COVID-19などのバイオエアロゾルを処理するためのフィルターレス多段エルボ型エアロゾル除去システムを開発した。本システムではその内部に配置した光触媒へ高速気流に乗せたエアロゾル粒子を慣性力および乱流拡散により強制的に衝突させ,そこに含まれるウイルスを確実に光触媒処理する。バイオエアロゾルの主成分は水であることから光触媒に衝突後直ちに蒸発してウイルスだけがその表面上に取り残され,光触媒酸化作用により無機化される。このシステムを4.5 m3のエアロゾルチャンバーで運用したところ,1~10 μmのエアロゾルは15分以内に99.8%除去され続けたことから,本システムの使用により感染リスクの低減が期待される。
光触媒は抗菌・抗ウイルス材料として広く用いられている。TiO2などの従来の光触媒はさまざまな微生物を無差別に不活化することができるため,有害な微生物を排除する点で有効であった。一方で,光触媒を用いて特定の微生物を不活化することができれば,さらに広い分野で光触媒を応用していくことができる。本解説では,ユニークな例である選択的な微生物の不活化が観察された光触媒について取り上げる。ウイルスの代替であるファージのタンパク質に着目し,モデルタンパク質との比較を行うことで解明した選択的な微生物の不活化のメカニズムの詳細および具体的な解析方法について解説した。
近年のエネルギー枯渇問題の解決策として光触媒を用いた水素生成反応が注目されている。しかしながら,その効率は未だ低く,実用化はされていない。われわれは高効率の水素生成反応を見据えた新たな展開として,植物の光合成から学んだ光触媒の設計を行った。本総説ではとくに,光化学系I複合体を用いた水素生成反応,CdS/SiC系複合光触媒を用いた光改質反応,CdWO4/CdS/SiC複合光触媒を用いた水分解反応について紹介する。
金属および半導体からなるナノハイブリッド光触媒の開発は,ソーラー物質変換プロセスを実現するための鍵を握っている。一般に,ナノハイブリッド光触媒の高性能化を図るためには,成分間の精密な界面制御により,それらの協奏作用を効果的に発現させる必要がある。本総説では,ナノハイブリッド光触媒における原子レベルで整合した界面の重要性に焦点を当てる。はじめに,ヘテロエピタキシャル接合(HEPI)を有するナノハイブリッド結晶の合成法について述べる。次に,光触媒反応における一連の光物理化学過程に対してHEPI接合が与える影響について論じる。続いて,HEPI接合ナノハイブリッド光触媒によるソーラー物質変換の例を,われわれの研究を中心に紹介する。最後に,結論と将来の展望について要約する。
全方向に光を放射する照明光源の全光束測定では,これまで,白熱電球を用いた高品質な標準電球が標準光源として利用されてきた。しかし,LED照明の普及にともなう白熱電球の生産終了の影響が標準電球にもおよび,その入手は難しくなってきている。そこで,われわれは標準電球を代替する標準光源の実現を目指し,LEDを用いた可視波長全域および全方向に光を放射する新しい標準LED(全方向形標準LED)の試作開発を行った。本稿では,開発した全方向形標準LEDの設計指針,およびその特性評価結果を報告する。
セイコーエプソンは独自のプリントヘッド技術を商業・産業用途に最適設計し,テキスタイル用途で高生産性を訴求する昇華転写プリンターを開発した。
テキスタイル市場では小ロット短納期要求が高まるにつれて,デジタル印刷化が急速に拡大しており,近消費地・近生産による分散印刷への投資が進んでいる。また,素材も化学繊維を使い機能性を重視した衣類や用途が拡大している。これらの市場環境変化によって,高生産で安定稼働する昇華転写プリンターが求められている。
エプソンが開発した昇華転写プリンターSC-F10050 / SC-F10050Hは,PrecisionCore マイクロTFPプリントヘッドを搭載し高生産性とともに安定画質と安定稼働を維持し短納期要求に耐えうる高い基本性能を有している。