色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
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89 巻, 6 号
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―小特集 自然界から学ぶ色彩―
解説
  • メカニズムと行動学的意義
    大島 範子
    2016 年 89 巻 6 号 p. 178-183
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    魚の体色は皮膚に存在する特別な細胞“色素胞”によって発現する。色素胞は,細胞内に含有する色素物質の色を呈する光吸収性色素胞と,色素は存在せず,細胞内構造により光を反射して構造色を生じる光反射性色素胞に区別される。多くの色素胞は細胞膜に神経伝達物質やホルモンの受容体をもち,これらの物質が作用すると運動性を示す。魚の体色や模様の素早い変化は色素胞の運動によって誘起される。音声を発することのできない魚は体色や模様で仲間を認識し,それらの変化を利用してコミュニケーションを図っている。さらに派手な色彩を誇示して外敵から身を護る魚もいれば,逆に背景の色に溶け込んで自分の存在をカムフラージュすることにより,捕食者や被食者の目を逃れる魚種もいる。このように,魚にとって行動学的に重要な意義をもつ体色とその変化は,究極の生き残り戦略と言える。
  • ~羽毛の発色と生物学的背景~
    森本 元
    2016 年 89 巻 6 号 p. 184-190
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    地球上に生息する生物は,さまざまな色彩を有する。中でも鳥類は,色が多様な生物群と考えられている。地球の自然環境で,生物は互いに相互関係の中で生きており,そこには色が社会的信号として機能している。例として,捕食-被食関係における隠蔽色や,雄の鮮やかさに対する雌の選り好みといった性選択がこれにあたる。いずれも,生物における進化のメカニズムがその背景にある。本稿では,鳥類の羽毛の発色様式の違いや,生態における機能とその背景,鳥類の視覚,さらにそれらを応用したバイオミメティクスといった,鳥学において色にまつわるテーマを包括的に概説する。
  • 弘中 満太郎, 針山 孝彦
    2016 年 89 巻 6 号 p. 191-196
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    生物の多くは,特定の色(波長)に対する選好性をもつ。そのなかでも昆虫の色選好性は,非常に顕著な傾向を示すことから,基礎科学的あるいは応用科学的な注目を集めてきた。昆虫がどのような色を好むのかについて概説し,その色選好性の生物学的意義に関する仮説について説明する。また,それらの色選好性を利用した昆虫の行動制御技術の実用化の現状と新しい展開について紹介したい。
光と色彩講座(第8講)
  • -適切に色を測り伝える方法-
    長野 千尋
    2016 年 89 巻 6 号 p. 197-202
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
    人は「色」に意匠や機能などの価値を見いだし,自らが生み出す製品に意匠,機能を付加するために着色をする。この「色」を的確に伝達し,製品製造における色の再現性を確認する方法として色の数値化がある。数値化には物体を適切な測定器で色を測る(測色)必要がある。これは測色の結果が装置の光学条件やサンプルの形状,表面状態(とくに低明度において表面のキズや指紋汚れが顕著に影響する)によって変わるためである。本報では,測色の際に注意する点と測定器の光学条件に適したサンプルを示した。加えて,測色結果を定量的に比較するための色差式についても概略を記した。
界面活性剤講座(第5講)
  • 野々村 美宗
    2016 年 89 巻 6 号 p. 203-206
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー

    液液界面に吸着した固体粒子によって安定化されたエマルションはピッカリングエマルションと呼ばれている。固体粒子はO/Wエマルション・W/Oエマルションだけでなく,O/Oエマルション,W/Wエマルション,多相エマルション,泡,水滴,共連続液晶相や非球形エマルションを形成する。これらの構造体は刺激応答性材料,マイクロリアクター,触媒,分析分離システム,医薬品・化粧品・食品などさまざまな分野で利用されている。本稿では,最近の研究成果を紹介する。

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