脱泡は一般に遠心脱泡で行われるが,擬塑性を示す液体中からの微細気泡の脱泡は難しい。本研究では新たな脱泡装置として自転公転式撹拌機を開発し,擬塑性を示す高粘度ジェル中に存在する1 μLの大きさの気泡の脱泡を試みたところ,気泡の数にかかわらず数十秒で脱泡が終了した。この脱泡のメカニズムを明らかにするため,液面上部に赤く染色したジェルを滴下して自転公転操作を行い,遠心操作との比較を行ったところ,遠心脱泡法では赤色ジェルは撹拌前と同じ場所に残留しており,2液の混合はまったくなされていなかったが,自転公転式撹拌では,ジェル全体が赤色に染まり,容器内全体を撹拌する流れが生成していることが確認できた。すなわち,遠心操作に加えて自転操作を行うことで流動が促進され,撹拌と脱泡がされたものと考えられる。
高度精製オレンジラフィー油(Orange roughy oil)は高級脂肪酸と高級アルコールのエステルからなる海洋性天然ワックスエステルであり,性状としては化粧品の代表的な植物性天然ワックスエステルであるホホバ油(Jojoba oil)ときわめて類似していることが知られている。今回,オレンジラフィー油とホホバ油との化粧品素材としての性能差を検討した。
基本的な物理的性質として,オレンジラフィー油は,ホホバ油よりも粘度が低く,極性が高く,表面張力が低かった。しかし,それらの違いは,皮膚に適用したときの感触の違いが検出できない程度であった。一方,化粧品に配合すると,製品の特性の差がより顕著になった。ミツロウを用いた油性ゲルは,オレンジラフィー油のほうがより柔らかい質感をもたらし,またオレンジラフィー油を含むリポソーム分散液は,唇からの水分蒸散をより効率的に抑制した。さらに,O/W型乳液では,皮膚への広がり性に優れており,軽くて滑らかな塗布感触の乳液が得られた。
液体の粘度測定はせん断ひずみによる測定が主流である。しかし,流動時の物体の変形はせん断だけでなく伸長によっても定義される。そのため,粘度測定の際は,流動性評価の対象となる現象に伸長変形がともなうのであれば,伸長ひずみによりその粘性抵抗を調べる必要がある。
本稿では,伸長とせん断,それぞれの変形の定義と関連性の解説をもとに,Capillary Breakup方式による伸長ひずみ型レオメータThermo Scientific™ HAAKE™ CaBER™ 1の測定原理とその応用について解説する。
今日,多くの工業製品において,性能,品質,寿命そして最も重要な信頼性は,基材上の塗膜,接着剤の接着性に影響される。しかし,製造工程におけるコンタミおよび(または)材料の低い表面エネルギーにより,基材表面に直接,接着,コート,塗装することが難しい場合がしばしばある。そのため,洗浄,活性化することにより接着に適した状態に表面処理される必要がある。
新しいモーター,ハイパワーエレクトロニクスと同様に,自動車製造,航空機構造ではハイブリッド材料の使用が増えており,これらは従来の湿式化学前処理技術が使用できないことがしばしばある。種々の基材への接着性能と接着耐久性を向上させるため,大気圧プラズマ(APP)は,多くの工業分野で重要な役割を担っている。熱可塑性プラスチック表面への親水性官能基の生成,銅リードフレーム表面の不安定な酸化物層の除去,コンタミ層の高精度な除去は,今日,APP-ジェットの適用例の典型となっている。APP-ジェットシステムは多様であり,100 m/min以上の高速処理だけではなく,補修や小バッチなどの小規模な処理にも適用可能である。本報では,典型的なAPP-ジェットのスペクトラムを述べ,応用可能な技術領域を展望する。
台所洗剤を構成する界面活性剤は,時代,ニーズとともに変遷している。1960年代は洗浄力の高いアニオン界面活性剤が台所洗剤の主成分であった。1970年代は,アニオン界面活性剤と両性界面活性剤を用いることで,マイルド性と洗浄力を両立した。昨今では,アニオン界面活性剤と両性界面活性剤を用いて,「素早く洗える」「ぬるつかない」など生活者実感をともなう機能を付与している。これらの現象について,自発的乳化と構造粘性の観点から論ずる。
化学薬品が適切に管理されていないために引き起こされる人的要因による職場災害を調べてみると,化学薬品の安全管理の進め方そのものが示されていないことが原因であることが多い。繰り返し引き起こされる化学薬品の事故への対策として,2012年9月,国会で「化学物質の登録と評価等に関する法」と,欧州のREACH規制への経験に基づいた以前の「毒化学品管理法」に置き換わる「化学品管理法」が可決された。本講では,韓国における化学薬品規制の背景,国内の化学薬品事故,そして規制上の問題について解説する。