色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
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96 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究論文
  • 福田 輝幸, 芦沢 健, 國井 智史, 仲井 茂夫
    2023 年 96 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    包装容器印刷部材としてセルロース素材の見直しが進んでいる。紙に代表されるセルロース系素材においては画像濃度と耐擦性の両立が課題である。本検討では分子間力のうち,水の影響を受けにくいCH/π水素結合力に着目し,セルロース骨格に対しCH/π水素結合力を発揮する直接染料構造に着目した。耐擦性は直接染料をあらかじめ印刷用紙に付与することで改善し,高分子分散剤に直接染料構造を組み込むことでさらに改善した。また耐擦性に優れる直接染料構造として,芳香族の求電子置換反応を参考に①長い共役二重結合骨格を持ち,②電子供与性の置換基を多く備え,③分子内の置換機定数の総和が低く,④構造が左右非対称であり,左右での置換基定数の差が大きいことの4点を見いだした。この4条件を満たすDirect Black 22を高分子分散剤に導入した顔料分散体は,高い印刷濃度と優れた耐擦性を両立した。

皮膜形成材講座(第10講)
  • 末藤 順平
    2023 年 96 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル 認証あり

    塗料の原材料の一つである添加剤は,塗料の欠陥現象を防止し,高機能で高意匠性の塗膜を得るための必要不可欠な材料である。塗料原料としての添加剤は塗膜形成助要素であり,添加される量は極微量(~数%)ではあるが,塗料の性能や塗装適性等を左右する重要な原材料である。本稿では,添加剤の中でも塗料製造過程から塗膜形成過程で重要な役割を果たすチクソ剤や分散剤,表面調整剤(レベリング剤,消泡剤など)の種類や作用を解説し,それらの使い方を紹介する。

最新インクジェット技術講座(第9講)
  • 永井 希世文, 佐々木 隆文
    2023 年 96 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル 認証あり

    近年,3Dプリンターの金属造形は,多ノズル化により高速造形が可能となるバインダージェット方式が登場し,主として海外にて製造工程へ活発に適用されている。本稿では,インクジェットを用いた金属造形技術を解説し,各メーカーでの各方式の特徴を示す。この技術は,まだ発展途上であり,既存の加工技術に対してバインダージェット方式で取り組むべき課題を提起する。日本の製造業の強みを活かし,匠とデジタル技術の融合など,今後の開発の一助となることを期待する。

塗装技術講座 自動車業界の生産技術(第1~2講)
  • 奴間 伸茂
    2023 年 96 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル 認証あり

    わが国の自動車業界における塗装生産技術の発展の歴史を明らかにした。(一社)日本塗装技術協会の会誌「塗装工学」の創刊号(1966年)から最新号(2022年)に投稿された技術情報から自動車の塗装生産技術に関するものを550件選択した。これらの情報を「塗装機・塗装システムに関する技術情報」,「水性塗料・水性塗装に関する技術情報」,「電着塗装に関する技術情報」,「粉体塗料・粉体塗装に関する技術情報」,「IoT,DXなど最新の技術情報」に分類して解説した。塗装生産技術の発展の歴史を学び,企業および業界の枠を超えて協業することによりカーボンニュートラル達成等の困難な課題を達成することができる。

  • 都築 正世
    2023 年 96 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル 認証あり

    本田技研工業株式会社は,長年,バイクの「顔」である燃料タンクの高外観塗装に取り組んできた。なかでも1988年に他社に先駆けて浜松製作所に導入した燃料タンク高外観塗装システムの初号機は,燃料タンクの連続回転塗装に熱硬化併用紫外線硬化型塗料を用いることで一度の塗装で塗料のタレ限界を超えた厚膜塗装を可能にする画期的なものであった。その後,製品仕様多様化にともない外観品質に,タンク形状によるレベル差が確認され,さらに初号機の特許も切れ,他社への優位性が失われていた。2008年国内拠点集約にともなう熊本製作所内への新工場建設に際し,初号機の課題に対する要因解析結果から,①最適塗装方法として三面停止による形状追従性を高めたタレ限界コントロールシステム,および②最適塗膜硬化方法として乾燥炉のゾーン別環境制御による塗膜収縮コントロールシステムの開発に取り組み,世界トップレベルの燃料タンク高外観塗装を達成した。

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