江戸時代に制作された浮世絵や中世ヨーロッパにおいて描かれた彩飾写本などには色とりどりの顔料や染料などの色材が使用されている。本稿ではそれら顔料などの色材を蛍光Ⅹ線分析およびラマン分光分析による非破壊・非接触分析を行い,用いられた色材の特定や得られた知見などを含めて紹介する。
近年,インクジェット方式を用いた大型の商業プリンターや,布帛やフィルムへのプリントを目的としたプリンターの開発が活発に行われるようになっている。このような分野でメディア上に高品質な画像を形成するために,インクに対してさまざまな特性が要求されるようになってきた。インクは化学物質から構成されており,画像形成の目的に応じて種々のインクが存在する。それらの特徴は大きく異なる。
本稿においてはインクジェット技術に用いられるインクの分類と特徴,インクの構成材料と設計,および各種インクについて解説する。また最新の技術動向についても紹介する。
なおインクジェットインクに関しては,書籍「日本画像学会編 シリーズ デジタルプリンタ技術 インクジェット 改訂版」の第4章「インク技術とプリント物の保存性」に詳細に解説されている。本稿で説明しきれない部分については,そちらを参考にしていただけると幸いである1)。
陶磁器用多成分系アルカリホウケイ酸無鉛フリットとヘマタイトを混合焼成して得られる赤絵具焼成体の微細構造が,色彩に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。XRD測定,顕微鏡観察,元素分析およびメスバウアー分光測定の結果から,赤絵具を焼成すると焼成温度に依存して色彩が変化すると同時に,ヘマタイトの一部がガラス中に4配位のFe3+として溶解しヘマタイトの粒子径が増大する,いわゆるOstwald成長が進行することを確認した。一連の解析結果から,試料表面が平滑化すること,ヘマタイトが溶解し粒子数が減少することで低温域で彩度が向上するが,ヘマタイトの粒成長と過剰な溶解により,高温域で彩度が低下することを明らかにした。さらに,ヘマタイトが完全に溶解しイオン化するような高温域では,焼成体の着色機構がヘマタイト粒子の光吸収からガラス中の鉄イオンによる光吸収に変化することを明らかにした。
VUCAの時代と言われている激しい経営環境の変化の中で,今注目されているのが“デザイン経営”である。人を中心に考え,価値を創造していくという,デザインが本来もっている考え方や方法を経営に応用した経営手法である。“デザイン経営”とはそもそも何なのか,どんな成果があるのか,誰がそれを担うのか,デザイン経営が普及していくうえでの課題も含めてまとめてみたい。
有機色素分子を無機固体媒体中に取り込むことで,その光機能を付与した固体材料を作製することができる。この方法により作製した有機-無機複合材料の分光特性は,色素分子の周囲の化学的環境により大きく変化する。色素分子と媒体との相互作用を考慮しつつ,その特性を制御し目的の機能を引き出すことが必須となる。色素のフォトクロミック特性,光増感特性,発光特性などを利用する場合の例を挙げ,無機媒体中の色素分子の分子構造および電子状態に起因する分光特性について解説する。また,外部因子により分光特性が変化する有機色素のセンシング機能についても紹介する。