神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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34 巻, 2 号
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特集
  • 中馬 秀樹
    2017 年 34 巻 2 号 p. 129
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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  • 若倉 雅登
    2017 年 34 巻 2 号 p. 130-138
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル 認証あり

    1976年から2017年まで40年余り,日本神経眼科学会に属しながら眼科医として歩んできた中で,どれだけの臨床的あるいは学問的貢献ができたのか振り返ってみた.それには,副腎ステロイド全身投与の網脈絡膜副作用,視神経炎多施設治療トライアル,視神経低形成,レーベル遺伝性視神経症におけるいくつかの新知見や,眼窩窮屈病の提唱が含まれる.また最近の成果として,眼瞼痙攣軽症例や,薬物性眼瞼痙攣に注目してレトロスペクティブな症例研究を行った結果を示した.この中で,ベンゾジアゼピン系薬物とその類似薬の関与についての見解として,中枢性と考えられる羞明,眼部不快感や疼痛,霧視などの自覚症状の存在は,ベンゾジアゼピン眼症と認識するのがよいことを強調した.

  • 鈴木 康夫
    2017 年 34 巻 2 号 p. 139-147
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    電子付録

    「Listingの法則」は,頭部が直立して固定されていることを前提とした三次元眼位の法則である.三次元眼位を頭部固定座標で基準となる参照眼位からの単一回転で表現すると到達可能な三次元眼位の自由度は3から2に減少し平面をなすこと,さらに参照眼位が第一眼位となるように設定すると三次元眼位は回旋眼位0の平面(Listingの平面)となることを述べている.第一眼位とListingの平面は,重力方向,輻湊などの条件で眼位の自由度2を保ったまま変動する.
    「Listingの法則」は,眼球運動系末梢が「Synergy」として機能し,Bernstein問題(運動制御における冗長な自由度の存在)を解決していることを示唆している.

  • 久峩 美千代, 中馬 秀樹, 大庭 健一
    2017 年 34 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    発達障害とは,生まれながらの脳の発達の偏りであり,自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如・多動症(AD/HD),限局性学習症(SLD)などに分類される.さらに,社会的相互交渉のタイプによっては「孤立型」,「受動型」,「積極奇異型」に分けられる.一言で発達障害と言っても,種類や程度,年齢などにより,一人ひとり症状の現れ方は異なる.得意なこと,苦手なこともそれぞれ違う.人に怒られるようなことをしてしまいがちであるため,ストレスを受けやすい.それを防ぐためにも,それぞれの特性に合わせた対応が必要である.「事前に,視覚的に伝える」,「余計なものは見せない工夫をする」,「本人の言い分を聞く」,「叱らない,感情的にならない」,「自信をつける」などの対応である.一人ひとりの特徴に応じて,個人に応じた支援,環境,対応の仕方を考えていくことが重要である.

原著
  • 髙橋 洋平, 山上 明子, 井上 賢治, 若倉 雅登
    2017 年 34 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    Leber遺伝性視神経症(LHON)には,一部自然回復例が存在することが知られている.今回,LHONにおける限界フリッカ値(CFF)の経時的変化と,視力予後との関連について検討した.遺伝子検査でLHONと診断された65例130眼の経過中のCFFの最終値は,正常眼20例40眼のCFFと比較して有意に低下していた(P<0.0001).LHON発症から2年以内に3回以上CFFを測定した18例36眼において,発症から6か月毎のCFF値の推移について検討した.経過中のCFFは,発症から25か月以降で,発症~6か月(P<0.0001)および7~12か月(P=0.0005)の期間と比べて有意に改善していた.経過中のCFFの最低値と最終値の差が両眼とも10 Hz以上の改善群13例26眼について,最終CFFと最終視力に有意な相関を認めた(P<0.0001).LHON発症から1年以内に低下したCFFは発症後2年以降有意に改善し,CFF改善例では視力も改善傾向となる可能性が示唆された.

  • 三村 治, 木村 亜紀子, 一色 佳彦
    2017 年 34 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    目的:甲状腺眼症による機械的斜視に対してA型ボツリヌス毒素併用直筋後転術の効果を報告する.
    方法:臨床的に甲状腺眼症と診断され,35プリズム以上の下斜視と軽度の内斜視のある2例の患者(非活動期の35歳男性,活動期の54歳女性)で術後5か月経過を観察した.1例はステロイドのパルス大量静注療法(総量9,000 mg)と眼窩放射線照射を受け,1例はパルス療法(総量3,000 mg)のみを受けた.2例とも5単位のA型ボツリヌス毒素注射併用の5-6 mmの下直筋後転術および5 mmの内直筋後転術を受けた.
    結果:これらの患者はA型ボツリヌス毒素併用下直筋および内直筋後転術後,5か月間の経過観察においても良好な眼位と両眼単一視を獲得した.
    結論:A型ボツリヌス毒素併用直筋後転術は,活動期であるかないかを問わず甲状腺眼症の重症機械的斜視治療に有用である.この治療は甲状腺眼症の外眼筋の不可逆的な拘縮を予防するであろう.
症例報告
  • 武島 知志, 大久保 真司, 宇田川 さち子, 大田 妙子, 杉山 和久
    2017 年 34 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    33歳男性.両眼視力低下の自覚があり,前医を受診.Humphrey静的視野検査で右同名半盲様視野障害を呈していたが,頭部MRI画像において両側視神経萎縮がみられた以外に,明らかな視路病変がなく当科へ紹介となった.視力は右(0.4),左(0.15),両眼視神経乳頭の耳側蒼白化,対光近見反応解離がみられたが,著明な縮瞳はなかった.血液および髄液の梅毒抗体の高値を認め,神経梅毒と診断,ペニシリン大量点滴治療を2週間施行した.治療後13か月の視力は右(0.15),左(0.04)と低下,左眼の中心視野障害が進行した.梅毒性視神経萎縮でも経過中に同名半盲様視野障害を呈することがあり,視神経萎縮の鑑別診断として,梅毒も考慮する必要がある.
  • 田辺 美乃梨, 大久保 真司, 宇田川 さち子, 東出 朋巳, 杉山 和久
    2017 年 34 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    73歳女性.広義原発開放隅角緑内障の経過観察中に左眼の見えにくさと複視を訴えて受診した.滑車神経麻痺で初発し,その後,動眼神経麻痺,Horner症候群を発症した.1%アプラクロニジン点眼試験では,点眼前は明所では左眼の瞳孔径が大きく,暗所では右眼の瞳孔径が大きかった.点眼後は,明所で左眼が右眼に比べて著明に散瞳していた.瞼裂高は,点眼後に左眼が3 mm拡大し,動眼神経麻痺にHorner症候群を合併していると診断した.その後,外転神経麻痺も合併したため,海綿静脈洞部の硬膜動静脈瘻に対し,経静脈的塞栓術を施行した.
    複合神経麻痺では,眼球運動障害に加えて,瞳孔所見にも注意する必要がある.
  • 皆川 友憲, 石川 均, 庄司 信行
    2017 年 34 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    クロラムフェニコール内服加療中に,薬剤性視神経症を呈した5歳女児を経験したので報告する.患児は,左側頭葉脳膿瘍にて緊急搬送され,穿頭ドレナージ後,クロラムフェニコール内服加療を開始し,経過良好にて退院.その3か月後より視力低下を自覚し,4か月目に再受診.RV/ LV=(0.05)/(0.06),限界フリッカ値低下,中心暗点,MRIで視交叉~視神経に造影効果を認めた.精査後,他の原因が除外され薬剤性視神経症と診断した.クロラムフェニコール中止後,視力は速やかに回復したがOCT上乳頭周囲の神経線維の菲薄化が残存した.クロラムフェニコール起因性視神経症では早期の中止により視機能は回復可能である.一方,薬剤性視神経症でもMRI上,視交叉に造影を伴うことがあり,今後視神経症の診断時に注意が必要と考えられた.
  • 後藤 克聡, 水川 憲一, 三木 淳司, 瀬戸口 義尚, 荒木 俊介, 春石 和子, 桐生 純一
    2017 年 34 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    視神経炎の経過中に心因性視覚障害を合併し,その鑑別に立体視検査が有用であった1例を報告する.症例は15歳の女児,主訴は頭痛と眼痛を伴う急性の右眼視力障害であった.視力は右眼光覚弁,左眼(1.5),限界フリッカ値(CFF)は右眼測定不能,左眼40Hz,相対的瞳孔求心路障害は右眼陽性であった.眼底検査では右眼の視神経乳頭の発赤・腫脹がみられた.MRIではSTIR法で右眼の視神経に高信号がみられ,右眼視神経炎と診断された.ステロイドパルス療法を施行し,乳頭の発赤・腫脹は軽減,視覚誘発電位でも潜時に左右差はなく,MRIでも炎症所見は消失したが,視力は光覚弁のままであった.視力値と視野や患者の応答が解離していたため,立体視検査を施行した.Titmus stereo testで100秒の立体視が可能であったため,視神経炎の治療中に合併した心因性視覚障害と診断された.退院後の視力は右眼1.5,CFFは右眼43 Hz,Goldmann視野も改善がみられた.視神経炎のような器質的疾患を契機として,あるいは患者の心的要因によって心因性視覚障害を合併している可能性を念頭に置く必要があり,その鑑別には立体視検査が有用である.
話題
  • 二村 明徳, 小口 達敬, 斎藤 悠, 小野 賢二郎
    2017 年 34 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    レーベル遺伝性視神経症(Leber’s hereditary optic neuropathy: LHON)は主として10代から20代にかけて,両眼性に急性あるいは亜急性の視力低下をきたし,通常1年以内に高度の視神経萎縮に至る予後不良の遺伝性疾患である.現在までに酸化的リン酸化酵素群を構成する蛋白をコードするミトコンドリアDNAのおもに3460,11778,14484番塩基の点変異が発症原因である.一般にミトコンドリアの機能低下は多種多様な臨床症状を呈し得るが,LHONでは網膜・視神経にほぼ限局した病態を示す.神経学的所見では急性または亜急性で両眼性,無痛性の視力低下と中心暗点の拡大を認める.視力や視野障害と比較し軽度の相対的瞳孔求心路障害を認める.後天性の片側または両眼性の色覚異常や発症時に視神経乳頭の発赤浮腫を認める.脳MRI検査などの画像検査では,通常は視神経内に炎症を示唆する高信号はみられない.LHONの特徴的な神経眼科的所見は選択的な網膜神経節細胞障害と関連すると考えられている.副腎皮質ステロイドは無効であり,酸化的リン酸化過程に関与するコエンザイムQ10誘導体の早期投与や.免疫抑制薬,遺伝子治療,幹細胞治療などが研究されている.
入門シリーズ108
原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
神経眼科知識評価プログラム(NOKAP)テスト
印象記
編集者への手紙
Asian Section
  • Kartika A, Sri Astri N, Setiohadji B, Iwan Sovani, Johannes C. Mose
    2017 年 34 巻 2 号 p. 239-243
    発行日: 2017/06/25
    公開日: 2017/07/04
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    Purpose: To compare the retinal ganglion cell (RGC) density in the control and coenzyme Q10-treated rat models of methanol toxic optic neuropathy (MTON).
    Methods: This experimental animal study was conducted in 14 MTON model rats divided into two groups, the control group (I) and the coenzyme Q10 group (II). Both groups were exposed to N2O:O2 and orally administered methanol (3 g/kg body weight). After 4 h, the rats in the group II were orally administered coenzyme Q10. After 8 h, the eyes were enucleated and histopathological specimens were prepared. The specimens were imaged under a microscope at 200× magnification and the RGC densities were counted.
    Results: The average RGC densities for the group I and group II were 36.57 (SD 5.84) and 57.67 (SD 7.63), respectively. A significant difference was identified between the two groups (p<0.001).
    Conclusion: RGC density was higher in the MTON model rats that were treated with coenzyme Q10 compared to the control group.
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