神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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33 巻, 3 号
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特集
  • 植木 智志
    2016 年 33 巻 3 号 p. 217
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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  • 山田 謙一
    2016 年 33 巻 3 号 p. 218-221
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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  • 水野 誠司
    2016 年 33 巻 3 号 p. 222-228
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    頭髪の色や虹彩の色,体格差といった身体的特徴がDNA上の遺伝情報によって規定されるのと同様に,人間の行動の特徴もその一部は遺伝学的な情報によって規定される表現形の一つであると考えられている.先天異常症候群はヒトにおける自然発生的なの遺伝学的変異であると考えられているため,ヒトの発生において特定の遺伝子がどのような役割を担いどのような異常の原因となるかの研究対象として,その患者の臨床像が詳細に調査されてきた.当初は患者の有する形態的な異常が主な研究の対象であったが,近年は認知や行動の特徴についての関心が高まりつつある.多くの先天異常症候群の中でも,ウィリアムズ症候群,プラダー・ウィリー症候群,スミス・マゲニス症候群,アンジェルマン症候群の患者は,認知と行動における特異性を伴うためしばしば研究対象とされ,認知科学的な解析も試みられている.症候群として認識されない非特異的な知的障害や自閉症スペクトラムにおいても,その原因遺伝子の違いによる認知と行動の特異性があることが推定されており,これらを科学的に解析するために行動の特徴を客観的かつ詳細に記述する方法についても併せて研究されている.これらの研究は遺伝子と行動の関係を明らかにする以外に,個々の疾患特性を正しく理解することによって患者の日常の行動における問題に適切に対応し,ひいては患者本人のQOLを向上させることを目的とするものである.近年では教育や療育の現場でもその実践が始まっている.

  • 山田 謙一
    2016 年 33 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    小児期神経発達障害における発達阻害要因の同定や詳細解明は,正確な診断と適切な治療的介入につながるが,脳発達の客観的評価はこれまで困難であった.高磁場MRIは非侵襲的で汎用性の高い発達解析手法である.すべての撮像条件を小児に最適化した拡散テンソルイメージングの臨床応用により,遺伝学的背景を持ち特徴的行動特性を有する先天症候群や,幼児期被害体験者の行動発達問題における,脳発達異常の手掛かりを得てきている.超高磁場装置が開く新地平を含め,高磁場MRIを用いた脳発達解析が発達神経臨床に貢献できる領域は,大きく開かれている.

  • 福島 愛
    2016 年 33 巻 3 号 p. 234-241
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    自閉スペクトラム症は,従来,自閉性障害,広汎性発達障害,アスペルガー障害と区別されていたものを一括りにした疾患概念である.症状の程度は様々で,同じ人にいくつかの発達障害が重複して存在することもある.自閉スペクトラム症は,小児期には療育的介入を中心として支援し,家族からは子どもの特性を理解した,生活と関わりの工夫を実践してもらうことが中心となる.症例によって,薬物療法や心理療法を用いることもある.さらに,ライフステージにより,様々な生活困難が出現し,精神科的併存症も知られており,臨床像を縦断的横断的に把握して診療していくことが必要である.そして,常に,福祉や教育とも積極的に連携して支援することが求められる.

原著
  • 山上 明子, 若倉 雅登, 井上 賢治
    2016 年 33 巻 3 号 p. 242-248
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    特発性眼窩炎症と診断され,4か月以上経過観察が可能であった61例について,その臨床的特徴と治療および予後について検討を行った.特発性眼窩炎症の診断は臨床症状とMRIで行い,病型を外眼筋炎型,涙腺炎型,視神経周囲炎型,眼窩内びまん性型,テノン嚢/強膜炎型,眼窩先端部型に分類した.病型は重複が多く,特にテノン嚢/強膜炎型と視神経周囲炎型では病型重複例が多かった.特発性眼窩炎症全体では50~60代での発症が多かったが,外眼筋炎型は20代と50~60代に多く,眼窩先端部型は60~70代に多い傾向があった.全体の再発率は55.7%で,20~40代では再発回数が多く,特に20~30代の外眼筋炎型と他の病型との重複が多いテノン嚢/強膜炎型と視神経周囲炎型合併例で再発を繰り返しやすく,難治性であった.治療はステロイドが第一選択となっていたが,再発例では52.9%で免疫抑制剤が導入されていた.また,再発例の61.8%は維持療法を施行しており,そのうち11.8%では現在も再発を繰り返しており治療効果不良であった.

臨床報告
  • 中尾 志郎, 山田 義久, 上野 未貴, 北岡 隆
    2016 年 33 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)に対してアダリムマブ(adalimumab: ADA)による治療中に視神経炎を発症した1例を経験した.症例は42歳女性.13年前にUCを発症し,以後寛解再燃を繰り返していた.2015年2月からADAによる治療が開始され,その後UCの症状は安定したが,4月から右眼痛が出現し,症状改善しないため当院受診.右眼視力0.2(0.6)と低下,右眼限界フリッカ値12.3 Hzと低値,右眼相対的瞳孔求心路障害陽性,右眼視野検査にて傍中心暗点の出現,眼窩MRIにて右視神経の高信号,蛍光眼底検査にて右眼視神経乳頭過蛍光を認めた.鑑別として多発性硬化症,視神経脊髄炎,自己免疫性視神経炎などが挙がるが,髄液検査陰性,自己抗体陰性であり,否定的であった.ADAによる右視神経炎と診断し,入院となった.被疑薬であるADAを中止し,ステロイドパルス(1g/day)3クール施行し,右眼視力0.3(1.5),右眼限界フリッカ値33.3 Hzとともに改善し,暗点も消失した.視神経炎の原因としてTNF-α阻害剤があげられるため,詳細な病歴聴取を行う必要がある.

  • 市川 浩平, 小林 宏明, 舟木 俊成, 鈴木 康夫, 村上 晶
    2016 年 33 巻 3 号 p. 254-258
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    症例:64歳男性.左視神経炎に対する精査目的で紹介受診となった.約1年前に潰瘍性大腸炎を発症し,抗腫瘍壊死因子α(TNF-α)製剤のひとつ,adalimumabによる治療中であった.同薬剤が視神経炎の原因として疑われ,同薬剤を投与中止とした.ステロイドパルス療法は行わなかったが,早期の視力回復を認めた.
    考按:adalimumabなどの抗TNF-α製剤は副作用として視神経炎を引き起こすことがあるため,抗TNF-α製剤使用の有無は,視神経炎の原因を考える上での重要な問診事項であると考えられる.我々は今回,これまでに海外で報告されているadalimumab投与に伴う視神経炎発症例をまとめた.
  • 荒木 俊介, 三木 淳司, 後藤 克聡, 高﨑 裕子, 春石 和子, 家木 良彰, 桐生 純一
    2016 年 33 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    片眼の下直筋不全麻痺で初発し,その後,動眼神経麻痺として経過観察された後期発症の全身型重症筋無力症(全身型MG)の1例を報告する.症例は58歳男性で,初診時に右眼下直筋の単独不全麻痺がみられた.2か月後,右眼の眼瞼下垂および上直筋,下斜筋,下直筋の不全麻痺を認めた.頭部磁気共鳴画像では異常所見がみられず,抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体は陰性であった.右眼の特発性動眼神経麻痺として経過観察されたが,初診から5か月後,左眼の眼瞼下垂および右眼の外転方向を除く両眼の全方向への眼球運動障害,四肢筋の筋力低下を呈した.抗AChR抗体陽性,塩酸エドロホニウム試験陽性,誘発筋電図検査でwaning現象陽性となり,全身型MGと診断された.外眼筋麻痺の局在が片眼に孤立している場合や脳神経の支配部位と一致した場合でもMGの可能性を念頭に置く必要がある.

  • 沼田 沙織, 毛塚 剛司, 野田 知子, 増田 眞之, 後藤 浩
    2016 年 33 巻 3 号 p. 266-271
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    重症筋無力症(MG)は神経筋接合部が障害される自己免疫疾患である.近年,抗AChR抗体陰性MGの約30%で抗筋特異的受容体チロシンキナーゼ(MuSK)抗体が検出されることが判明した.今回我々は,複視を契機に発見された抗MuSK抗体陽性MGの2症例を経験したので報告する.2例とも複視を自覚したため眼科を受診し,外眼筋麻痺を認めたが抗AChR抗体は陰性であった.その後,球症状が出現し,抗MuSK抗体を検査したところ陽性となり,テンシロンテストや反復神経刺激試験の所見により抗MuSK抗体陽性MGと診断された.抗MuSK抗体陽性MGは球症状が主であるとされるが,眼症状も起こり得る.したがって今後も眼球運動障害等がみられる症例,特に日内変動を認める場合には抗AChR抗体のみならず,抗MuSK抗体も検索し,眼科においてもMGを早期に発見していく必要があると考えられる.

症例短報
  • 海老原 悟志, 小林 俊策, 原 雄時, 鈴木 利根, 町田 繁樹
    2016 年 33 巻 3 号 p. 272-275
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    海綿静脈洞血栓症は稀であり,生命予後にもかかわる疾患である.今回急性副鼻腔炎に合併して本疾患をきたしたが,早期診断・早期治療が奏効した海綿静脈洞血栓症の27歳女性例を経験したので報告する.患者は右眼痛と眼球突出を主訴に近医眼科および耳鼻咽喉科を受診したが,これらの症状が徐々に悪化した.6日後に当院耳鼻咽喉科を受診したところ,急性副鼻腔炎の診断にて精査加療目的で入院となった.眼科および脳神経外科も受診となり,画像検査による上眼静脈や海綿静脈洞の所見から海綿静脈洞血栓症の診断となった.同日,原疾患の治療目的に内視鏡下鼻副鼻腔手術が施行され,さらに抗菌剤点滴の継続および抗凝固療法が施行された.右眼球突出は次第に改善したが,術後8日目で右外転神経麻痺が認められた.術後17日目で退院となり,術半年後に右外転神経麻痺は消失した.

短報
  • 田中 佳子, 坂上 敏枝, 渡邊 由美子, 杉谷 邦子, 鈴木 利根
    2016 年 33 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    複視に対する光学的治療としてプリズム治療が行われている.プリズムは正面視および下方視での複視の消失を図ることを目的としているが,当院では全視方向での複視の消失を目指し,プリズムに加え0\_h.\/1遮閉膜(Ryser Optik社製)を用いた不完全部分遮閉によって対応している.その方法としてS-Sメソッド(step1,step2,step3の3段階)を採用している.step1では通常の組み込みプリズムや膜プリズムにより第1眼位の複視を消失させる.しかし麻痺性斜視の場合第2,第3眼位で複視が残ることがあり,その場合はstep2に進み複視が残る領域に対し眼鏡レンズを部分的に遮閉することで対応する.それでも複視が残存する場合はstep3として,レンズの瞳孔中心付近に遮閉膜を貼る.この場合片眼の中心視力は犠牲になるが,完全遮蔽に比べ周辺視野の確保により歩行が安定し日常生活に改善がみられた.以上のS-Sメソッドにより複視の消失と日常生活の改善が認められたので,本法について具体的にその手順と方法を紹介する.

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  • Shao-Chun Chen, Yu-Ping Chang, Ming-Tsu Tsai, Pai-Huei Peng, Jieh-Ren ...
    2016 年 33 巻 3 号 p. 311-317
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/09/28
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    Importance: Alzheimer's disease (AD) is the most common cause of dementia in the elderly; however, no effective treatment is currently available. The identification of predictors for AD could facilitate early detection of the disease. Since the eye is an easily accessible part of the central nervous system, features presented through the eyes may provide important insights on the development of AD.
    Objective: To investigate whether diseases of the eye, including age-related macular degeneration (AMD), glaucoma, and diabetic retinopathy(DR), are effective predictors for the development of AD.
    Design, Setting, and Participants: In this cohort study, we used randomized sampled data of one million patients who had made insurance claims from the National Health Insurance. We included all newly diagnosed patients with AD, AMD, DR, or glaucoma between January 1, 2000 and December 31, 2010.
    Interventions: We excluded patients who had sought treatment for AD(ICD-9 code 331.0)before 2000. To examine the relationship between ocular diseases, ICD coding targets were defined as follows: AMD (ICD-9 codes 362.50, 362.52), DR (ICD-9 codes 362.01, 362.02, 250.50, 250.51, 250.53), and glaucoma (ICD-9 code 365). We only included these comorbidities if they had been diagnosed prior to the diagnosis of AD.
    Main Outcomes and Measures: We examined the relationship between eye disease and the occurrence of AD in each of the groups. A Cox proportional hazards regression analysis was performed, with adjustments made for age and sex.
    Results: There were a total of 4,097 patients in the eye disease group and 20,475 in the control group. A total 50 patients from the eye disease group developed AD during the study period, representing a cumulative incidence rate of 1.22%. The corresponding figure for the control group was 0.04%. The adjusted hazard ratio (AHR) with its confidence interval (CI) for AD varied between the ocular diseases; it was the highest in DR (39.91, 95% CI 4.79-332.67), followed by AMD (36.94, 95% CI 4.62-295.46), and glaucoma (34.08, 95% CI 13.37-86.84).
    Conclusions and Relevance: AMD, DR, and glaucoma were associated with an increased risk of AD. This study demonstrates that the presence of ocular diseases could be a sensitive indicator of preclinical AD with potential value in population screening.
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