色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
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87 巻, 1 号
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研究論文
  • 松居 正樹, 窪田 裕大, 船曳 一正
    2014 年 87 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    1-アルキル-2-[4-(ジアルキルアミノスチリル)]ピリジニウム色素の融点は,カウンターアニオンとアルキル置換基に依存した。カウンターアニオンは劇的に融点に影響し,1-ブチル-2-[4-(ジエチルアミノ)スチリルピリジニウム色素では,249℃から81.6℃に変化した。次に融点はアルキル基によって影響された。最も低い融点は2-[4-(ジデシルアミノ)スチリル]-1-ドデシルピリジニウム=ビス(ペルフルオロブチルスルホニル)イミドで,27.2℃に観察された。
解説
  • 内藤 昌信
    2014 年 87 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    船底や岩礁などで群生しているムラサキイガイは,代表的な海洋付着生物である。ムラサキイガイは,足糸と呼ばれる接着タンパク質を分泌し,それを不溶化することで強固な接着能を獲得している。このタンパク質にはチロシンの翻訳後修飾によって得られたL ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)が多く含まれており,それが接着機構に重要な役割を果たしている。ムラサキイガイは水中で接着タンパク質を分泌し,それを固化することで強度な接着力を得ていることから,優れた水中接着剤として注目されている。本稿の前半では,DOPAの化学構造・物性を巧みに使った水中接着メカニズムを概説した後,最近注目されているムラサキイガイの接着物質を模倣した水中接着剤について,最近の研究動向を代表的な研究例とともに紹介した。古来より,漆の原料であるウルシオールや柿渋の苦味成分である胆汁酸は自然塗料や接着剤として用いられてきた。これらの天然材料はいずれもカテコール基を分子内にもち,それが自動酸化してクロスリンクすることで塗膜や接着剤としての性能を発揮する。MAPを模倣した最近の万能接着剤も,一見すると原点回帰のようにも見える。しかし,MAPを模倣した接着剤が新しいテクノロジーとして迎えられた背景には,化学の進歩によって接着剤の新たな活躍の場が生まれてきたからにほかならない。ムラサキイガイのほかにも世の中にはたくさんの付着生物が生息している。今後,接着生物の付着機構が解明されれば,このような分野がますます発展していくと考えられる。
総説
  • 則末 智久, 杉田 一樹, 中西 英行, 宮田 貴章
    2014 年 87 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    光が透過しない高度に乳濁もしくは着色した懸濁微粒子溶液に対する,粒径および分散安定性を解析するための新しい手法,動的超音波散乱(DSS)法を開発した。この技術を用いて,粒子径が数マイクロメートルから数十マイクロメートルの粒子分散溶液を解析し,粒径および流体力学的相互作用を評価した。DSS法は,線源に超音波を用いているため,光学的手法では測定が困難な光が透過しない試料の分析が行えることに加えて,超音波パルスの位相解析によりサンプルセル中の構造の可視化も可能とする。この技術は,今後さまざまな製産場においてこれまで中身が確認できなかったために理解できなかった材料の特性をより明解に理解するための技術になることが期待される。
最新表面科学講座(第XIX講)
  • ~AFM(QFM)による摩擦特性解析~
    定家 惠実
    2014 年 87 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    毛髪外層はキューティクルという厚さ0.5 µmほどの板状細胞が5~10層ほど積層しており,さらにその表面はタンパク質にチオエステル結合した18-メチルエイコサン酸(18-MEA)の単分子膜層で覆われている。分子レベルの摩擦力を検出できる摩擦力顕微鏡(FFM)から定量的摩擦力マップ(QFM)を作成し,毛髪本来の構造が保持されている根元部及び損傷を受けている毛先部の摩擦特性を調べた結果,さまざまな摩擦特性の違いが明らかになった。摩擦特性の違いから考察される毛髪表面の微細形状や化学構造について述べる。
最新表面科学講座(第XX講)
  • 小林 信太郎
    2014 年 87 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    X線を用いた分析は試料を非破壊で測定することができる。またその透過能を利用することでX線回折計は粉末やバルク材料の試料内部の情報を得るツールとして利用されてきた。近年,平行化したビームを試料すれすれの角度で入射しその角度を制御することが可能になったことから,X線の侵入深さを制御した測定も行えるようになった。この技術により試料の表面から内部までの定性分析や結晶性の評価,また反射を利用した表面層の厚さ,密度,荒さといったものの評価を行うことが可能となり,表面や界面の分析ツールとしても使われるようになってきている。本稿では表面X線回折をキーワードとしての基本的な原理や測定装置,さらに測定事例について紹介する。
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