スズ(Sn)系金属表面にトリアジントリチオール(1,3,5-Triazine-2,4,6-trithiol:TTCA)を,溶液浸せき法により吸着させる条件について研究した。TTCAが互変異性構造をもつことから溶媒のプロトン供与性に着目した。非プロトン性溶媒であるジメチルフォルムアミド(DMF)やN-メチルピロリドン(NMP)溶液中では吸着されにくいが,プロトン供与性溶媒であるメチルアルコール(MeA)やエチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE)溶液中では容易に表面吸着することを新たに見いだした。Sn表面は還元性プラズマ処理をしても空気中で容易に酸化膜を形成するが,プロトン供与性溶媒中では酸化物の酸素が脱離して金属とチオールとの結合によって表面に吸着し,さらにTTCAがジスルフィド結合によって表面に積層されていくことをXPS分析により明らかにした。塗料用溶剤などで使用されているMeAやEGMBEを使用して,浸せき法により金属表面をTTCAで簡便に機能化することが可能となった。
有機系相転移材料(Organic phase-change material;OPCM)(パラフィンなど)は0℃以上に凝固点・融点を有し,固体-液体相転移時に大きな潜熱を有することから,人間の生活空間の温調に適用可能な蓄熱材として期待されている。さらに,近年では,OPCMを水中に分散したOPCM/水エマルション(エマルション型蓄熱材)がOPCMの凝固点以下においても流動性を保持していることから,蓄熱・熱輸送媒体として注目を集めている。一方で,OPCMをエマルション化することによりOPCMが過冷却(凝固温度の低下)を起こし,熱エネルギー変換効率が低下する問題が生じる。そこで,本稿では,OPCM/Wエマルション中のOPCM滴の過冷却と界面活性剤の特性との相関性について解説する。
黄鉛,カドミウムレッド,複合酸化物顔料などの無機顔料は,重金属を含有するためさまざまな法規制の対象となる。有機顔料は,重金属を含有するレーキ顔料や製造工程上より副生するPCBやHCBなどの不純物を含有するため法規制の対象となる場合がある。近年,分析技術の向上とともにこれまで知見のなかった不純物が顔料中から検出される事例が多くなっており,顔料を取り巻く法規制も世界各国で厳しくなりつつある。ここでは顔料に関する最近のトピックスを交えて顔料と法規制の関係について紹介していきたい。
中国新化学物質管理の法的な根拠として,中国環境保護部部令第7号は新規化学物質を中国市場で輸入される場合,事前に申告しなければならないことを規定している。関連ガイダンスが施行してからすでに7年となり,最新版は現在修訂中である。最新修訂版は正式に公表されるまでに,本稿では,中国新化学物質申告に関する法規制の枠組み,申告要点,実施プロセスを概説する。また,最新改正の進捗状況により,おもな修訂方向に対する見解もまとめる。
本稿に関する日本語での問い合わせ先:日本事業部 劉 鳴(りゅうめい) liuming@reach24h.cn