トキシックショック症候群は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が産生する毒素によって急速に循環不全,多臓器不全を引き起こす疾患である。今回,タンポンの長期留置によってトキシックショック症候群をきたした1例を経験した。
【症例】48歳,女性。統合失調症にて他院で入院加療中。来院前日に40℃の発熱と炎症反応上昇を認め,抗菌薬治療開始。翌日意識障害,血圧低下にて当院に救急搬送。搬送時,腟内に悪臭伴うタンポンあり,留置期間は不明であった。その他検査にて明らかな感染巣は認めず,トキシックショック症候群を疑い,大量輸液・昇圧剤投与によるショックの管理と,広域抗菌薬と抗MRSA薬の投与を開始した。入院3日目にショックを離脱,来院時の腟分泌物培養よりMRSAが検出された。その後速やかに全身状態・炎症所見は改善した。
【結語】臨床所見よりトキシックショック症候群を疑う場合には,原因菌としてMRSAも考慮し,速やかに治療介入を行う必要がある。
トキシックショック症候群は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が産生する毒素によって急速に循環不全,多臓器不全を引き起こす疾患であり1),1978年にJames Toddらによって小児において初めて報告された2)。月経性のトキシックショック症候群は,タンポンや月経カップなどを使用している女性に起こり3),米国ではタンポンの使用により黄色ブドウ球菌によるトキシックショック症候群が多く報告され4),タンポンの構造である繊維密度を変更後,発生率は減少した3,5)。
今回,タンポンの長期留置によってトキシックショック症候群をきたした1例を経験したため報告する。
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