本研究では,ポリプロピレン樹脂の射出成形によって,製品筐体の樹脂成形と同時に,製品表面に超撥水性を付与する試みを行った。
本論文では,表面凹凸構造によって発現される撥水性において,マイクロメートルオーダーの形状寸法によって,接触角150°を超える超撥水性の可能性について検討した。その結果,凸高さ,凸間ピッチ,凸先端曲率半径の寸法最適化により,ポリプロピレンの射出成形によって製品表面を接触角150°以上とすることが可能であることを確認した。
次に,家庭用樹脂製品に適用するための課題の一つである耐摩耗性の改善について検討した。その結果,凸先端の曲率半径をR5.0 μmとすることで,接触角130°と耐摩耗性とを両立できることを確認した。
これにより,従来の撥水剤の樹脂への添加やコーティングでは実現できなかった接触角130°以上の高い撥水性を付与した家庭用樹脂製品への展開が期待できる。
Auナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴により駆動するAu/半導体プラズモニック光触媒は,これまでの半導体光触媒とは大きく異なる駆動メカニズムをもち,太陽光スペクトルとよくマッチした吸収をもつことから,その有効利用が期待できる新たな光触媒として,最近,活発に研究がなされている。その活性に対するキーパラメーターは,Au粒子のサイズである。本解説では,Au/半導体プラズモニック光触媒による可視光を利用した有機物の物質変換と,水の酸化,還元,さらに完全分解における活性とAu粒子サイズの関係について述べる。
表面プラズモン共鳴励起増強蛍光分光(SPFS)は,金属表面自由電子と伝播光光子の共鳴現象(Surface Plasmon Resonance:SPR)によって誘起された局在増強電場を蛍光励起エネルギーとして利用する蛍光検出技術の一つである。SPFSは,励起エネルギーの局在化とセンサ光学設計により一般的な蛍光検出法(全反射蛍光検出や共焦点蛍光検出など)と比較して大幅にバックグラウンドノイズを抑制することが可能なため,システム性能として高いシグナル/ノイズ比(S/N)を得ることが可能である。本稿では,体外診断システムの検出技術として応用するための種々の検討を通じて,自動化されたSPFS免疫測定システムを開発した。また,前立腺がん診断で汎用されている前立腺特異抗原(PSA)をモデルマーカーとしてSPFS免疫測定システムの性能検証を実施した。
金はナノサイズ化することで光学特性や触媒特性が劇的に変化することが広く知られている。これらは金ナノ結晶の形からも大きな影響を受けるため,異方形態制御を通じた金ナノ材料の機能化が有効とされる。本総説では,ナノワイヤーやナノフラワーといった異方形態金ナノ結晶に焦点を当て,その調製手法や光学特性について解説する。さらに,異方形態金ナノフラワーをアルミナやシリカといった無機酸化物と複合化することでもたらされる,光学特性の変化や安定性の向上についても紹介する。最後に,異方形態金ナノフラワー触媒が示す,アルコール酸化反応に対する高触媒活性能などについても解説する。
金属薄膜で覆われた波長サイズの周期構造をもつプラズモニックチップは伝搬型の格子結合型表面プラズモン共鳴(GC-SPR)に基づいた増強蛍光を供給することができる。まずは蛍光増強度を向上させるために,プラズモニックチップの構造について検討した結果を解説する。そして,プラズモニックチップによる蛍光増強を利用して開発した蛍光検出型の高感度イムノセンサーや高感度蛍光顕微鏡イメージングを紹介する。それぞれの系での蛍光増強度や検出感度について議論し,特徴を解説する。