四国医学雑誌
Online ISSN : 2758-3279
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最新号
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  • 上村 浩一
    原稿種別: 特集
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 141-146
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     更年期を迎えると,卵巣機能の低下に伴い,エストロゲンの分泌量が急激に低下し,月経不順をはじめ,さまざまな更年期症状が出現する。さらに,平均寿命の延伸に伴い,閉経後の期間が延びており,エストロゲン欠乏が要因となる骨粗鬆症や動脈硬化,認知症や女性のがん罹患の第一位である乳がんの予防や管理が重要となる。人生をいきいきと暮らすためには,趣味の活動やボランティア活動などの社会参加も大切である。疾病予防や健康管理に留意するとともに,多くの人と接して,会話を楽しみ,充実した生活を過ごすことが,QOLの維持・向上,さらには健康寿命の延伸につながる。

  • 吉田 あつ子
    原稿種別: 特集
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 147-152
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     産婦人科において,近年「プレコンセプションケア」が着目されている。世界保健機関(World Health Organization:WHO)はプレコンセプションケアについて「妊娠する前の女性やカップルに生物医学的,行動学的,社会的な健康介入を行うこと」と定義しており,特に女性におけるその目的は「健康状態を改善し,母子の健康状態の悪化につながる行動や個人的・環境的要因を減らすこと」である1)。そして,究極の目的は「短期的にも長期的にも母子の健康を改善すること」である。女性にとって,妊娠・出産は生涯における一大イベントである。しかし,そもそも妊娠できるのか,妊娠しても安全に妊娠生活や分娩を迎えられるのか,産後も健康を害することなく過ごせるのか,など懸念されることは多々ある。いざ妊娠したいと思ってから,あるいは妊娠してから,その時すぐに解決できない問題も少なからずある。また,そもそも現在妊娠を希望しない場合も,妊娠を希望する機会に備えた生活を行うことは,より健康な体づくりにつながる。月経が始まる思春期から月経を終える更年期まで,幅広い世代が妊娠・出産を意識して自身の体と向き合い,今から始める体づくりがプレコンセプションケアである(図1)。

     女性が自身の健康と向き合った際,身近な問題として「肥満」がある。肥満について,生活習慣病として将来的に問題を有することは広く認識されているが,特に若年女性においては,目下の問題点は体型や見た目についてのみと誤解していることもまれではない。しかし,肥満は周産期学・女性医学的にも問題を有しており,妊娠を考える女性や妊婦,そしてその児の健康や予後に影響を与えうるため,正しい知識の共有が求められる。本稿では女性の肥満について,妊娠・出産を扱う産婦人科医の視点より,プレコンセプションケアを考察する。

     なお,本稿において開示すべき利益相反はない。

  • 中本 真理子
    原稿種別: 特集
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 153-158
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

    疫学研究とは地域社会や特定の人間集団を対象として,病気の発症状況などの健康に関する事柄の頻度や分布を調査し,その要因を明らかにする医学研究である1,2)。 疫学研究から得られた情報は疾病予防のための戦略を計画・評価することや,疾病発症後の患者の治療計画などに利活用される。これまでにも,疫学研究に基づき食事と健康との関連について多数の報告がなされてきた。そのひとつに,食事が女性の健康に及ぼす影響に関するものがある。特に女性は,一生を通じて女性ホルモンの影響をうけ,ライフステージに応じて罹患しやすい疾病や症状が異なっている。そこで本稿ではこれまでに報告されている疫学研究の知見をもとに,食事の中でも植物エストロゲンとして知られるイソフラボンやそれらを多く含む大豆製品の摂取と健康についての知見を紹介する。

  • 長尾 紀子
    原稿種別: 特集
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 159-164
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     現在の日本は中高年の肥満や生活習慣病が増大する一方で高齢者や若年女子に新たな低栄養問題が増えている。それぞれ食が基本であることに間違いはない。そして妊娠時,育児,家庭の食が女性と切り離せないことは明らかである。食を通して健康に携わった経過について述べたい。

  • 埴淵 昌毅
    原稿種別: 総説
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 165-172
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     間質性肺炎(interstitial lung disease : ILD)は肺癌発症のリスク因子であり,特に特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis : IPF)における肺癌合併率は高率である1)。ILDは自然経過で年間5-15%程度に急性増悪をきたす2)ことが知られているが,ILD合併肺癌では抗癌治療に関連して発症する致死的な間質性肺炎急性増悪(acute exacerbation of interstitial lung disease : AE-ILD)が重大な問題であり,治療上の大きな制約となっている。

     最近,血管新生阻害薬,ドライバー遺伝子変異に対する阻害薬,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitors : ICIs)などの新規治療薬の登場により進行肺癌に対する薬物療法は大きく変貌し,著しい予後の改善が認められている。一方で,AE-ILD発症の懸念から,ILD合併例は肺癌を対象とした臨床試験から除外されることが多く,その治療法は確立されていない。また,ILD非合併肺癌を対象として得られたエビデンスに基づいた治療が,ILD合併肺癌の治療として妥当なのか,ILD合併肺癌に対する化学療法が予後延長に寄与するのか,などについては十分には明らかになっていない。

     以上のように,ILD合併肺癌に対する治療法の確立は“unmet medical needs”といえるが,最近本邦から複数の前向き臨床試験の結果が報告され,エビデンスが集積されつつある。本稿では,ILD合併肺癌に対する最新の薬物療法戦略について,われわれの成績も含めて概説する。

  • ―腎内レニン・アンジオテンシン系活性化―
    漆原 真樹
    原稿種別: 総説
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 173-178
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     ライフサイクルをささえる小児医療,成育医療は胎児,新生児,小児,思春期を経て次世代を生み出す基盤となる。胎児期,新生児期に診断された先天性疾患について早期から対応し,小児期に発症した慢性疾患も思春期,成人へと安全に成育させていくことが重要である。これからの小児科はこのような医療を他科と連携して継続,包括的に行っていく必要がある。

     全身の血圧や体液量を調節する最も重要な制御機構であるレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system : RAS)が腎臓で独立して機能していることはこれまで多くの研究で報告されてきた1)。腎臓の血流動態における腎臓内のRASの役割や糸球体においてもアンジオテンシンII刺激による培養メサンギウム細胞や動物モデルでの細胞外基質の増加や硬化機序が明らかにされてきた1)。そのあとも腎臓における局所RASの活性は生体の恒常性維持だけでなく,高血圧や腎障害などの多彩な病態機序にも関与していることが分かってきている。また腎臓の発生にはRASが必須の要素であり1),その発育発達の大きな要素となっている。RASはこれらの機能を担うためにライフサイクルをささえる重要な制御機構である。

  • 赤川 貢
    原稿種別: 総説
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 179-184
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     Pyrroloquinoline quinone(PQQ)は,細菌のメタノール脱水素酵素から同定された酸化還元補酵素であり,さまざまな食品中や,PQQの生合成能を持たないヒト組織中からも微量に検出されている。PQQ欠乏餌で飼育されたマウスが成長遅延や皮膚の脆弱化,繁殖能力の低下等の欠乏症状を呈することが報告されており,PQQはビタミンである可能性が示唆されている。しかし,哺乳動物においてPQQを補酵素として要求する酵素は未同定であり,PQQは未だビタミンとして認定されていない。本稿では,PQQの生化学的性質,生理機能性およびその作用機構等について概説する。

  • 上白川 沙織, 石飛 咲良, 内田 莉子, 大久保 佳音, 松下 恭子
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 185-196
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     【目的】本研究の目的は,国内文献の調査から,在宅で暮らす聴覚障害者の災害時の課題と対策を明らかにすること,各都道府県で作成されている聴覚障害者向けの防災ガイドラインの現状を聴覚障害者支援の視点から分析することである。【方法】国内文献とガイドラインを在宅で暮らす聴覚障害者の災害時の課題と対策に沿って分析した。【結果】聴覚障害者は,災害時に,コミュニケーションにおける困難や障害に伴う情報不足を感じていた。また,防災への一般的な備えも不十分であった。また,関連するガイドラインがあるのは13都道府県のみであり,特にライフラインの利用制限による影響については認識が不足していた。【考察】聴覚障害支援における防災対策は地域差がみられ,聴覚障害者が抱える課題に対応したガイドラインの作成と普及が望まれる。

  • 香川 加奈, 葉久 真理, 佐藤 浩子, 森内 洋美
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 197-204
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

    目的:産後2~3か月の母親がインターネット上の育児情報掲示板を通してポジティブな感情を抱いた経験を明らかにし,子育て支援のあり方を検討する。

    方法:地方都市にある総合周産期母子医療センターにて正期産で出産した心身共に健康な産後2~3か月の女性14名に半構造化面接調査を実施し質的記述的に分析した。

    結果:母親はインターネット上の育児情報掲示板を通して【子どもの状態に対する不安や心配が払拭された】,【何気なく見た書き込みから子育ての余裕が得られた】,【不確かな産後の状態と向き合う自分が励まされた】というポジティブな感情を抱いた経験をしていた。

    結論:母親は育児情報掲示板を通してさまざまな情報を得てポジティブな感情を抱いた経験をしていた。一方で,育児情報掲示板は情報の信憑性が担保されていないため,専門職による情報提供サイトを併用することを啓発することが重要であり,公的機関が主体の子育て支援全国情報ネットワークの構築が望まれる。

  • 鳳﨑 茉梨亜, 葉久 真理, 竹林 桂子, 佐藤 浩子, 森内 洋美
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 205-214
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

    目的:生後2~3か月の児を育てる父親が,日々の生活の中で悩んだ状況を明らかにする。

    方法:生後2~3か月の児を育てる男性を対象に,電話による半構造化面接調査を実施し,質的記述的に分析した。

    結果:参加者は14名であった。生後2~3か月の児を育てる父親が日々の生活の中で悩んだ状況は,【日々変化する子どもへの対応】,【産後の妻との関係】,【父親になって変化した生活】であった。

    結論:本研究結果で示された父親が悩む具体的な状況は,父親が自分自身のメンタルヘルスに留意しながら育児を遂行していくための一助になると共に,子育てに悩む父親支援事業の展開に貢献するものと思われる。子育ては,夫婦の相互理解と協働が重要であることから,日々の生活の中で悩んだ状況は,時間的余裕が持てない子育ての日々の中で,妻が夫を理解する一助となると考えられる。

  • 吉田 菜々花, 主田 英之, 伊藤 明日香, 倉田 浩充, 梅本 ひとみ, 井関 博文, 吉野 巧望, 徳永 逸夫, 西村 明儒
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 215-222
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,脳アミロイド小体(CA)の由来,脳CAとアルツハイマー型認知症の関連を調べ,認知症評価の指標とすることを目的とした。徳島大学法医学教室において法医解剖を行った症例のうち,死後経過時間が48時間以内であるものを対象とし,海馬周辺組織にHE染色,免疫染色,ガリアス・ブラーク(GB)染色を施した。免疫染色の結果,脳 CAでユビキチン陽性,ニューロフィラメント陽性であったことから,脳CAは蛋白の処理系由来の成分を含有すること,さらに,その蛋白が神経細胞由来であることが示唆された。GB染色によってブラークステージを決定し,脳CAと神経原線維変化および老人斑との相関を調べた。男性の症例においてのみ有意な正の相関を認め,女性の症例では相関を認めなかった。よって,強い正の相関を認めた男性の症例においては,GB染色を用いたブラーク分類の,前段階の簡易的な検査として,HE染色の脳CAの数で評価できる可能性が示唆された。

  • 駒木 幹正, 上原 久典
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 223-228
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     乳房Paget病は乳頭部に発赤やびらんを呈する乳癌で,その頻度は0.3%とされる。乳頭部表皮と乳管内に留まる時期はいわゆる上皮内癌である。Paget病に対しては非浸潤癌や浸潤癌の合併がある程度多いとされ,乳房切除手術が行われてきたが,近年は術前に病巣の範囲や浸潤巣の有無が画像診断からある程度推定でき,乳房温存手術も多く行われている。今回,右乳癌術後20年という長期を経て,同側乳房に乳房Paget病が認められた症例について,乳頭乳輪部を含む部分切除を行った。術後,標本の全割による病理学的検討を行った結果,Paget病変と独立して,お互いに不連続な2つの非浸潤癌巣が併存し,かつ全ての切除断端は癌陰性であった。Paget病に対する温存手術では手術標本の詳細な病理学的検索が必須と思われる。

     乳房Paget病は乳頭部の皮膚にびらんや表皮欠損を呈して発症する乳癌で,日本乳癌学会全国乳がん患者登録調査報告―確定版― 第51号2020年次症例1)によれば,その頻度は0.3%とされる。乳房Paget病は乳頭部表皮と乳管内に留まる時期はいわゆる上皮内癌であるが,従来その治療は過大とも言える乳房切除が標準的に選択されてきた。乳癌の外科的局所治療はあくまでも癌巣の完全切除が目標であり,如何に乳房を温存しつつ,最小の外科的侵襲を以て,少なくとも浸潤巣を完全に切除することが肝要である。無論,癌巣周囲に進展波及する乳管内進展巣を遺残させないよう努めるべきである。著者らはこれに応えるべく,切除材料の全割を行い,病理学的診断を徹底して標本内の癌の分布を立体的に把握するように努めている。今回,浸潤癌術後20年という長期を経て,同側に乳房Paget病とそれらと病理学的に独立した非浸潤癌巣が合併していた症例を経験した。

  • 三好 孝典, 王 健, 吉松 政樹, 大畠 慶映, 加藤 昭紀, 中村 浩志, 神代 祐至, 兼信 正明, 椿 昌裕, 加藤 奨一
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 229-234
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     胸腺癌は比較的まれな悪性腫瘍であり,充実性の腫瘍であることが多い。今回われわれは多房性胸腺嚢胞(multilocular thymic cysts : MTC)の経過観察中に嚢胞壁から発生したと考えられる胸腺癌の1例を経験したので報告する。症例は59歳,男性。検診で他疾患精査中の胸部CTで,前縦隔に境界明瞭な53×12mmの腫瘤を指摘された。MRIで内部はT2強調で高信号と隔壁にてMTCとして手術を勧めたが希望せず経過観察の方針とした。経過観察中徐々に増大するも手術希望せず,約3年半後のCTで嚢胞部に充実成分を疑う所見を認めMRIを施行,充実成分が確認され拡散強調で高信号を認めた。造影CTで腫瘤の造影効果も認め胸腺腫を疑い胸骨中切開にて手術を施行した。腫瘍は心嚢に炎症性に癒着していたが浸潤は認めなかった。病理所見は,正岡の臨床病期I期の低分化扁平上皮癌であった。術後は放射線治療を追加し経過観察中である。MTCの経過観察中に充実成分が出現増大し切除された胸腺癌症例はまれである。

  • 大島 優実, 正木 理恵, 河北 貴子, 宮谷 友香, 早渕 修, 奥村 友, 野田 尚吾
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 235-240
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     トキシックショック症候群は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が産生する毒素によって急速に循環不全,多臓器不全を引き起こす疾患である。今回,タンポンの長期留置によってトキシックショック症候群をきたした1例を経験した。

    【症例】48歳,女性。統合失調症にて他院で入院加療中。来院前日に40℃の発熱と炎症反応上昇を認め,抗菌薬治療開始。翌日意識障害,血圧低下にて当院に救急搬送。搬送時,腟内に悪臭伴うタンポンあり,留置期間は不明であった。その他検査にて明らかな感染巣は認めず,トキシックショック症候群を疑い,大量輸液・昇圧剤投与によるショックの管理と,広域抗菌薬と抗MRSA薬の投与を開始した。入院3日目にショックを離脱,来院時の腟分泌物培養よりMRSAが検出された。その後速やかに全身状態・炎症所見は改善した。

    【結語】臨床所見よりトキシックショック症候群を疑う場合には,原因菌としてMRSAも考慮し,速やかに治療介入を行う必要がある。

     トキシックショック症候群は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が産生する毒素によって急速に循環不全,多臓器不全を引き起こす疾患であり1),1978年にJames Toddらによって小児において初めて報告された2)。月経性のトキシックショック症候群は,タンポンや月経カップなどを使用している女性に起こり3),米国ではタンポンの使用により黄色ブドウ球菌によるトキシックショック症候群が多く報告され4),タンポンの構造である繊維密度を変更後,発生率は減少した3,5)。

     今回,タンポンの長期留置によってトキシックショック症候群をきたした1例を経験したため報告する。

  • 戸田 沙慧, 馬渡 一諭, 平野 希美, 殿脇 壱成, 山口 ももか, 石川 寧子, 篠田 浩一, 上番増 喬, 高橋 章
    原稿種別: 資料
    2025 年 80 巻 5.6 号 p. 241-246
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

    目的:フラボノイドなどの植物由来天然化合物は抗酸化,抗炎症や抗菌作用などのさまざまな機能性が報告されている。さらに,一部の化合物には抗ウイルス作用も報告されていることから,新規の抗ウイルス活性を有する化合物を探索することは,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)や今後流行の可能性がある病原ウイルスへの感染予防や重症化予防対策として重要であると考えた。そこで本研究では,コロナウイルス感染後に宿主細胞内でのウイルス複製を抑制可能な植物由来天然化合物の探索を行った。

    方法:SARS-CoV-2と同じβコロナウイルス属であるHCoV-OC43を用いて評価を行った。HCoV-OC43を多重感染度0.001で,ヒトII型膜貫通型セリンプロテアーゼを安定発現したアフリカミドリザル由来のVero E6細胞に感染した。ウイルス感染2時間後に終濃度10 μMの化合物をそれぞれ培地に添加した。感染24時間後に細胞と培養上清を回収して,細胞内と培養上清中のウイルスRNA量をRT-qPCRによって評価した。

    結果:柑橘類に含まれるポリメトキシフラボン,ノビレチン処置群では溶媒コントロール群と比較して細胞内と培養上清中のウイルスRNA量を有意に抑制した。さらに,ノビレチン処置はSARS-CoV-2やHCoV-229Eへも同様の効果がみられたことから,ノビレチンはコロナウイルスの複製を抑制する活性を有する可能性が示唆された。

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