化粧品分野における粉体の表面処理技術は,製剤中での安定性向上や機能性向上,また感触改良などを目的として利用される。近年,パウダーファンデーションに代表される粉末状化粧品においては,「なめらか」,「しっとり」,「柔らかい」といった感触が好まれ,こうした使用感特徴に応じて処理剤の種類や処理濃度の異なる化粧品用粉体を使い分けている。従来,表面処理による粉体感触は官能評価に頼っており,客観的指標による感触特性の体系化は十分になされていない。本研究では,処理剤の種類,あるいは処理濃度の異なる化粧品用表面処理粉体について,粉体層直接せん断試験で得られる物性指標と,感触との相関性を調査した。その結果,内部摩擦係数μi,せん断付着力τcと「すべり性」,「しっとり感」との間にそれぞれ一定の相関があることを確認し,さらには圧密粉体の応力緩和率σsrrと「柔らかさ」との間にも相関性を見いだしたので報告する。
透明なアクリル樹脂板を試験片材料として取り上げ,表面の凹凸形状が透過率,ヘーズおよび光沢度に与える影響を実験的に調査した。アクリル樹脂板の表面には球状のガラスビーズを用いたショットブラスト加工により,その投射圧力を変化させて種々の表面粗さを片面および両面にそれぞれ付与した。表面性状の特徴を三次元表面性状パラメータにより総合的に評価した。その結果,算術平均高さの値が増加するに従い,ヘーズの値は増加し,光沢度の値は減少した。また,ショットブラスト加工を片面および両面に施した試験片間で,全光線透過率の低下の傾向とヘーズの増加の傾向が異なっていた。さらに,ショットブラスト加工面からの測定と未加工面からの測定はヘーズの値にほぼ影響を及ぼさないが,光沢度の値に大きく影響することを実験により示した。すなわち,光沢度の値を変えずにヘーズの値のみを調整可能な加工方法を提示した。
われわれは,最近,分散重合で得られたポリスチレン粒子(PS)をポリビニルピロリドン(PVP)水溶液中でマグネチックスターラーを用いて単に撹拌するだけで,ミクロンサイズの真球状PS粒子が異形化するという現象を見いだした。得られた高分子微粒子はこれまで膜伸縮法などで作製されている,紡錘状の異形粒子と違い,円柱に近いシリンダー状の形状に変形していた。さまざまな撹拌法や用いる容器やスターラー形状の種類の検討により,この変形は,層流による粒子への剪断応力が原因であると示唆された。しかしながら,剪断による変形であるとしても,室温で撹拌しているためガラス転移点が100℃付近のポリスチレンが変形するには何らかにより可塑化される必要がある。実際,PS粒子からPSフィルムを作製し,PVP水溶液に浸漬後,その引っ張り強度を測定したところ,乾燥状態や純水で浸漬した系よりも明らかにその強度が低下したことから,分散安定剤として用いたPVPによるPSの可塑化が明らかになった。さらに,得られたシリンダー状粒子を粒子界面活性剤としてデカン/水のピッカリングエマルションの作製を行った。シリンダー状粒子を用いて作製したピッカリングエマルションは,真球状粒子を用いた場合より強い安定性を有しており,1年以上放置しても,乳化状態を保持していた。
本稿では,本格普及期を迎えようとするxEV(電動車)事業に着目し,そこでのイノベーションが自動車産業の構造変化にどのように寄与しうるのかという点を考察する。主要な論点は,xEVの市場性は唯一国際競争力を有するテスラの成長と官製市場とも言える中国市場の成長に委ねられていることである。そして技術革新が取引構造に与える影響としては,xEVの電動化,知能化領域が高度に専門化され寡占体制下にあることを所与とし,メガ・サプライヤーのプレゼンスが相対的に高まり,従来とは異なるポジションに到達していることを指摘する。