パンはきわめて多様性に富んだ食品であり,パンのタイプごとに副材料の配合量が異なり,美味しさが顕著に異なる。また,同一タイプのパンであってもつくり方によって美味しさが異なり,これを目標とする美味しさを形づくれるようにコントロールすることが製パン技術の重要なポイントになる。本稿はこの内容を気泡構造の面から解説する。また,パンの美味しさと色の関係についても触れることにする。
かまぼこ特有の食感と白さは,製品を評価するうえで重要な項目となる。かまぼこの食感の形成は,魚肉タンパク質のゲル化を利用している。とくにミオシンやアクチンといった筋原繊維タンパク質がゲルの形成,すなわち食感の形成に重要な役割を果たす。魚肉中のこれらのタンパク質は塩に溶け,熱に対して不安定な性質をもつ。そのため,擂潰(らいかい)条件や加熱条件によって,得られるゲルの状態が異なる。また,かまぼこの白さを生み出す理由として,おもに白身魚を原料として使用することと,水晒しの工程を経ることが挙げられる。本来,水晒しは魚肉中の水溶性成分を除去し,ゲル形成能を高める工程であるが,この工程で色素成分も抜ける。そのため,結果的に水晒しによって,かまぼこの色は白くなる。
本稿では,かまぼこの食感と白さを生み出す技術について,ゲル形成の化学的な反応と評価方法,および水晒しの工程中に生じる魚肉の水溶性成分の拡散現象の面から解説する。
チョコレートは,カカオ脂(ココアバター)にカカオマス・砂糖・乳粉末などの固体粒子が分散した固体コロイドである。チョコレート独特の物性はすべてチョコレート中のココアバターの物性が担っている。ココアバターには,六種類(I ~VI型)の異なる結晶(多形)があらわれ,多形によりテクスチャー(口溶け感や舌触り感)が異なる。すなわち,結晶多形制御が,チョコレートの美味しさと密接に関係している。結晶多形のうち,V型多形が,美味しいチョコレートを作り,したがってV型多形への結晶化法が重要である。この結晶化法は,テンパリングと呼ばれる温度制御法としてよく知られている。ところで,ココアバターは温度変化や時間経過により,結晶状態が変化し,粗大な結晶が出現しチョコレート表面が白くなる,ブルームと呼ばれる劣化現象があらわれる。この白くなる程度を計測し,ブルームの進み具合を調べるのに白色度計が用いられている。
植物由来のグリセリンと脂肪酸から得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)は,親水基のグリセリン重合度と親油基の脂肪酸種類・付加モル数を変えることにより,親水性から親油性まで幅広いHLBの設計が可能である。弊社では,PGFEの特徴的な効果の一つである油脂の増粘および固化を付与できる製品であるTAISETを上市している。また,透明性を保ちつつ油を固化させる改良についても成功し,TAISETの食品への応用範囲も広がっている。ここで,食品に「美味しさ」を付与できる素材として特徴と応用を紹介する。
炭素繊維(Carbon Fiber)がものづくりやエネルギー問題に大きな変革をもたらしている。そして,その炭素繊維を使ったCFRP(炭素繊維強化プラスチック:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は,航空宇宙分野,電気自動車,風力発電,建築分野などで,軽量部材として優れた性能を有する新素材としてますます適用拡大が進んでいる。一方,CFRPは材料が高価で,成形性,加工性などの製造方法が,従来の金属やプラスチックと異なるため,課題が多い。そこで,このCFRPの特徴と課題,さらに今後の発展の予想などについて改めて整理して紹介する。