塗料の乾燥過程において重ね塗りをした際に,シワが出現する場合がある。このシワ形成を弾性薄膜の座屈現象としてとらえ,数理モデル化する。この数理モデルを用いると,シワ形成の条件および初期段階の現象を説明できる。数値シミュレーションによって,シワが形成される様子を再現することもできる。一方で,シワが発達してからの現象に関しては,モデル改良の余地がある。観察される現象のどの部分に注目するかによって,適切な数理モデル化の方法は異なることに注意が必要である。
量子化学計算は機能性分子の理論設計のツールとして今後ますます進展することが予想される。本解説では,どのように電子状態と機能とを結びつけ,そこから設計指針を導出し,具体的な分子を設計していくかという点に関して,リン光発光を示すイリジウム錯体の発光波長のデザインを例にとり,具体的な分子設計のプロセスを示したい。
塗料は,樹脂,顔料,溶剤,添加剤など多くの有機および無機成分から構成される多成分混合系であるため,それぞれの成分を最適に分離する分析方法が求められる。また,塗料から形成された塗膜は,厚さ数~数十μmの固体フィルムであるため,固体表面および断面の微小領域の分析が求められる。本稿では,塗料・塗膜のいくつかの分析例を示しながら解説する。
近年,家電,建材などに用いる金属の高性能化が進み,耐食性に加え,耐候性,耐薬品性,密着性などとの両立が求められ,表面処理に対する性能向上の要求が高まっている。表面処理用の高分子材料は単一では,高い要求を満足することが困難である。
課題の解決の手段として,異なる性質をもつ二種類以上の高分子材料の複合で高性能化する「ポリマーアロイ」という手法がある。単純なポリマー同士の混合では,その特性を活かせない課題があった。しかし当社はエマルション化技術を駆使したナノオーダーでの複合を可能とし,相反する二つの特性を有する材料を開発することに成功した。この手法を区別するため前者をポリマー「混合」,後者をポリマー「複合」と区別する。
本稿では,「ウレタン樹脂」と「アクリル樹脂」という異なる二つの高分子材料を用いた「ウレタン・アクリル複合エマルション」の合成方法やエマルション構造の優れた特性について述べる。
クルマの電動化と自動運転化のゴールの形態はほぼ見えているが,ゴールに至る過程と時間軸はまだ不透明な状況にある。電動化と自動運転化はどちらもクルマのミリセカンド単位の制御をベースにする密接な関係にあり,その両者の歴史と流れを俯瞰することによって将来について考える一助とする。さらに,自動運転化は社会や自動車産業構造にかつてないスケールの変革をもたらす可能性ももっている。