四国医学雑誌
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  • 堀 裕行
    原稿種別: 特集
    2026 年82 巻1.2 号 p. 3-6
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

    日本人の人口は,2008年の1億2808万人をピークに減少に転じており,2040年には1億1000万人程度に,また今世紀末には1億人を大きく割り込むことが見込まれている。内訳としては,65歳以上の高齢者数は当面増加するものの,15〜65歳や,14歳以下が大きく減少する。このような状況の中,高齢者の健康をどう維持していくかは,高齢者のみならず,社会全体にとっても大切な課題である。  介護保険制度は2000年に創設されたが,介護保険のサービスを利用するためには,居住地の市町村から要介護認定を受ける必要がある。この認定を受けた方の数は,制度開始当初は256万人であったが,高齢者の数が増えるに従い増加し,2024年3月には700万人を超えている。認定率を年齢別に見ると,65〜69歳では,全体の2.8%しか要介護認定を受けていないが,年齢が上がるとともに上昇し,75歳以上では約3割,85歳以上だと6割近い方が認定を受けている。  日本は「平均寿命」が長い国として知られており,2022年に,日本人は男性の平均寿命が81.1歳,女性が87.1歳である。一方で,「健康の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義される「健康寿命」は,同じ2022年に男性では72.6歳,女性では75.5歳である4)。平均寿命と健康寿命の差が,「健康上の問題で日常生活が制限される期間」であり,男性では8.5年,女性では11.6年である。この期間は,さまざまな理由で日常生活が大きく制限を受けることになるため,「平均寿命」と「健康寿命」の差をなるべく小さくして,健康な期間を延ばすことが重要である。

  • 板東 正記
    原稿種別: 特集
    2026 年82 巻1.2 号 p. 7-10
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     日本は世界に冠たる長寿国であるが,その実態は「平均寿命」と「健康寿命(日常生活に制限のない期間)」の間に大きな乖離を抱えている。最新の統計1)によれば,不健康な期間は男性で約8.49年,女性で約11.63年に及ぶ【図1】。この乖離は個人のQOL(Quality of Life)を著しく損なうだけでなく,社会保障費の増大を招く構造的課題となっている。  特筆すべきは,本稿の焦点である徳島県の現状である。徳島県の健康寿命は男性が全国38位,女性が41位と低迷しており,全国平均を下回る厳しい状況にある。健康寿命がこれほどまでに乖離している現状は,徳島県において「介護を要する期間」が他県よりも長期化していることを示唆している。このギャップを埋めるためには,要介護状態への移行を阻止する「フレイル」への戦略的介入が重要と考えられる。

  • 井原 涼子
    原稿種別: 特集
    2026 年82 巻1.2 号 p. 11-16
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     2023年12月20日にアルツハイマー病の新薬が発売され,大きな話題を呼んだ。新薬は従来の薬にはなかった進行を遅らせる効果がある点が大きな違いで,患者・家族に希望をもたらした。一方,薬剤の作用機序特異的な副作用のため,従来には必要なかった不安や手間も生じる。このような薬剤が診療現場においてどのように使われ,将来にはどのような見通しがあるか,本稿にて述べる。

  • 藤田 浩司
    原稿種別: 特集
    2026 年82 巻1.2 号 p. 17-20
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     認知症のリスク因子とその対策,認知症が疑われた際の対応,および政策的背景について概説した。近年,14の修正可能なリスク因子への介入により,認知症の発症を予防できる可能性が示されている。特に,難聴,高LDLコレステロール血症,社会的孤立などは重要な介入対象である。さらに,多因子介入の有効性も報告されている。加えて,認知症が疑われた場合には早期受診が重要であるが,受診困難例に対しては地域包括支援センターや認知症初期集中支援チームの活用が有用である。2024年施行の認知症基本法のもと,共生社会の実現に向けた取り組みが進められており,医学的介入と社会的支援の両面からの対応が求められる。  認知症は重要な健康課題であり,多くの人が発症を望まないと考えられる。一方で,確実に発症を防ぐ方法は現時点では確立されていない。しかし,発症リスクを低減し,発症後も良好な状態を維持するための方策については,近年知見が蓄積されつつある。ここでは,市民を対象として,認知症に関する最近の知見を提示し,日常生活における実践的な対策および支援体制について概説することを目的とした。

  • 佐藤 隆久, 宇高 二良
    2026 年82 巻1.2 号 p. 21-30
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     CPAP(持続陽圧呼吸療法)は世界的に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の標準的な治療として認められている。しかし,口渇,鼻炎等の副作用により早期離脱することが多くある。某酸素メーカーのアンケートによると,半年で約40%,1年で約50%が早期離脱したというデータがある。また,CPAPのアドヒアランスの低さが問題となっており,46~83%が不良になるという報告がある。よって,CPAPは有用であるが,有効な継続治療が難しい。なお,AHI(無呼吸低呼吸指数)は側臥位で眠る睡眠体位療法で低下し,中等症以下のSASには有効な治療となる場合がある。そして,SASで重要な問題となるのは居眠り運転の交通事故のリスクが高くなることである。それに対してアドヒアランス良好であればCPAPは有効な治療である。よって,居眠り運転による交通事故を起こした人は,簡単な問診や簡易検査を受けることが望ましい

  • 中村 信元
    原稿種別: 総説
    2026 年82 巻1.2 号 p. 31-34
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     本稿は,内科学における「逆算」の重要性を,研究・臨床・教育・感染制御の観点から論じた。研究では革新的治療の実用化に20年以上を要することから,課題解決には早期の着手・着想が不可欠であり,人工知能が発達した現在においても人間主導の探究が重要である。臨床では通常経過からの逸脱の早期察知とそれに対する適切なアセスメント,対応力が本質的能力であり,教育もそれに基づき設計されるべきである。さらに地域医療の質向上には人材教育が最善で最速の介入である。病院における感染制御では,日々の手指衛生と抗菌薬適正使用の徹底が未来を左右する。逆算思考は,内科学の発展と医療の質向上に寄与する基盤であると考えられる。

  • 鳥羽 博明
    原稿種別: 総説
    2026 年82 巻1.2 号 p. 35-40
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     近年,iPS細胞をはじめとした幹細胞を用いた臓器再生の研究は急速に進み,臨床応用されるようになってきた。2026年には重症心不全やパーキンソン病に対するiPS細胞を用いた再生医療製品が承認され,新しい時代になったことを実感する。  一方で,肺の再生はきわめてハードルが高い。というのも,肺は数多くの種類の細胞で構築されており,まずはそれらの細胞に分化させ,足場を創って3D構築する必要性があること,最終的にはガス交換という機能を持たせることが必要であることなどが理由とされる2)。これまでに基礎研究では数多くの知見が積み重ねられてきており,将来的には特発性間質性肺炎,肺高血圧症などの終末期肺疾患患者への応用が期待されているもののまだ遠く,現状では肺移植が唯一の治療法である。  これまでわれわれは胎仔肺組織やiPS細胞を用いた肺再生研究を行ってきており,今回紹介する。

  • 阪本 朋香, 今井 芳枝, 三谷 和江, 安倍 吉郎, 森 裕香, 橋本 一郎
    2026 年82 巻1.2 号 p. 41-48
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     本研究では,皮膚移植後の患者がウールマット敷下肢架台を使用したことによる快適さを明らかにすることを目的とした。対象は皮膚移植後よりブラウン架台にウールマットを敷いた下肢架台を3日以上使用していた患者15名とした。結果,ウールマット敷下肢架台を使用した皮膚移植後患者の快適さの体験として【足を守ってもらえているという落ち着きが生まれる】【足のことを気にしなくてよい時間がもてる】【柔らかさと温かさにより,動かせない辛さがひいていく】【辛い最中に心地よい感覚で心を癒してくれる】の4カテゴリーが抽出された。ウールマット敷下肢架台を使用した皮膚移植後患者の快適さの体験の特徴として,包まれるようなポジショニングによる気持ちの安定と辛さを感じにくくする心地よさが示唆された。術後の下肢架台に関する管理に伴う苦痛は無くすことができない苦痛だからこそ,軽減させるアプローチは重要であり,今後も検討していきたい。

  • 高山 良政
    2026 年82 巻1.2 号 p. 49-54
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/21
    ジャーナル フリー

     筆者は徳島大学医学部医学科四年生として,ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(以下SOASと表記する)にてEnglish Language and Academic Studiesコースを10週間受講したので,報告する。SOASは人文・社会科学に特化した大学で,特に開発学において国際的評価が高い。筆者はSOASにてAcademic English,International Development Studies,Studies in Media and Communicationsの講義を受講した。英語論文執筆に必要な技法を学ぶと同時に,開発学,メディア論を多様な同級生と議論しながら学習することができた。授業の他にもロンドン大学などに足を運び,研究セミナーに参加したことで,高水準な見地を得ることができた。本留学を通して,医学の社会的役割を意識しつつ,より一層医学の学習に励みたいと考えた。

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