陰イオンは,生体内反応のみならず環境汚染にかかわる重要な化学種である。これまで,陰イオンを選択的かつ好感度で認識するレセプター分子の合成と評価が進められてきた。一方,水界面という特異な反応場を用いることで,陰イオンレセプターの機能が促進されることがわかってきた。本総説では,水界面を利用した陰イオン認識の展開について,水界面の有用性や陰イオンレセプターの設計について,筆者の最近の研究も含めて紹介する。
多くのポリウレタンエラストマーの原料に石油材料が使われ,焼却による処理が行われているため環境への負荷が懸念されている。本研究では,天然ゴムの末端にヒドロキシ基を導入し,種々のジイソシアネートを重付加させることで環境低負荷である新規なポリウレタンエラストマーの合成を行い,諸性質について検討を行ったところ,熱安定性や機械的特性に優れていることがわかった。また,得られたポリウレタンエラストマーに対して,光増感剤を用いてキセノンランプによる光分解を行うことで,分子鎖の切断によって低分子量化し,種々の有機溶媒に可溶となった。これらのことから,得られたポリウレタンエラストマーは環境に対し,望ましい材料であることがわかった。
屋外暴露における降りかかり汚染由来の塗膜劣化を再現するため,粘土鉱物と無機塩を混合したペーストを試験パネルに塗布し,加温乾燥する負荷試験方法を考案した。この汚染負荷試験とキセノンアークランプ式促進耐候性試験機(XWM)を組み合わせることで,塗膜劣化の暴露再現性が飛躍的に向上することを見いだした。汚染負荷を行うことで屋外暴露での塗膜の酸加水分解が再現されるため,XWMの運転条件はISO/JISなどで標準化された条件とは異なり,水噴霧を行わない光照射のみを主体とし,光酸化反応を補填するために過酸化水素水を適宜噴霧することが望ましいと考えられる。
本講座では,ファンデーション塗布肌の光学シミュレーションについて説明する。塗布による容貌の変化とは,素肌から塗布したことにより生じる光挙動の変化に起因するため,塗布肌での光挙動を調べることが主な目的となる。塗布肌のように計算対象が大きい場合は,光挙動を電磁波として計算するよりも,エネルギー移動として計算するKubelka-Munk理論やモンテカルロ法が適している。本講座では,これらの方法について解説を行う。
ろ過は古くからさまざまな分野に活用されている歴史の長い技術である。広義でいえば粉体や気体の捕集・分離もろ過に当たるが,顔料製造におけるろ過工程は,主にフィルタープレス設備を用いる工程を指すことが多く,すでに成熟した工程でもある。そのため作業フローの一つとしてのみ認識されていることも多く,ろ過工程について詳しく触れる機会は多くないと思われる。本篇では改めてろ過の概要や種類,要点などを紹介し見つめ直す機会としたい。