重金属を含む従来の無機顔料の使用が制限されつつある状況の中,無害な元素のみから構成され,色彩に優れた新しい環境調和型の無機顔料の開発が望まれているが,その開発には従来にない結晶構造および構成元素の選択が重要である。本稿では,筆者らが行ってきた「イオン伝導性固体に関する研究」で培った知見に基づき選択した結晶構造と構成元素からなる新規酸化物系無機顔料に関する最近の成果について紹介する。
複合無機酸化物顔料のブルーは従来コバルト原料が主だが,今回のイットリウム(Y),インジウム(In),マンガン(Mn)を原料とした顔料は,きらめくような輝きのあるまったく新しい青色顔料である。しかもコバルト系顔料と違い,近赤外線領域でも太陽光の高反射率を維持する。
本稿ではこの新しい青色顔料の諸物性の特徴,太陽光反射率特性および耐候性などについてのデータ等を紹介する。
本稿では,有機色材の発色性にかかわる量子化学的物性値を量子化学計算により精度良く予測する方法について示した。最もよく使われる密度汎関数法の特徴を,ほかの量子化学計算手法と比較した。精度が高い量子化学計算の計算条件(汎関数,基底,溶媒効果)を複数の色材の種類や量子化学的物性値に関して示した。ベンチマークを参照し,精度が高い計算条件を選択する方法についても示した。量子化学計算ソフトウエアを導入する際に考慮すべき注意点についても述べた。
炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)の混合溶媒中におけるフォトレジスト粒子の分散性ならびにITO基板に対する吸脱着性を評価した。また,ITO基板へのフォトレジスト粒子の再付着を防止する目的で,プルロニック系界面活性剤(F-68)の添加効果を検証した。フォトレジスト分散液(EC/PC混合溶媒)に水を添加すると,その添加量にともなって分散液は懸濁した。水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)測定の結果より,水の添加量が増加すると,ITO基板に対するフォトレジスト粒子の残存量も増大することがわかった。一方,F-68を添加すると,水量を増加させても,フォトレジスト分散液は透明性を有し,ITO基板に対するフォトレジスト粒子の残存量も著しく減少した。水の添加にともない,ITO基板およびフォトレジスト粒子の表面に吸着したポリエチレンオキシド鎖間の立体斥力が強まったことに起因していると考えられる。
自動車用鋼材はその製造工程から廃棄工程まで考慮したLCAの観点から,環境対応車へ適用することで効果的に省エネルギー,CO2排出削減に貢献できると考えられる。この目的を達成するためには,車体の衝突安全性を確保しつつ高強度化による薄肉化を実現するための適切な材料,工法および構造が重要となる。ここでは,鋼板の強化方法,成形技術と成形性に優れた鋼材の特徴,およびこれらを考慮した自動車部位ごとに適した各種「ハイテン」について紹介する。