有機系相転移材料(Phase Change Material:PCM)ゲルおよび有機系PCMゲル/水エマルションの蓄熱材としての可能性について検討した。有機系PCMを油ゲル化剤によりゲル化した有機系PCMゲルは,有機系PCMが融点以上になり有機系PCMが固体から液体へ相変化しても流動しないことがわかった。また,有機系PCMゲルを水中に分散した有機系PCMゲル/水エマルションは,有機系PCMが融点以下になり有機系PCMが液体から固体へ相変化しても流動性を保持することが明らかとなった。さらに,有機系PCMゲルと有機系PCMゲル/水エマルションの蓄熱性能は,有機系PCM単体よりも高いことも明らかとなった。有機系PCMゲルの熱的安定性は油ゲル化剤を適切に選定することにより向上することがわかった。また,有機系PCMゲル/水エマルションは高い熱的安定性を有していることが明らかとなった。
混成硫酸複塩を水溶液から成長させる方法において前駆材料の組成によって結晶形状と色調を選択することができる結晶育成教材を開発した。薄桃色(L*=83.64,a*=0.26,b*=-0.57)の菊花状結晶は前駆材料([K2Mg(SO4)2-6H2O]:[K2Mn(SO4)2-4H2O]=50:50)から成長する。また薄紅色(L*=76.54,a*=13.38,b*=0.39)の菊花状結晶は前駆材料([K2Mn(SO4)2-4H2O]:[K2Co(SO4)2-6H2O]=75:25)から成長する。他方,淡赤色(L*=84.77,a*=1.61,b*=-0.47)の塊状結晶は前駆材料([K2Mg(SO4)2-6H2O]:[K2Co(SO4)2-6H2O]=99:1)から,淡緑色(L*=87.34,a*=-0.64,b*=-1.00)の塊状結晶は前駆材料([K2Mg(SO4)2-6H2O]:[K2Ni(SO4)2-6H2O]=99:1)から,そして淡青色(L*=86.21,a*=-0.27,b*=-0.95)の塊状結晶は前駆材料([K2Mg(SO4)2-6H2O]:[K2Cu(SO4)2-6H2O]=99:1)から成長する。
フェムトリアクターは,エレクトロスプレー法によって,液体を直径数μm(体積フェムトリットル(10-15 L)レベル)の極微小液滴に微細化し,極微小液滴で化学プロセスを制御するスマートな技術である。高速で二液を混合し,生成物を高速で安定化することができるため,金属ナノ粒子の液相合成法に適用すると,シングルナノサイズで粒径分布幅の狭い金属ナノ粒子の合成が可能となる。 とくに液中でエレクトロスプレーを制御することにより,多様な用途への応用が可能になった。
再生可能エネルギーの中核である太陽光を利用した太陽光発電が,基盤エネルギーとして貢献するためには,発電コストの大幅な低減が必要である。低コスト発電の実現に向けて,環境負荷の小さいプロセスによる製造が可能な有機太陽電池や,新しい材料や構造で構築する次世代太陽電への期待が高まっている。本稿では,化学合成条件を整えることで,幅広い波長領域での光吸収が可能なコロイド量子ドット(CQD)で構築する,コロイド量子ドット太陽電池の現状を,PbS CQD/ZnOヘテロ型太陽電池を中心に紹介する。また,ZnOナノワイヤの構造制御により,光捕集効率および電荷輸送効率の両立を目指した,われわれの研究成果も合わせて解説する。
界面活性剤が形成するミセル・ベシクル・ミエリン像などの分子集合体を鋳型または構造指向剤として利用した,ナノ形態制御シリカ材料の調製について概説した。まず,アニオン/カチオン界面活性剤混合水溶液を構造指向剤としたメソポーラスシリカの調製と細孔構造・細孔間隔の精密制御について述べた。次に,カチオン界面活性剤混合系で形成するベシクルを構造指向剤とした,分散性に優れるシリカナノ中空粒子の調製と,その反射防止フィルムへの応用について述べた。さらに,プルロニック系界面活性剤が形成するミエリン像を構造指向剤として調製されるシリカチューブについて紹介した。最後に,構造指向剤として用いられる分子集合体と,ゾル/ゲル反応により得られるナノ形態制御シリカ材料との構造相関について議論した。