神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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34 巻, 1 号
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巻頭言
理事長挨拶
特集
  • 市邉 義章
    2017 年 34 巻 1 号 p. 4-
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
  • 久保 寛之
    2017 年 34 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    ロービジョンケアの対象者が増加している.しかし,対応施設は多くないのが現状である.ロービジョンケアを専門とする当院での方法を紹介する.まずは視機能を様々な方法で再評価し,困難を探る.書類作成などを行ったうえで,光学的補助具や補装具,白杖等を紹介していく.福祉施設職員と連携して生活の中での困難を少しづつ減らせるよう,アドバイスし,時には訓練を行う.視覚状況の変化や生活環境の変化で困難が変わってくる可能性もあり,継続的な支援が望まれている.
  • 三輪 まり枝
    2017 年 34 巻 1 号 p. 12-24
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    日常生活で何らかの「見えにくさ」を感じている患者に対して,眼科医療の中でロービジョンケアを行うことは,患者のQuality of Vision(QOV)を向上させるために重要である.ロービジョンケアでは,視能訓練士は医師の指示のもと,見えにくさの評価に必要な「視機能検査」および見えにくさを補う「視覚補助具の選定」などを担う.
    ロービジョンケアで患者の見え方を把握するために,正確な視機能検査が必要不可欠である.そのため,視力検査においても視野欠損(狭窄・中心暗点等)に配慮した視標の呈示が必要であり,他の検査においても適切な声かけなどが大切である.文字などが見えにくい場合は,網膜像を拡大させる眼鏡や拡大鏡など,羞明のある場合は遮光眼鏡などの光学的補助具を選定する.書字に問題を抱える場合は,罫プレート(writing-guide)の使用を勧める.
    本稿では,神経眼科医と視能訓練士に必要なロービジョンケアの基礎知識と方法について述べ,最後に具体例を紹介する.
  • 若倉 雅登
    2017 年 34 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    ロービジョンや視覚障害は,専ら眼科で測定される視力や,視野などの視機能検査をもとに定義される.ここには,左右眼の信号が統合できない複視や,混乱視は入らないが,これらは生活の質を落とすばかりでなく,二次的な精神症状を惹起させる場合もある.また,自己制御不能の羞明,眼痛,霧視は,しばしば高次脳機能障害として生ずる,視覚ノイズと考えられる.羞明と眼痛は,一部共通する神経伝達の異常と考える仮説が提唱されている.これらの症状は,眼瞼痙攣をはじめとして,頭頚部外傷後遺症,脳脊髄液減少症,抗精神病薬,サリン中毒などを含む神経薬物中毒,パニック障害などの一部の精神疾患でみられる.
    私は,こうした中枢性の視覚ノイズの発現機序として,例えば視床が感覚入力におけるローパスフィルターに例えられているように,視覚情報処理過程に存在する各種のフィルター機能を想定し,その脱落や低下によってさまざまな視覚ノイズが発現する概念を提唱した.これらの中枢性視覚ノイズは,神経眼科学に残された大きなテーマであると同時に,非常に重篤な日常の視覚生活能力低下になるにもかかわらず,社会医学的には,保険や福祉サービスから完全に抜け落ちてしまっているもので,大問題であると考えられることを論じた.
  • 山口 修平
    2017 年 34 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    視覚情報は後頭葉の一次視覚野から後方連合野にかけて統合がなされ,線,色といった要素的なものから物品形態や相貌などの認識が形成され,さらに対象の空間位置が自己の位置と関連づけられる必要がある.空間位置情報は後頭葉から頭頂葉にかけての背側路で処理が行われ,形態情報は後頭葉から側頭葉にいたる腹側路で処理が行われる.視空間認知の障害で最も頻度が高いのは半側空間無視であり,頭頂葉の損傷が関与している.両側頭頂葉の障害でBálint症候群が出現する.一方,腹側路の損傷で生ずる視覚性失認では,物体の形態認知が困難となり,処理段階に応じて様々な形の失認が認められる.その特殊型として顔の認識が困難となる相貌失認がある.顔認知に関しては脳の特化した部位において処理が行われる.地誌的失見当識は,方向が分からなくなる空間認知の障害(道順障害)と風景が認識出来ない形態認知の障害(街並失認)の二つの機序が存在する.これら高次視覚障害の回復には,脳の代償機能を利用する方法,新たな学習を強化する方法,電気・磁気等による脳の刺激など様々なリハビリ戦略が試みられており一定の成果を上げている.
  • 田淵 昭雄
    2017 年 34 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    著者は2016年3月に台北で開催された第31回APAO(アジア・太平洋眼科学会,以下APAO)の年次学術総会でThe Outstanding Service in Prevention of Blindness Awardを受賞した.本賞はアジア地域各国において失明予防活動に貢献した個人または団体に毎回贈られるもので,今回は17か国の各眼科学会から推薦された眼科医(但し,フィリピンは1団体)が受賞した.受賞した理由は著者が2000年の「日本ロービジョン(以下,LV)学会」の創立に携わった一人として,当該学会の初代理事長を10年間務め,全国各地での眼科医療関係者のLVケアへの参加を促したこと,2012年度の診療報酬改定で「ロービジョン検査判断料」が新設される際の,「日本LV学会」(当時は髙橋広第2代目理事長)の積極的な働きが原動力となったことなどが主であると推察している.
    この受賞を機会に明治時代から2000年までの眼科医のLVケアの歴史を調査し,眼科医のLVケアへの関わりを明らかにした.また,2000年以降における大学病院眼科外来におけるLVクリニックの開設状況および大学教授のLV教育の考え方を紹介した.一方,アジア地域におけるLVケアの状況と日本の眼科医による海外協力について簡単に述べる.
原著
  • 小野里 規子, 原 直人, 新井田 孝裕, 田川 朝子
    2017 年 34 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    目的:多発性硬化症の乳頭黄斑線維を含む鼻側黄斑部網膜内層厚の網膜神経線維層と網膜神経節細胞層+内網状層について比較検討を行った.
    対象・方法:多発性硬化症13名26眼,正常眼42名73眼.スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domain OCT:SD-OCT)を用い,視神経炎の既往の有無・罹病期間・年齢による変化・総合障害度スケール(expanded disability status scale:EDSS)について検討した.
    結果:視神経炎の既往がなくても網膜神経節細胞層の菲薄化と罹病期間に相関がみられた(r=0.63,p=0.003).また加齢に伴う菲薄化は正常者よりも速かった.以上から多発性硬化症は網膜内でも無症候性の変化を来たしており,神経変性と類似した病態の存在が示唆された.また免疫抑制剤フィンゴリモドの使用により網膜神経節細胞層の菲薄化が抑制されている可能性がある.
症例短報
  • 新井 隆浩, 澤村 裕正, 庄田 宏文, 山本 一彦, 相原 一
    2017 年 34 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル 認証あり
    末期緑内障に巨細胞性動脈炎から生じた後部虚血性視神経症を呈した一例を報告する.症例は81歳,男性.25年来の進行性開放隅角緑内障があり当院通院中であった.再診時の視野検査時に左眼の視力低下を検査員に指摘された.左眼の矯正視力は光覚弁に低下していたが自覚症状は乏しかった.左眼の瞳孔領にフィブリン膜,虹彩後癒着,虹彩ルベオーシスをみとめ,RAPDの有無は不明であった.視神経乳頭は緑内障性の視神経萎縮をみとめたが前回診察時と比べても著変をみとめなかった.血液検査で炎症反応の高値をみとめ,造影MRIでは胸部大動脈,頸動脈,頭蓋内主幹動脈に造影後期の増強効果,壁肥厚をみとめたため側頭動脈生検を施行し巨細胞性動脈炎に合致する病理結果を得た.ステロイドパルス療法を施行したが左眼視力は光覚弁のまま不変で右眼視力の低下はみとめなかった.巨細胞性動脈炎により眼虚血が存在し後部虚血性視神経症を合併したものと推測された.急激な視力低下がみられた場合は,自覚症状が乏しくとも特に50歳以上の患者では巨細胞性動脈炎による後部虚血性視神経症も鑑別診断に挙げる必要がある.
短報
  • 横田 聡, 金森 章泰, 藤本 雅大, 村岡 勇貴, 宮田 学, 畑 匡侑
    2017 年 34 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/31
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    緒言:神経眼科,斜視弱視外来における障害者手帳取得状況について検討する.
    方法:2015年9月から2016年6月の間の京都大学神経眼科,斜視弱視外来,および,2016年11月から12月の間の神戸大学神経眼科外来において障害者手帳に相当する視覚障害の有無および手帳取得状況について調査した.
    結果:調査期間に受診歴のあった患者のうち,56人が障害者手帳に相当する視覚障害があった.56人のうち23人(41.1%)が手帳未取得であった.視力の該当/非該当,視野の該当/非該当,性別,年齢を投入し,手帳取得の有無に対してロジスティック回帰分析を行うと,視力非該当(オッズ比 4.59倍,[95%信頼区間 1.15-21.44], P=0.031)が手帳未取得のリスク因子であった.
    考按:ロービジョンケアの入り口にもなる手帳取得について,視力非該当の場合においても視野の基準に注意する必要がある.
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