朋孝
    2010 年 84 巻 4 号 p. 133-137
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    近年,環境対策として,VOCの排出を抑制することが重要になっている。
    その中で蓄熱式直燃装置(RTO)は,VOCおよび脱臭処理として優れ,かつさまざまな用途に使用されている。
    日本でも,悪臭防止法の施行をきっかけに,多量の塗料を扱う自動車メーカーなどでは,環境にやさしい塗料を採用する一方で,小~中排気量の乾燥炉の脱臭処理に加え,工場周辺の環境のため大風量の塗装ブース排気中のVOCと臭気を処理する事例が増えてきている。大風量化に対応するため,従来商品の小~中型のRTO技術を基に回転方式の新技術が導入され,大型RTOが商品化されている。また塗装工場の乾燥炉下には,高さ制限のある余剰空間がある。その空間を活用するため,高さの低い横型RTOが開発され,空間活用と抽気ダクト削減で,脱臭効率向上とコスト削減が達成されている。
    これら回転弁式RTOを中心に,VOC処理関連の商品と取組みを紹介する。
解説
最新顔料講座(第VIII講)
  • 山元 明
    2010 年 84 巻 4 号 p. 144-151
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    照明機器,情報ディスプレイなどの特性を決定する蛍光体について,最近の進歩を紹介する。蛍光ランプに次いで,やはり光励起で発光する白色発光ダイオード用蛍光体に重点をおいて説明する。発明当初から大多数の製品に使われているY3Al5O12:Ce3+系黄色蛍光体の特性を通じて,白色発光ダイオード用に要求される物理的性質を議論し,これに基づいて近年進展著しい窒化物,酸窒化物蛍光体について具体例,特徴などを記す。次いで,これからの進展が期待される太陽電池の効率向上を目的とする応用について現状を概観する。まとめに代えて,医療用,3Dディスプレイなど進展の期待される用途があることに触れる。
最新塗料講座(第VII講)
  • 渡辺 真
    2010 年 84 巻 4 号 p. 152-158
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    近年,CO2削減の高まりやROHS,ELV指令を背景に,VOC等有害物質を含まない材料の使用や,太陽電池や電気自動車に代表されるように,環境にやさしい製品の開発が加速度的に進められてきている。ライフサイクルアセスメント(LCA)の検証が行われていく中で,製品に対する寿命保証も20年,30年と長く要求されるようになり,また義務付けられてきている。その中,促進耐候性試験機はいち早く寿命を見極め,品質を保証する道具としてますます必要かつ期待されている。促進耐候性試験機は,実際の製品・材料の劣化をシミュレートする「相関性」と,劣化を加速する「促進性」および何度試験しても同じ結果が得られる「再現性」が求められている。製品の使用されている環境,材料の加工方法はさまざまで,劣化のメカニズムは一様ではない。また,指標となる屋外暴露試験も,設置場所,方法や開始時期により曝される紫外線量・温度・湿度,降雨量等に違いがあり,気象因子の測定と同時に製品・材料の暴露試験中の状態を知る必要がある。促進耐候性試験も同様に,製品・材料の試験中の状態を知ることが重要である。
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