色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
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97 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
―小特集 天然色素・バイオ由来色素―
技術論文
  • 谷口 秀樹, 安友 政登, 上野 竜太, 秋吉 貴太, 長尾 浩司, 川野 光
    2024 年 97 巻 9 号 p. 260-266
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    日本の藍で染めた青は「ジャパンブルー」と呼ばれ,伝統的な価値と高い意匠性をもっている。一般的な藍染めはアルカリ性水溶液で行われているが,アルマイトを使用した場合,アルマイト表面がアルカリにより分解されるため,同様の条件で染色することは困難であった。本研究では,インジゴホワイトと有機溶媒で調製した染色液を用いて,インジゴによるアルマイト表面の新規染色プロセスを開発することに成功した。アルマイトの細孔内に導入されたインジゴホワイトは,空気酸化によりインジゴに変化し,ジャパンブルーを生成した。最後に生成されたインジゴは細孔封孔処理により固定化された。

研究論文
  • 上田 あすか, 河野 芳海, 柴田 雅史, 冨田 靖正, 渡部 綾, 福原 長寿
    2024 年 97 巻 9 号 p. 267-275
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    銅クロロフィリンは天然色素クロロフィルから誘導される緑色色素であり,人体への安全性は優れているが安定性の改善が求められる。銅クロロフィリンをハイドロタルサイトの層間に挿入することで安定性は向上するが,層間で色素分子が凝集するため彩度が低下する。ハイドロタルサイトは,アニオン交換能をもつため,銅クロロフィリンとアニオン性界面活性剤を共挿入させることで,銅クロロフィリン分子を分散させ彩度の改善を試みた。得られた複合体が彩度と安定性が両立しているか評価した。アルキル鎖に複数の二重結合をもつ界面活性剤で修飾した層間に銅クロロフィリンを導入することで,鮮やかな色を得ることに成功した。また,銅クロロフィリンがハイドロタルサイト層間に挿入されることにより,水やエタノールへの色素分子の溶出が効果的に抑制された。この複合体は彩度と安定性に優れることから,環境に優しい天然色素ベースの着色剤としての用途が見込まれる。

解説
  • 今井 康行, 鈴木 正久
    2024 年 97 巻 9 号 p. 276-280
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル 認証あり

    当社DIC㈱の天然色素事業は,食用藍藻であるスピルリナ末とスピルリナから抽出したスピルリナ青色素の食品色素を中心に製造販売を展開している。当社は,1977年に世界で初めてスピルリナの工業的規模での生産を開始。スピルリナ末は濃い緑色であり,古くからお茶の着色に利用され,耐熱性は比較的高く,近年,ほかの食品への広がりを見せている。スピルリナ青色素は天然由来では貴重な青色素であり,着色用の食品添加物として日本では古くから利用されているが,近年,EU・米国などの海外でも急拡大している。青色はフィコシアニンと呼ばれるタンパク質色素のため,熱,光,アルコール,低pHに弱い。しかしながら,高濃度の糖溶液により熱安定性向上,抗酸化剤併用で光安定性向上,他タンパク質との共用でpH安定性向上が確認できている。天然色素は食品において市場が増大しているが,食品以外への利用拡大については安定性とコストが重要な課題となっている。

  • 角 寿子
    2024 年 97 巻 9 号 p. 281-285
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル 認証あり

    おもな五種類のインジゴ含有植物が世界各地で栽培されており,それぞれの地域で製造されたインジゴ染料が普及している。インジゴ染料には,葉を堆肥化した“すくも藍”と,葉を水に浸漬して成分を抽出した“沈澱藍”があり,それぞれに発酵過程がある。容器にインジゴ染料を仕込み,染料の微生物に適した環境が整うと発酵が始まる。発酵液中の不溶性のインジゴを可溶化するインジゴ還元は,嫌気性アルカリ条件と液温25~30℃の下,微生物叢の作用によって起きる。染料のインジゴ含有量,染料と発酵液の微生物叢,繊維の分析を行った。インジゴ染料と発酵液の微生物の種類は大きく違い,発酵液の管理方法が微生物の種類と変化,染色性能に影響した。

  • 河野 芳海
    2024 年 97 巻 9 号 p. 286-290
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル 認証あり

    人体や環境への安全性に優れる天然色素は,安定性の不足から用途が限定される場面も多い。層状構造や細孔構造を持つ無機材料に天然色素を複合化し,さらに天然色素の性質に応じて種々の手段を講じることで,その安定性を向上させ長期間の色の保持を可能とする試みを紹介する。

  • 清水 雅士, 土坂 享成, 駒 大輔, 高山 明成
    2024 年 97 巻 9 号 p. 291-294
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル 認証あり

    インジゴ染料はアパレル業界でおもにジーンズの染料として利用される青色染料である。インジゴ(CAS 482-89-3)はおもに化石資源から作られるアニリンを原料に製造されている。アニリンは人体や環境に有害であることが知られており,アパレル業界では,有害な物質を使用せずにインジゴ染料を製造する方法が求められている。本稿ではアニリンを使用する従来の化学合成とは異なり,アニリンを使用しない微生物発酵によるインジゴ染料の製造について示す。

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