色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
Print ISSN : 0010-180X
ISSN-L : 0010-180X
92 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
―小特集 インクジェットの市場展開を支える材料技術の進化―
解説
  • 清都 育郎
    2019 年 92 巻 6 号 p. 158-164
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    われわれは次世代ディスプレイとして期待されている量子ドット色変換(QDCC)層搭載ディスプレイの重要部材であるQDCC層用インクジェットインクの開発を行っている。これまでに熱硬化型インク(ソルベント含有)とUV硬化型インク(ソルベント非含有)の基本設計を完了し,両者の光学物性,インクジェット吐出性を比較した。またバンク付きガラス基板上にインクジェット塗布によってQDCC層を作製した。熱硬化型インクのほうが同じQDCC層膜厚でUV硬化型インクよりも高い光変換効率が得られるが,QDCC層製造時の生産性や膜平滑性はUV硬化型インクのほうが優れることがわかった。また,UV硬化型インクを使用して作製したQDCC層は,市販のOLEDテレビに匹敵する色再現範囲を有することがわかった。

解説
  • 宮島 佳孝
    2019 年 92 巻 6 号 p. 165-170
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    テキスタイルの分野において,急速にデジタル捺染が存在感を増している。理由として,アナログ捺染工程の課題をデジタル捺染により解決できることに加え,ヘッドやインクといったコア技術の継続的な進化により,捺染プリンターの性能が飛躍的に向上した結果,高級ブランドのみならず,ファストファッション業界が捺染プリンターを生産機として利用し始めたことが挙げられる。しかし,捺染プリンターを用いて印捺を行う工程は,数ある工程の一つにすぎず,印捺前後の工程が適切に行われないと,高品質の印捺物を安定して得ることはできない。そこで,本解説論文では,デジタル捺染におけるさまざまな工程の中から,デジタル捺染に特有の工程である前処理に焦点を当て,前処理の重要性について解説する。

  • 蟹江 澄志
    2019 年 92 巻 6 号 p. 171-176
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,透明導電性金属酸化物(TCO)薄膜法として,高品位TCOナノ粒子からなるナノインクを用いたインク塗布法に着目した。ここで用いる高品位低抵抗TCOナノ粒子の調製法としては,液相からの粒子の均一核生成・粒子成長を鍵とする液相法を用いた。液相法を用いれば,従来のTCOナノ粒子に比べ,数桁程度の抵抗値の低減が期待できる。具体的なTCOとしては,スズドープ酸化インジウム(ITO),ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO),およびアンチモンドープ酸化スズ(ATO)とした。その結果,得られたTCOナノ粒子は,期待したとおり,従来法により得られるナノ粒子に比べ,きわめて低い抵抗値を示した。これらをインク化,熱処理後に,得られたTCO薄膜の光学特性を調べたところ,きわめて高い可視光透明性の付与が可能であることが明らかとなった。

総説
  • 永井 希世文
    2019 年 92 巻 6 号 p. 177-180
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    インクジェット色材の変遷について振り返ってみると,黎明期では,既存の染料の使いこなしから始まった。このため,インクジェット専用紙が開発されることになった。発展期では普通紙用,新たに開発された写真用紙用の課題に対して,新規な染料や顔料分散体の開発がされてきた。

    現在に至る展開期では,種々のメディアに対し,樹脂などの添加との組み合わせなどで機能向上が図られるようになってきた。今日,これを支える循環機構をもった高密度ヘッドなど,システム側も大きく進化してきている。

    デジタル産業革命において,インクジェット技術は今後も重要な役割を果たすと考える。そして,種々の分野のアプリケーションの要求にあった色材の提供が肝要と考える。

研究論文
  • 半澤 将希, 大日向 秀収, 川野 伸一, 赤松 允顕, 酒井 健一, 酒井 秀樹
    2019 年 92 巻 6 号 p. 181-185
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    酸化インジウムスズ(ITO)基板上に製膜したフォトレジストの剥離機構を水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)測定により評価した。剥離剤としては,炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)の混合溶媒を用い,そこに水とプルロニック系界面活性剤(F-68)を添加した場合の効果を検証した。フォトレジスト膜は純水にさらされても剥離しなかったが,EC/PC混合溶媒にさらされると剥離した。EC/PC混合溶媒中に水を添加すると,フォトレジスト膜は膨潤したが,水の濃度が高くなるとITO基板からの剥離は起こりづらくなった。水の濃度が高くなるほど,フォトレジストに対しての貧溶媒化が進むことに起因している。F-68を系に共存させると,水の濃度が中程度(50 wt%)のときに,剥離率の顕著な向上が確認された。F-68はフォトレジスト膜の膨潤を助長すると同時に,バルク溶液中への分散を促進していると考えられる。以上のように本研究では,EC/PC混合溶媒とそこに水とF-68を共存させた溶液では異なる機構でフォトレジスト膜の剥離が進んでいることを見いだした。

feedback
Top